経団連が軽減税率に反対、なぜ?
軽減税率は、逆進性の緩和には不十分
経団連(日本経済団体連合会)が、軽減税率の導入に反対しています。理由は、「対象品目の線引きが不明確であること」に加えて、「軽減税率が逆進性対策としては非効率であること」「大幅な税収減となる可能性があること」「経理負担が大きくなること」を挙げています。「対象品目の線引きが不明確であること」については、報道でも取り上げられているので、その他の二つの理由についてコメントします。
まず、そもそも軽減税率の話は「低所得者対策」として提言されました。消費税は、累進税率の所得税と異なり、同じものを購入するのであれば、所得の少ない人には負担が大きく、所得の多い人には影響が少ない税金です。これを「逆進性」と言い、軽減税率は、このれを緩和するのに有効だとされます。しかしながら、軽減税率の効果は、低所得者だけではなく全消費者に及びますから、逆進性を緩和する方法としては、実は十分なものとはいえません。
また、「大幅な税収減」については、対象品目の線引きが不透明なことと関わっています。線引きは、政治的な圧力や業界の意向で広がっていく可能性があるため、税収が思ったより伸びなくなる可能性があります。その場合は、もともとの税率をさらに上げなければならなくなるのです。
複数税率の場合、経理事務が複雑になり負担が増すことに
次に「経理負担」ですが、経理事務に携わった経験があれば、複数税率の場合の煩雑さを理解できるでしょう。小売店の場合、メーカーが商品の包装段階でバーコードに税率を入れてしまえば、POSレジで対応可能かもしれません。しかし、電子レジスターの場合は、商品ごとに自分で税率を登録する必要があります。
電卓やそろばんで計算している事業者もありますが、複数税率だと商品の税率を確認しながら計算することになります。相当の手間がかかるでしょう。加えて、販売管理のシステムと財務会計のシステムが連動していない場合には、財務会計システムに入力する際の事務負担は相当に増えることとなります。
小売店でなくとも、事業者であれば商品を購入します。現行の消費税の計算方法である帳簿方式は、単一税率の場合は計算が簡単ですが、複数税率になると区分する必要がある分、計算が複雑となります。一般的には、複数税率の場合は、記載された数字を集計するだけのインボイス方式の方が計算は楽となりますが、免税事業者はインボイスを発行できないので、零細事業者には不利となってしまいます。
税務当局も消費税の計算を確かめるためのマンパワーが必要です。単一税率の場合と異なり、「この場合はどうなる」「あの場合はどうなる」といった議論が毎年のように行われるでしょう。制度を維持するためには、大変なエネルギーが投入されることは想像に難くありません。
よって、「単一税率+給付措置」が効果的かつ効率的な手法と考えます。
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