1人1万円の慰謝料も?ベネッセが払う代償

ベネッセコーポレーションから大量の個人情報が漏洩

1人1万円の慰謝料も?ベネッセが払う代償

ベネッセコーポレーション(以下「ベネッセ」)から顧客(保護者・子ども)の氏名や住所等の大量の個人情報が漏洩していたことが発覚しました。ベネッセが委託した業者(の従業員)によって情報流出がされたとのことです。不正競争防止法違反罪で警察が捜査しています。

情報の流出元のベネッセや、流出した情報を取得して利用したとされるジャストシステムの双方とも、今回の件では信頼が傷つき、企業イメージが悪くなってしまいました。法的な責任以前に、このイメージ低下の損失は大きいでしょう。なお、今後の対応次第で、信頼回復や、それ以上のイメージアップを図ることができる可能性もあると思います。

個人情報保護法により、相当の費用と労力を負担することに

今回の件で、ベネッセは、顧客の情報という営業秘密(いわゆる企業秘密)を不正な手段で侵害されたという点で、不正競争防止法違反の犯罪に遭った被害者です。また、ベネッセは、営業秘密を侵害して情報を漏洩した者や、その者を雇用していた委託先の企業等に損害賠償請求をする立場にあります。

他方で、漏洩された情報の主体である顧客との関係では、ベネッセは法的な責任を問われる立場となります。個人情報取扱事業者であるベネッセは、個人情報の漏洩の防止等のために必要かつ適切な措置を講じなければならず(個人情報保護法20条)、委託をした者に対する必要かつ適切な監督を行わなければなりませんでした(同法22条)。

個人情報が漏洩した場合の対処として、漏洩した情報の速やかな回収が望ましいとされていますし(経産省ガイドライン)、社会的責任の観点からも回収のための行動を取らざるをえないでしょう。漏洩した情報(ジャストシステムに流出したものだけではないようです)の回収をするとなれば、ベネッセは相当の費用と労力を負担することになると思います。

情報漏洩した顧客にお詫びの文書を送付するといった対応をしているとのことですので、そのコストも膨大なものになります。今回の件をきっかけに、保有する個人情報の利用停止や削除(個人情報保護法27条)を求める人も増えると思われますので、これに対応する負担も大きくなるでしょう。

プライバシー侵害の慰謝料を請求され損害賠償責任を負う可能性も

また、ベネッセは、プライバシー侵害の慰謝料を請求され損害賠償責任を負う可能性があります。個人情報を流出させた者が直接の不法行為者として損害賠償責任を負います。そして、委託元のベネッセと流出した者との間に実質的な指揮監督関係があると認められる等の場合、ベネッセも使用者責任(民法715条)により損害賠償責任を負うことになります。

他の個人情報流出の裁判例では、1人1万円の慰謝料が認められた事案があります。本件でも同程度の慰謝料が認められるとすると、漏洩した情報の件数が多いので、ベネッセが負担する賠償の総額は莫大なものになるかもしれません。

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