「第三のビール」と「発泡酒」の違いは
「税金」と「新しいお酒」との「いたちごっこ」
今や「発泡酒ビール」や「第三のビール」は、家計を支える大黒柱のような存在。味わいからすると「すべてビール」なのですが、これらがどのように区別されているのかは少々複雑です。
日本では、明治時代から「酒税」は国家を支える大事な税収です。明治時代には、国家予算の30%以上が「酒税」だったそうです。
フランスやイタリア、ドイツなどのお酒の先進国では、お酒の品質に関する法律が整っています。しかし、日本においては、お酒は基本的に「税金」の手段でしかないようです。今、日本では、「税金」と「新しいお酒」との「いたちごっこ」が行われていると言っても過言ではありません。また、「国酒(日本酒&焼酎)」も例外ではありません。新ジャンルが登場し、ヒット商品になると、そこを税収のターゲットに「増税が実施される」の繰り返しです。ある意味、消費者不在の「税金ごっこ」とも言えます。
麦芽の比率を下げて造られたものが「発泡酒」
では、「第三のビール」と「発砲酒」の違いについて解説します。
「本来のビール」は、麦芽とビール酵母、そして香り付けの元になるホップと水で造られています(麦芽の使用率は67%以上、アルコール20%未満)。日本では明治時代に普及しはじめ、戦後あっという間に日本酒を抜き去り「酔う手段」のトップに躍り出ました。
順調に伸びてきたビール業界ですが、デフレが長期化し停滞した経済状況で給与が下がり、少しでも安く競争力のあるビールを造らなければならなくなりました。「そうしないと、より安価な焼酎やカクテル感覚のリキュールに酔う手段を奪われる」といったところでしょう。
そこでビール業界があみだしたのが、まずはビールより税金が安い「発泡酒ビール」です。この「発泡酒ビール」が「第二のビール」と呼ばれるもの。ビールの原料となる麦芽の比率を下げて造られたもので、麦芽使用率は25%~67%未満で、主流は25%未満です。それゆえ、どこか味わいに物足りなさがあります。しかし、低い税率と高価な原料である麦芽の比率を下げることで、価格を下げることに成功。価格が下がったことで競争力が上がり、よく売れるようになりました。
大豆やトウモロコシなどを用いて造られる「第三のビール」
しかし、売れると税金を掛けてくるのが国税局。そこで、ビール業界は別の魔球を開発します。さらに税金が安く、価格を下げることができる新ジャンルの「第三のビール」を誕生させます。
「第三のビール」は、麦芽使用率0%。「もはやビールではない」と言えるかもしれません。原料が「麦芽」以外のもので、エンドウ豆、大豆、トウモロコシなどで造られ、ビールの風味を付けています。しかし、売り出されるボトルはビールをイメージさせるものばかりで、かなり誤解を生じさせています。
また、まだ「第三のビール」のカテゴリーに属していますが、すでにリキュールタイプの「第四のビール」まで誕生しています。ある意味、日本酒業界が戦後に日本酒を三倍に薄めた「三増酒」なるものを造り出したり、日本酒っぽい「合成清酒」なるお酒を世に送り出したりしたのとそっくりです。
その結果、日本酒業界は「己の首を己で締める」という結果になり衰退していきました。ビール業界も「危うい道筋をたどっている」と言えるかもしれません。原料の安い国で、安価なジュース並の価格で「第三のビール」や「第四のビール」が造られたらどうなるのか。「国税局」VS「ビール業界」戦争が、どこまでも続いていくかもしれません。「第一のビール」の味わいが、世の中から消えないようにしてもらいたいものです。
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