競争を毛嫌いする人々

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経済学101

今回は青木理音さんのブログ『経済学101』からご寄稿いただきました。

競争を毛嫌いする人々
“炎上”日記につっこむのは大人気ないが、非常に典型的なので取り上げてみる。

炎上日記再び:AKB48にはついていけない – 金子勝ブログ
http://blog.livedoor.jp/kaneko_masaru/archives/1260891.html
※以下、> に続く文はこのブログからの引用

——
> 全てはお金で決まるという市場原理――これほど分かりやすい組織原理はありませんね。
——
メンバーがファンの選挙で決まり、投票数もCDの枚数で決まるAKB48は「全てはお金で決まるという市場原理」とのことです。「1人1票ではありません」というが、国民投票で選ぶアイドルなんてだれの得になるのだろう。1人1票で決まる政治家を見れば同じ仕組みを社会全体に広げるというのが、いかにしょうもないアイデアであることぐらい分かろう

——
> このランキングで競わせる手法は、会社や塾、あるいはえげつない学校で行われている「成果主義」そのものです。
——
アイドルになるための競争を会社・塾・学校での競争へとつなげるのは無理がある。そんなえげつない成果主義の学校がどこにあるのだろう。多少成績が悪くても親は学校を辞めさせたりしないし、学校だって授業料が払われていれば退学にしたりはしない。

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> それは現実の会社と同じように「裏」があります。AKB48は正規メンバー(正社員)になりたい予備軍(まるで派遣労働者みたい)がいっぱいおり、賃金がとても低くてすむのです。
——
別にそんなこと「裏」でも何でもない。アイドルでもアーティストでも人気のあるスーパースター産業では、下積みが長く、賃金面で恵まれないのは世界中どこでもごく普通のことだ

——
> そして気づいてみると、秋元康だけがガッポリ儲(もう)かるようになっているのです。
——
この仕組みを作り出したプロデューサーがガッポリ儲(もう)かるのは悪いことなのだろうか。仕組みがなければアイドルになれる人もそれを支持する人もいなかったわけだから、何かを搾取したわけではないし、彼だけがプロデューサーになれる資格があったわけではない。仕組みを作ることが一番難しいことだからこそうまく行った場合の利益が大きいわけだ。

——
> 店員たちはどんどん入れ替えられていく仕組みなのです。もちろん、安売りを標榜(ひょうぼう)しているくらいですから、社員の給料も高くはありません。
——
安売りを標榜(ひょうぼう)しているから社員の給料が高くないというのは間違っている。むしろ価格が高くて売れないんじゃ高い給料は出せない。自分の給料より高くないという意味だろうか。

——
> ユニクロは、お客様に選ばれることを大義(経済学では消費者主権と言います)にして、従業員の人件費を切り詰め、そして安い給料で買える商品をそろえてはデフレ経済を定着させていく、デフレのマッチポンプなのです。
——
突っ込むのも面倒だがある財の価格低下はデフレとは言わない。

——
> 主流経済学によれば、インセンティブを刺激する制度設計によって、人を転落の恐怖に追い込めば、みんな一所懸命働いて効率性が高まるということになります。
——
リスクをとらせてうまくいくときもあれば、うまくいかないときもあり、それは市場で決まるというのが普通の経済学だ。そして世の中のほとんどの仕事は月給・時給であり、それほどインセンティブを与える制度にはなっていない。大抵の人はリスク回避的で、例えインセンティブを刺激したほうが業績が上がってもリスクをとらせるための補償の方が高くつくので完全なコミッション制にはしないからだ。。

——
> 実際、失業などを理由とした20代30代の自殺が増えて、ついに13年連続で自殺者(全体)は3万人を超えました。
——
13年連続で3万以上というのは、増加傾向とは関係ない。それどころか、自殺者数が顕著に増加しているわけですらない *1 。五十代の自殺者は明らかに減少傾向にあるがどう説明するのだろう。

*1:『社会実情データ図鑑』「失業者数・自殺者数の推移(月次、年次)」
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2740.html

——
> 個別のメンバーしか見ていないファンたちは、ランキング競争に勝たせることに夢中で、声もあげられずに消えていくAKB48最後列のメンバーを想像することはないんでしょうね。
——
競争が嫌いなのはわかるが、じゃあAKB4万8000とかならいいのだろうか。別にアイドルにならないといけないわけでも、だれもがなれるわけでもないのだから、さっさと見切りをつけてキャリアを転換するのが本人にもいい。

だれもがアイドルになれるわけではないのは別に競争のせいではない。だれもがなれないからこそだれかを選ぶ必要があり、その選択方法として競争が通常もっとも効率的で公平なやり方だということだ。競争が全くないとどうなるかは一部の大学教授を見れば明らかだろう。

執筆: この記事は青木理音さんのブログ『経済学101』からご寄稿いただきました。

文責: ガジェット通信

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