『あの頃、忌野清志郎と』著者・片岡たまきインタビュー ―たまらんニュース
全盛期のRCサクセションや忌野清志郎の活動をマネージャー、衣裳担当として支えた片岡たまき氏が清志郎との40年にわたる濃い日々を綴った書籍『あの頃、忌野清志郎と~ボスと私の40年』(宝島社)が7月9日(水)に発売された。「たまらんニュース」では今回、音楽誌『beatleg magazine』編集長と共同で、著者ご本人のお話を伺うことができた。“ボス”清志郎と過ごしたかけがえのない日々を描いた本作は、すなわち日本ロック界の変遷の記録でもある。
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――タイトル通り、40年間清志郎さんを見続けた片岡さんにしか書けない非常に中身の詰まった本ですね。この本はいつ頃から書いていらっしゃったんですか?
片岡たまき : ありがとうございます。昨年の秋ごろから少しずつまとめていたんですけど、今年に入ってから、長女・百世さんの個展のお手伝いをした際に、親戚の方にお会いできたり、また、昔からRCのイラストを描いていたアサミカヨコさんと私が企画した「復活2・3’S」のライヴ・イベントで色んな方とお会いしたり、そのあたりから情報がギュッと集まってきた感じでしたね。その集まり方がとても不思議でした。
――前半で、10代の頃に執拗なほど清志郎さんの事務所に入りたいという想いが描かれていますが、当時は本当にひたすらそれだけを目指していたんですね。
片岡 : 「すごい!」ってみなさんおっしゃってくれるんですけど、自分からすると、そのときは普通にしていたことなんですよね。ただ、あんまり募集がないんで、色んなところに片っ端から行って、ついには劇団にまで行っちゃって、「すいません、うち劇団なんですけど」って言われたりしてました(笑)。バカですよね。それくらい“RC”って書いてあるものには手当たり次第にあたってたんですけど、その頃はRCは売れていなかったから、事務所も求人募集はしていなかったんですよね。
――この本を読む人たちと同じように、熱心な一ファンだったんですね。
片岡 : 仕事を始めてからも、そういう気持が大切だなって思うときもありましたけど、邪魔になったときもありましたね。ファンであり過ぎたというか。たとえば、最初のうちは楽屋で会話することも恥ずかしくてね。これからは身近なスタッフだという切り替えがパッと簡単にはできなかった。
――初期の3人編成のRCサクセションからずっと清志郎さんの活動を見続けている方は片岡さんくらいしかいないんじゃないですか?
片岡 : 私のまわりで? …… どうでしょうか。そうかもしれないですね。事務所に入ってからは、衣裳担当になったのでツアーも全部同行するし、合間にはファンクラブ会報を作るためにインタビューして書いてということもしていたので、ベタッと一緒にいた感じでした。
――本の中でも触れられていますが、1989年のRCサクセションのツアーで清志郎さんは「ライヴを自由に録音していい」って言っていました。これは音楽ビジネスの根本をひっくり返すような発言ですよね。
片岡 : 『カバーズ』以降ですね。あの頃は、色んな投げかけられた問題について、みんながそれぞれに考えたと思うのです。
――清志郎さんは、僕らファン・レベルで客観的に見ても優しい方だったんだなというのがわかるんですけど、この本を読んでそれが再確認できました。
片岡 : そうですね。注意されたこともいろいろありますよ。清志郎のキャラクター入り特製スカジャンがツアースタッフに配られたときに、楽屋で「誰が一番似合うか?」みたいな話をスタッフと二人でワイワイしていたら、清志郎に「誰でも似合うんだよ!」って言われたことがありました。あ、うるさかったんだなって(笑)。「すいません」って謝りましたけど。
――それに似たエピソードが本の中にもありますけど(書籍『あの頃、忌野清志郎と』P.234・P.235参照)、FAXで説明してくれるというのが凄いですよね。普通はもっとダイレクトに怒ると思いますけど。
片岡 : 優しいですよね。穏やかだしね。このFAXをもらったときは、「ああ、なんでこういうことに気がつかなかったんだろう?」って、反省ですよ。でもこういうふうに言われるとわかりますよね。「ああ、表現者ってそういうことなんだな」って思いました。
――この本が出版されて、今はどんなお気持ちですか?
片岡 : RCの仕事で一緒だった人たちと、これまでなかなか会えなかったんですけど、今年になって集まることができたんですよね。清志郎が亡くなって5年経って、そういう時が来たのかなと思いますね。私は評論家でも分析をする人間でもないけれど、清志郎のことを書くということは、うまく言えないんですが、清志郎のことを私なりの解釈によって“脱がせている”んですよね。清志郎はこの本を読んで、「たまき、それはちょっと違うよ!」って言えないじゃないですか? そういうことをしているんだから、自分も脱がなきゃなと思ったんです。自分が脱がないまま、色んなことを言うようじゃ、ただの情けない評論家みたいになっちゃいますから。だから失敗談も、恥ずかしかったことも、さまざまなことを書きました。いま、自分でもこの本を読むと、片岡たまきという人間は忌野清志郎と出会えて本当に良かったんじゃないかなと客観的に見て思います。
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取材・文 岡本貴之
『あの頃、忌野清志郎と~ボスと私の40年』
著者 : 片岡たまき
出版社 : 宝島社
発売日 : 2014年7月 9日
価格 : 本体1400円+税
判型 : 四六判
ページ数 : 255P
ISBN : 978-4-8002-2407-1
・宝島チャンネル
http://tkj.jp/book/ ?cd=02240701
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