でんぱ組.inc「まだまだ夢で終わらんよっ!」みんなの思いがつまった武道館公演——OTOTOYライヴ・レポート

でんぱ組.inc「まだまだ夢で終わらんよっ!」みんなの思いがつまった武道館公演——OTOTOYライヴ・レポート

でんぱ組.incが、5月6日にグループ初となる日本武道館でのワンマン・ライヴ〈ワールドワイドでんぱツアー2014 in 日本武道館 ~夢でおわらんよっ! ~〉を行った。あれからもうだいぶ時間が経ってしまったが、あの日の熱はまったく冷めない。2012年9月に恵比寿リキッドルームのステージ上で掲げた、武道館でライヴをするという目標。そこに向かって、「マイナスからのスタート 舐めんな!」(「W.W.D」)という反骨精神で駆け上がってきた。そして、これまで歌い続けてきた「夢でおわらんよ」(「Future Diver」)というメッセージが本物であることを、体現してみせた。

「W.W.D」で歌ったように、彼女たちはそれぞれ心に闇を抱えていて、決して最初から強かったわけではない。あの場に集った人のなかにも、大なり小なり同じような思いを抱えている人や、過去に抱えていた人も多くいたはずだ。でんぱ組.incが武道館のステージに立つことは、そんな我々にとっても大きな希望になった。アンコールで、最上もがは涙ながらに「みんなの声は届いている」と話し、古川未鈴は「私たちがやってきたことは間違ってなかった」と叫んだ。彼女たちは自分たちの夢を実現することで、いままで応援してきたすべての人たちの思いすらも肯定してくれた。

ライヴ当日、武道館のなかに入ると、DJがアニソンを中心とした曲を流している。スタンディングのアリーナ席には、すでに叫び声をあげるもの、狂ったように踊るもの、シンガロングするものが多数。ついにはサークル・モッシュまで発生し、いい感じに客席が温まった頃、場内は暗転した。ステージ後方に設置されたスクリーンにVTRが流れると、彼女たちの拠点であるDear☆Stageを模した武道館のステージの床が開き、でんぱ組.incの6人が勢いよくリフト・アップされて登場。待ちわびた観客は絶叫し、色とりどりのサイリウムが光る。まずは新曲「Dear☆Stageへようこそ♡」をミュージカルのように歌いあげると、そのまま1stアルバム『ねぇきいて? 宇宙を救うのは、きっとお寿司… ではなく、でんぱ組.inc!』のメドレーへ突入。懐かしい曲の連発に、客席はテンション全開。そして大歓声のなかではじまったのは「W.W.D」だ。各メンバーのパートに合わせるように照明がめまぐるしく変化し、スクリーンには歌詞が映し出される。「どこまでも行ける 捨てるものなんかない」。その思いで、彼女たちはこの武道館まで来てしまったのだ。曲中、新たに追加された間奏が流れるなか、6人はふいに姿を消す。スクリーンには、メンバーの過去の写真がスライドされる。そして次の瞬間、衣装を着替えたメンバーがステージ前方から飛びあがる。そのまま、残りのパートを力強く歌いきった。

ようやく曲が途切れると、メンバーは絶叫気味に自己紹介。夢眠ねむの「ここにいる6名と武道館にいる全員で、でんぱ組.incです」という言葉が、会場の一体感を高めた。再び曲に戻る。勢いのある曲が続くなかで、ひときわかわいらしさが光る「ファンシーほっぺ♡ウ・フ・フ」では、メンバーがふた手に別れてステージの両サイドへ駆け出し、客席との距離を縮めた。勢いのある「ノットボッチ…夏」を歌い終えると、スクリーンにステージ裏の映像が映し出される。古川がひたすらゲームのレベル上げに興じるなど、それぞれの個性が炸裂している。その映像に続いて、台車に乗せられた成瀬瑛美がステージに登場、ソロ・コーナーがはじまった。夢眠は早口に、最上はしっとりと、相沢梨紗は力強く、それぞれの曲を歌いあげる。藤咲彩音はパンダのかぶり物をしたダンサーとともにパフォーマンス。古川は歌詞の一部を「武道館にきてくれて「ありがとう」って伝えたい!!」と、この日だけの特別仕様に変えて歌い、最後は肩にかけたギターを搔き鳴らした。

再び6人がそろい、ステージ上の階段に一列に並ぶ。スクリーンいっぱいに「IDOL」の文字が映し出されると、BiSのカヴァー曲「IDOL」へ。武道館での解散ライヴが叶わなかったBiSの思いを昇華させるかのように、ステージを縦横無尽に動き回り、客席を煽りながら熱唱。続く「W.W.D Ⅱ」をエモーショナルに歌いきると、メンバーがオーディエンスに語りかける。古川は「はじめてみなさんの前で歌ったときは、みんな泣いちゃってまともに歌えなかったんですけど、今日はしっかりと歌うことができました。みなさんのおかげです」。相沢は「みなさん、でんぱ組.incを見つけてくれてありがとうございます」と、それぞれの言葉で感謝を伝えた。そして最上が「そろそろラスト・スパートなんです」と告げると、会場は「えー!!」という悲鳴に包まれ、ライヴは終盤へと突入する。

「くちづけキボンヌ」で思いきり観客をキュンキュンさせたあとは、まさしくキラー・チューンの「キラキラチューン」がはじまる。客席は解き放たれたようにステージに向かって声援を送り、「でんぱ組.inc ずっと いっしょだよ」とコールした瞬間、場内はひとつになった。続く「強い気持ち・強い愛」で武道館をダンス・フロアに変えたあとは、いよいよ本編ラスト。相沢の「夢は夢で終わらないんだよと教えてくれた、すっごく大切な曲です」という紹介から「Future Diver」へ。イントロでは、メンバー・カラーの銀テープが立て続けに発射。そのままステージと客席の熱量が激しくぶつかり合い、ライヴは絶頂を迎えた。

でんぱ組.incを求める声が場内に響き渡る。みんな絶叫している。ここでも心はひとつだ。こんなに綺麗なサイリウムは観たことがない。しばらくすると、6人がリボンを持ってステージに戻り、「でんでんぱっしょん」からアンコールがはじまる。続く「ちゅるりちゅるりら」では、ステージ上に炎がぶちあがる。その炎の熱さにも負けじと、全力で踊る6人。本編ではほぼノンストップのステージ、きっと疲れもあるはずだ。しかし、彼女たちの勢いはまったく衰えていない。

ここで古川が、2015年に初のホールでの全国ワンマン・ツアーを行うことを発表。さらに成瀬が、ファイナルをアリーナ・クラスの会場で開催することを告げる(場所はまだ秘密とのこと)と、場内はどよめきと祝福の拍手に包まれた。そして古川が「感謝の気持ちを込めてこの歌を歌いたいと思います」と紹介すると、「ORANGE RIUM」の美しいピアノのイントロが流れる。それに合わせて相沢がソロ・パートを歌いあげると、客席はオレンジ色に染まる。この曲の最後、「もっと 強くなるの この場所 いつも忘れないよ」という一節は、これからのさらなる飛躍への決意表明と、これまでの感謝の気持ちがつまっているように聴こえた。

再び6人がステージから去ると、スクリーンには彼女たちの写真が順に映し出される。「みりん、りさ、ねむ、えい、もが、ピンキー、アンコール!!」と、観客はそれに合わせてメンバーの名前を叫ぶ。さらにその声に合わせるように、ステージ・セットの電飾がメンバー・カラーに変化するという憎い演出も。もはや、ここには愛しかない。何度、彼女たちの名前を叫んだだろうか。しばらくすると場内は明るくなり、でんぱ組.incのメンバーが笑顔で手を振りながらステージに戻ってくる。そのまま、観客を背にみんなで記念撮影。「イツカ、ハルカカナタ」を心を込めて歌うと、メンバーがステージ前方に並び、客席に視線を向けた。

まずはリーダーの相沢が口を開く。「いろんなことで挫折してつらくなって、最終的には二次元しかないなと思って秋葉原にたどりついたんですけど、そのときには想像もつかなかった景色が、いま目の前に広がっています。めっっっちゃ綺麗です!!! いつもスタッフさんとかメンバーとかには迷惑ばっかりかけて、ドジで頼りないリーダーだなって思われてると思うんですけど、ここまで一緒にこれたこと、とってもうれしいです。そして、でんぱ組.incの音楽で世界中の人たちを仲良くできるって私は信じています。そのためには、みんながいてくれないとダメだなって思います。本当にいつも応援してくれて、ありがとうございます」と、途中で何度も声をつまらせながら思いを伝えた。

続いて、成瀬が「えいたそだよ~。みんな楽しんでいるかい」と、おどけながら話しはじめる。「私はね、こうやってでんぱ組.incのなかで元気なキャラクターでいるんですけど…」とここで、涙で声が途切れる。しかし、観客の声援を受けて立ち直り、「できないことが多すぎて、何度も何度も悔しい思いをして、泣きながらこの日までやってきたんですけど。そうやって、がんばれたのは、ほんとにほんとに優しくて仲良くしてくれる、でんぱ組.incのメンバーのおかげだし、スタッフさんのおかげだし、なによりこうやって笑顔でいてくれるファンのみんなのおかげです。みんなそれぞれ夢を持ってると思うんですけど、その夢を叶えるためのパワーを少しでもわけてあげられたらいいなと思っています」と、最後は彼女らしい笑顔を見せた。

最上はまず、「もがみですー」と少し照れくさそうにあいさつ。そして「今年のツアーのはじめ、武道館のことを発表したときは、すごい不安でいっぱいだったんです。集客の不安はもちろんあったんですけど、新しいステップに行くことに不安があって。新しいところにいったら、みんながいなくなっちゃうんじゃないかって、すっごく不安に思って…」と、抱えていた心境を告白。続いて「今年は特に、つらいことがすごく多くて、毎日毎日泣いたりして。そのギリギリな自分を支えてくれたのは、家族やここにいるメンバーや、スタッフさんはもちろんなんですけど、やっぱり応援してくれるみんなの声がすごく届いてるから、がんばろうって思えた。「こんなの届いてないよね」みたいなファンレターとか、ブログのコメントとかを見つけるんですけど、ひとつひとつちゃんと見てるし、声が届いてるから安心して欲しいし、とてもとても感謝しています。ぼくたち6人がステージに立ち続けて、いつでも(みんなが)帰ってこれるように、がんばっていきたいと思いますので、これからもずっとよろしくお願いします」と、ひと言ひと言かみしめるように、優しくていねいに語りかけた。

3人の話を聞いて藤咲は涙ぐみながら「でんぱ組.incに入って学校との両立が難しくて、投げ出したいときとか諦めたい気持ちもあったんですけど、なんとかがんばって学校を卒業することができたんですけど… 担任の先生と校長先生には本当にお世話になりました(笑)」と報告。続いて「こんな私を応援してくれて、大好きだよって言ってくれるファンのみんながいるから、私はここに立っていられます。これから先のことはわからないけど、でんぱ組.incメンバーやスタッフさんや、ここにいるファンのみんなが私を変えてくれたから。自信をつけて、もっともっと前を向いてがんばっていきたいと思います」と気丈な笑顔で話し、最後に小さく「つたない言葉でごめんなさい」と、はにかみながらつぶやいた。

メンバーの並び順でいうと次は古川の番だが、夢眠が「トリは、みりんさんにお願いしたいと思うので…」と切り出し、「私はアイドルの才能というものをいっさい持たずに生まれてきたと思っているんです。待っててくれる、好きだって言ってくれるみんなに、私も好きだよって言い返すことしかできないんですけど。いつもそんな不器用な私や、でんぱ組.incを選んで会いにきてくれて、本当にありがとうございます。自分のことを好きにさせてくれたのが、いつも支えてくれてるスタッフさんや家族や、ここにいるみんなです」と感謝を伝える。さらに「みなさん、ちゃんとひとりひとりが私たちをここに連れてきたっていう自覚がありますかー!?」と絶叫。そして「今日の武道館は、夢眠ねむ人生で一番の大事件だと思っています。今日の日は絶対に忘れません。みんなも忘れないですよね。でもみんなとの思い出は、もっともっと更新していきたいと思っています!!」と宣言し、「どーぞ」と最後の古川につないだ。

歓声のなかで古川は「どうも…」と自分を落ち着かせるように、ひと呼吸置いてから話す。まずは「この6人で武道館に立ちたいと言ったのが2年前。私は本当にアイドルになるのが夢で… 諦められなくて、ずっとそれだけで走ってきて。やっぱり理想と現実の差っていうのがすごくあって、うまくいかなくて。それでも、この6人で武道館というステージに立つことができました。みなさんが、この日を信じて待っててくれたから、私たちがここに立てたんだと思います」と、武道館までの道のりを振り返る。そして「ここに立って、ひとつはっきり言えることがあります。私たちがやってきたことは間違ってなかった! 間違ってなかったから、私はいつもこうやってライヴに来てくれてるみんなのためにも、今日来られなかったけれども、いつもでんぱ組.incのことを応援してくれているみなさんのためにも、いつも支えてくださっているスタッフさんのためにも、ここにいる5人のためにも、そして自分のためにも… 私たちは絶対にまだまだこんなところでは止まりません!!」と叫ぶ。最後は「私たちはもっともっと上にいきたいと思います。みなさんをもっとすごいところに連れていけるように、これからも全力でがんばっていこうと思います。本当に今日はありがとうございました。これからも、でんぱ組.incをよろしくお願いします!!」と力強く締めくくった。

6人の思いを受け取った客席からは、すすり泣く声が聞こえる。しかしそれ以上に大きく、それぞれの思いを精一杯ステージへと投げかける声が響く。その声に応えるように、6人は手をつないで高く掲げ、深く一礼。そして古川の「でんぱ組.inc、これからもまだまだ…」という言葉を合図に、6人全員が生声で「夢で終わらんよーっ!!」と叫んだ。天井から桜の花びらを模した紙吹雪が舞い落ちるなか、アンコール最後の曲「サクラあっぱれーしょん」がはじまる。ピンク色のサイリウムが場内を彩る。歌い踊りながら、メンバーはステージの端から端まで移動。何度も何度も6人は笑顔で客席に手を振る。最後はステージの床が降下していき、メンバーは踊りながら姿を消した。スクリーンにはエンドロールが流れ、誰もいない武道館で、はしゃぐ6人の姿が映る。そして彼女たちはここでも「でんぱ組.inc、これからもまだまだ夢で終わらんよっ!!」と、力強く叫んだ。これで約2時間半におよんだ、でんぱ組.inc初の日本武道館ワンマン・ライヴは終了した。

あっという間だった。終わってほしくない、本当に幸せな時間だった。最上はライヴ後に更新したブログで、「でんぱ組.incはこれからはじまるんだなあと思ったよ」とつづり、武道館という目標を掲げた張本人でもある古川は「場所とはべつの目標 もっとちがうもの みんなの心に残るような なんかそんな目標も 立てて行きたいな」と、未来に思いを馳せた。ライヴ中、何度も強調していたように、彼女たちの夢はまだまだ続いていく。これからもその夢を、どこまでも追いかけていこうと強く思った。(前田将博)

2014年5月6日でんぱ組.inc@日本武道館
〈ワールドワイドでんぱツアー2014 in 日本武道館 ~夢でおわらんよっ! ~〉

1. Dear☆Stageへようこそ♡
2. 1st ALBUMメドレー (Kiss+kissでおわらない/Mirror Magic?/ピコッピクッピカッて恋してよ/わっほい?お祭り.inc/BEAM my BEAM/)
3. W.W.D
4. でんぱれーどJAPAN
5. VANDALISM
6. ファンシーほっぺ♡ウ・フ・フ
7. なんてったってシャングリラ
8. ナゾカラ
9. ノットボッチ…夏
10. ときめき☆すちゃらかテキサス (成瀬瑛美ソロ)
11. あのね…実はわたし、夢眠ねむなんだ…♡ (夢眠ねむソロ)
12. ニューロマンティック (最上もがソロ)
13. Promise of the World ~我コソ世界ノ救世主~ (相沢梨紗ソロ)
14. P and A (藤咲彩音ソロ)
15. ソーリー、ロンリー。 (古川未鈴ソロ)
16. IDOL
17. W.W.D Ⅱ
18. くちづけキボンヌ
19. キラキラチューン
20. 強い気持ち・強い愛
21. Future Diver

22. でんでんぱっしょん
23. ちゅるりちゅるりら
24. ORANGE RIUM
25. イツカ、ハルカカナタ
26. サクラあっぱれーしょん

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