都心部で「ゲリラ豪雨」が多発する理由

予測不能の「集中豪雨」を「ゲリラ豪雨」と呼ぶように

都心部で「ゲリラ豪雨」が多発する理由

「ゲリラ豪雨」という言葉をニュースなどでよく聞きます。ゲリラ豪雨とは、今まで使われてきた「集中豪雨」と一体何が違うのでしょうか。

実はゲリラ豪雨という言葉は、気象において正式な名称ではありません。最近、今までとは異なり、予測がつきにくく、突発的に発生する集中豪雨が増えてきました。「どこで、いつ、襲ってくるか予測不能」ということで、「ゲリラ豪雨」と呼ばれるようになりました。では、どうして予測が難しいのでしょう。

積乱雲の連続発生によって引き起こされる「集中豪雨」

まず、その前に、「集中豪雨」のメカニズムについて解説します。集中豪雨は一般的に、「積乱雲」という雲が猛烈に発達し、連続して発生することによってもたらされます。積乱雲とは、よく夏の暑い日にもくもくと上に向かって伸びる「入道雲」のことです。これは、湿った暖かい空気が、なんらかの理由で急激に上昇することにより、天空で急冷されて水蒸気が凝結してできる雲です。垂直方向に発達し、直下に雷や猛烈な雨を降らせたりします。

暖かい空気は軽いため、ただでさえ上昇気流となりやすいのですが、自然界にはこの上昇を加速させ、積乱雲を急成長させる要因がいくつかあります。たとえば、山に湿った暖かい風があたると、山肌にそって上昇し、積乱雲になることがあります。また、寒冷前線が通過するとき、冷たい空気が暖かい湿った空気を急激に持ち上げると、上昇気流となって前線面に「積乱雲」が発生します。もし、こうした前線がある時に台風などが発生すると、その台風から暖かい湿った空気が前線面にどんどん供給され、連続的に大量の積乱雲が発生し続けます。台風は暖かい海から来るため、そこから供給される空気は暖かく、膨大な量の水分を含んでいます。まだまだ台風が遠いのに、とんでもない集中豪雨が起こるのはこうした理由によるものです。

積乱雲を発生させる要因は他にもあります。それは、上空の冷たい空気です。真夏を挟んで前後、日本上空では太平洋高気圧が弱くなり、上空に大陸からの冷たい空気が入り込むことがあります。この時、地上に海からの暖かい湿った空気が入り込んでいると、非常に不安定な大気になります。冷たく重い空気が上層、暖かい軽い空気が下層に来るわけです。重い空気は下に落ちようとするし、軽い空気は上空に行こうとして「対流」がはじまります。この対流の力が加担することで、上昇気流が加速し、積乱雲が発生します。

「ヒートアイランド」現象が都市部での「対流」の力を増加させる

さて、以上が通常の集中豪雨の話です。これらのことは、地形や前線、台風の動きや風の動きなどで積乱雲の発生が予測されやすく、いわゆる「天気予報」の範疇の出来事といえます。対流の力による降雨はあまりに狭い範囲で予測は難しいですが、規模が「にわか雨」程度のことなので問題にはならないでしょう。

では、予測が難しい現代型のゲリラ豪雨のメカニズムについて解説します。現在、都市部では「ヒートアイランド」という現象が起こっています。このヒートアイランドが、実は都市部での「対流」の力を増加させるのです。対流は上層部の冷気と下層部の暖気により起こりますが、この温度差が大きいほど、その力は大きく速くなります。

ヒートアイランドにより、地表の温度は高温化し、上空の冷気との温度差が極端に大きくなってしまいます。上昇気流はより急激になり、積乱雲は強大化し、今までは単なる「にわか雨」レベルだったものが、「豪雨」になるようになってしまいました。それも、予測不能な「ゲリラ豪雨」に。これが、都市部でよくゲリラ豪雨が発生する理由です。もし、突然、空が雲に覆われ、真っ暗になり、急に冷たい風が吹いてきたら、その風は対流のはじまりの上空からの下降気流です。すぐに、建物の中に避難しましょう。

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