成功事例に学ぶ地域活性化に必要な要素
89歳のおばあちゃんもパソコンで受注管理。「いろどり」モデル
「人は誰でも主役になれる。それぞれの役割があり、それぞれの舞台がある」。これは、国土交通省地域活性化貢献特別賞など数々の受賞歴を持つ、葉っぱビジネスを展開する「いろどり(徳島県上勝町、1999年4月設立)」の横石知二代表のコメントです。日本料理を美しく彩る季節の葉や花、山菜といった、いわゆる「つまもの」を収穫し、料亭や寿司店などに納品しています。
ユニークな特徴は、89歳のおばあちゃんを含む高齢の200軒の農家がパソコンに向き合い、注文情報を確認し、納品、自分の売上順位も一覧できる驚きのシステムを活用していることです。1年を通して320種類のつまものを出荷し、農家全体の年商は2億6000万円。中には年収1000万円を稼ぐおばあちゃんもいるそうです。高齢化率は48%と、2人に1人がお年寄りという環境でありながら、徳島県内市町村で、老人医療費が一番少ない街として知られています。
葉っぱをビジネスに据えた着眼点に敬服すると同時に、高齢者にパソコンやタブレットによる運用の仕組みを根付かせた粘り強い「舞台作り」、そして「主役作り」が極めて秀逸です。
まちの魅力を再発見させる「オンパク」モデル
もう一例は、地域の集客イベントの枠を超え、小規模事業者のインキュベーション効果が高いプラットフォームとして認知される「オンパク(温泉博覧会)」。「まちあるき」「子供向け自然体験」「歴史的空間でのイベント」「里山交流プログラム」「秘湯探検ツアー」など、その地域独自の「小」「集」「短」のプログラムが人気を博しています。
一般的なオンパクは、1カ月弱の期間に200を超える地域内事業者が参加し、100種を超える多彩な地域体験プログラムが行われ、3000人を超える参加者が集います。2001年、観光客の減少に悩む別府(大分県)を元気にするため有志が集まり、別府のすばらしさを表現するために開催した「別府八湯温泉博覧会」がオンパクの始まりです。
結果的に、地域の魅力を再発見する「副産物」が、NPO法人ハットウ・オンパクとなり、この地域体験交流型イベントであるオンパクモデルを全国に水平展開する一般社団法人ジャパン・オンパク(別府市、鶴田浩一郎代表理事、2010年4月設立)につながります。現在は全国19カ所に「ご当地オンパク」が広がっています。
このビジネスモデルの仕掛人の野上泰生氏は、「オンパクの目的は、地域の魅力発掘と発信、地域人材の育成、地元の住民も気づきにくい埋もれた地域の資源を活用した多彩な観光サービスを創出すること」と話します。野上氏は創業1938年の老舗旅館「べっぷ野上本館」の二代目であり、別府市議会議員でもあります。地域おこしのポイントは「地域の資源を発掘して、まずは地域住民に認知してもらうことが大切。そして商品・サービス開発、情報発信、集客を適切に支援する中間支援型機能が必要」と説いています。
「地方発・民主導・現場重視」のプラットフォーム構築がカギ
2014年6月、「日本再興戦略 改訂2014-未来への挑戦」が閣議決定されました。地域活性化促進のため「プラットフォームの構築」「ふるさと名物応援、戦略産業育成」「地域ぐるみの6次産業化」が謳(うた)われています。
インターネットの普及により、地方と中央の情報格差は明らかに縮まっています。官も積極的に情報を発信し、地方の活性化を進めています。とはいえ、本質的な最先端の情報は、現場を回り、然るべきソースしか入手できません。こうした中「地方=マイナス、中央=プラス」の構図を払拭し、「地方発・民主導・現場重視」のプラットフォームが芽生えているのは頼もしい限りです。
前述の二例とも情報を共有するプラットフォームがあり、参加者共通の目的を持ち、貢献意欲が醸成されています。つまり前向きの発想と仕組み化により、地域の魅力に自信と誇りを持つ多くの主役を舞台が待ち望んでいるのです。次はどの地域で、どんなステージの幕が開くのか楽しみです。
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