心の病も労災の対象 泣き寝入りせず申請を
心の健康を害した人の労災認定が増大
平成25年度に、うつ病などの精神障害で労災補償を申請した件数が、過去最高の1409件となり、2年連続して増加しています(6月27日に厚生労働省が発表)。また昨年度に、この精神疾患が労災認定された件数は436件でした。
「労災」という言葉は、多くの人が聞いたことがあると思います。例えば、職場や通勤途中でケガをしてしまったとき、治療費などを労災保険が全額補償してくれるという国の保険制度です。労災の対象は、ケガだけでなく病気も含まれます。仕事が原因のケガや病気を「業務災害」、通勤途中でのケガや病気を「通勤災害」と呼びますが、今回は業務災害について見ていきます。
業務災害が労災補償の対象となるためには、労災認定されることが必要です。そのための条件は、「仕事が原因で仕事中に」ケガをしたり、病気になったりしたということです。例えば、「重い荷物を勢い良く持ち上げたとき、ぎっくり腰になってしまった」「1カ月に80時間以上の残業をしたことが原因で、脳や心臓の病気にかかってしまった」というような場合が当てはまります。労災認定対象となる病気は、うつ病のほか統合失調症や適応障害などの精神疾患も含まれます。
厚生労働省が精神疾患の労災基準を策定
上述したように、うつ病になってしまったことの原因が、長時間労働や特別な出来事に遭遇したことによるものであるなら、労災補償の対象になります。
ただし、うつ病はケガと違い、何が発病の本当の原因なのかはっきりしません。そこで、厚生労働省が、精神疾患の労災認定基準を決めました。この基準には「どのような場合なら業務災害と判定して労災認定となるか」という基準が細かく書かれています。
特別な出来事というのは「ひどいセクハラやパワハラを受けた」「仕事で大きな失敗をして責任を問われた」「重大な人身事故を起こした」「辞める気はないと言っているのに退職を強要された」といったことが挙げられますが、1カ月に160時間以上の残業をしたことも当てはまります。
何かのきっかけによる長時間残業が原因のうつ病も労災認定
特別な出来事ではなくても、何かのきっかけで長時間残業を余儀なくされることがよくあります。そして、きっかけと長時間残業が原因でうつ病にかかってしまうこともあります。
きっかけ、つまり出来事ですが、具体的には「達成困難なノルマが課された」「人員削減により休憩も取れないほど忙しくなった」「顧客から無理な注文を受けた」などが当てはまります。そして、その出来事が原因で、1カ月100時間を超えるような残業をせざるをえなくなり、「その結果、うつ病になってしまった」ということなら労災認定されることになります。
心の健康管理も忘れずに。憂鬱なときはストレスチェックを
多くの人は、年に一度は健康診断を受けて体に病気がないか確認していることでしょう。実は、病気予防のためには、心の健康管理もとても大切です。うつ病になって労災認定されても、治療費用などを払ってくれるだけで、何も良いことはありません。病気にならないことに越したことはないのです。
「ひどく疲れた」「不安」「憂鬱(ゆううつ)」といった気分になったときは、ストレスチェックをやってみましょう。厚生労働省が運営するサイトで簡単にチェックできます。
勤務時間を自分で調整できないときでも、1週間に1日は必ず休んで、心も体もリフレッシュしましょう。「病気予防は健康管理から」です。
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