コレクションショー開催間近! ファッションブランド『pays des fees』デザイナーりむさんインタビュー(前)

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東京・中野ブロードウェイにショップを構えるファッションブランド『pays des fees』(ペイデフェ)が、2014年コレクション「気球」をお披露目するショーを2014年3月23日に西新宿の旧淀橋第六小学校体育館で開催。2013年に東京・初台の廃病院スタジオでのイベントに引き続き、ファッションショーの枠組みに留まらないパフォーマンスが期待されます。

『ペイデフェ』はさらに2014年4月2日から9日までラフォーレ原宿にポップアップストアをオープン。その間に中野のショップのリニューアルも実施されるなど、新たな展開を矢継ぎ早に打ち出しています。

今回、『オタ女』ではデザイナーのりむさんにインタビューを敢行。コレクションのコンセプトからアート・建築への関心といったことまで、じっくりとお話しして頂きました。ここではその前編をお届けします。

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――2014年のコレクションショーを開催のほか、ラフォーレ原宿の期間限定ショップの出店も控えて、活躍の場がますます広がっていますが、まずは『ペイ*デ*フェ』というブランドをなぜはじめたのか、改めて教えて下さい。

りむさん(以下りむ):『ペイ*デ*フェ』をはじめたのは2005年で、今から9年前なのですけれど。当時勤めていたオリジナルブランドのデザイナーを辞めて、スタイリストのアシスタントや他の企業のプレスと平行して、自分自身の表現としてはじめたのですね。最初のうちはギャラリーでの展示とか、今よりもアート寄りな方向でやっていました。

――そこから芸術家として活動するという方向性もあったと思うのですが、洋服を作り続けている理由を挙げるならばどのようなことになりますか?

りむ:もともとアートが好きで、立体や空間を作るということが一番興味があった。立体の中でも、人の生活に溶け込めるもの、受け手の肌に馴染んで一番近いものが何かといえば、服だなと思っています。

――立体や空間が好きだということが、服作りやショップの内装に反映されているのですね。現在まで中野ブロードウェイにショップを構えていますが、ファッション関連のお店が入るのは珍しかったと思います。例えば原宿でなく、なぜ中野だったのでしょう?

りむ:中野ブロードウェイはもともと学生の頃からいつも遊びに来ていて大好きだったんですね。レコードもあるし、古い本もいっぱいあるし。それで、自分が遊びに行くところには『ペイ*デ*フェ』のお客さんたちも遊びに行っている。特に4Fはブロードウェイの中でもディープなところだし、そういう文化的に面白いところに出したらいいんじゃないかな、と。

――とはいえ、いろいろな方々から驚かれたんじゃないですか?

りむ:むしろ周囲は納得していましたけれどね。「たしかにブロードウェイっぽいよね」と言ってくれたり。あと、他の人たちと同じことをやってもしょうがない、ということもありました。

――ショップのオープン前後から、新聞紙バルーンワンピースのようなデザイン性の高いアイテムがファッション誌のスナップで使われたり、「面白い洋服屋さん」として知られるようになってきました。そのコンセプトやアイディアはどのようにして生まれるのでしょう?

りむ:新聞紙ワンピについていえば、当時住んでいたところの近所に川があって、そこに路上生活者の方もいたのですけれど、その中にひとり、素晴らしいものを作っている人がいたんですね。子どものおもちゃとかイスとか、ひとつの王国のような家を作っていて。そこが大好きで、いつも様子を見ているうちに仲良くなって…。彼の作る家に触発されて作ったのがきっかけでしたね。

――身近なところから着想を得ているのですね。2012年コレクションでは「虫」がテーマでした。その理由について「シュルレアリストとしての私からの表現」ということを当時お話しされていました。

りむ:「超現実」というテーマが好きで、完成された生物が人の生活に入ってくる不条理さは、日常の中にある超日常である、ということで「虫」をテーマにしたのですけれど、私自身はシュールレアリストではないです(笑)。

――アートの文脈におけるシュールレアリズムとは違う、ということなのでしょうか?

りむ:歴史を見てもシュールレアリズムって、似たような世界観の中で、互いに群れなければそのようになりづらい部分がどうしてもあるように思います。仲良くしなければいけない風潮というか。以前、レオノール・フィニーをテーマにしたコレクションを出したこともありますけれど、彼女もシュールレアリストの連盟から外れているんですよね。私も群れるのが苦手なので(笑)。

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――りむさんが表現したいのは、あくまで「現実を超えた超現実」だということですね。2013年コレクションのテーマ「ウイルス」は、病院だったスタジオで敢行されました。

りむ:当時、ちょうど妊娠していたので、「誕生する」ということにすごい関心が向いていたんです。「誕生する」「動く」「自立する」、そういったことに興味が行っていた。それで、ウイルス進化説というものに行き着いて。いろいろな動物が進化する過程で、ウイルスがその発端となって手助けをしている。それによって誕生するというイメージです。

――ショーでは、ウォーキングというよりも不条理劇に近いパフォーマンスがなされました。ラストに登場した義足モデルのGIMICOさんが美しかったです。

りむ:GIMICOさんには、最初手術台の上に乗っていてもらって、その後で義足を履いて自分の足で立って手術室から歩いて出る、というパフォーマンスになりました。廃病院という「死」のイメージが強いところで、希望が見えるような肯定的な演出をしたかったんです。

――「不条理」に惹かれつつも、りむさんが出されるメッセージはポジティブな印象があります。

りむ:根が明るいからじゃないですか(笑)。

――『ペイ*デ*フェ』の衣装やアイテムにしても、さまざまな配色で、中には鮮やかな色のものもありますね。

りむ:私自身、いろいろな色が好きなんですよ。グリーンやピンクも好きだし、同じように黒も好き。特定の色を避けるわけじゃなくて、自分の合ったイメージのものを出すという感じですね。

――一方で、寒色のイメージがある東欧によく旅行に行かれていますよね。

りむ:東北の出身なので、寒い国のものが自分の肌に合うんですよね。寒くて、陽が差さなくて、ちょっと内向的で閉じこもる感じというか…。華やかなものよりも、ちょっと暖かみがあるものが好きですね。都市というよりも、片田舎だったり。国もメインじゃないところが好きです(笑)。

――「ウイルス」コレクションの後に、お子様が無事出産されたのですよね。制作する上で心境に変化がありましたか?

りむ:大人の女性が自分の世界を持ったまま着れる服を作りたいという気持ちが、どんどん強くなっていますね。子どもが産まれたこともありますが、今から3年前に主人と家を買ったんですよ。それ以降、社会から外れるのではなくて、人との関わりあいの中で生きていながら、普段から着れて、自分の世界や少女性を持ったまま着れるものを作りたいというふうに、気持ちが向いています。

――実際、洗いやすい素材で普段着としても使えるワンピースやTシャツのラインナップも多いです。

りむ:そうですね。もちろんパーティー用の服もありますけれど、普通に喫茶店に行ったり、演劇を観に行ったり、普段から着れるものも出しています。例えばトレンチコートでは、パッと見ではわからないけれど裏地がウイルス柄になっていて、自分のアクの強い部分や、遊び心を隠し持っている、大人になっても変わらない内面を表現できれば、と思っています。

(以下、後編 http://otajo.jp/37779 に続く)

pays des fees (オフィシャルサイト)
http://pays-des-fees.com/ [リンク]

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ふじいりょう

乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営し、社会・カルチャー・ネット情報など幅広いテーマを縦横無尽に執筆する傍ら、ライターとしても様々なメディアで活動中。好物はホットケーキと女性ファッション誌。

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