天才ゲームクリエイター飯田和敏・インタビュー「人と会うためにゲームを作っていこうとおもう」
『アクアノートの休日』や『太陽のしっぽ』、『巨人のドシン』などの革命的ゲームを世に送り出してきた天才ゲームクリエイター・飯田和敏氏のゲーム『ディシプリン*帝国の誕生』 *1。Wiiウェアとして昨年8月25日に発売されたこの作品は、研究施設の檻(おり)の中という狭い空間で収監されている人々のお世話をする、不思議なゲームである。
この作品が文化庁メディア芸術祭の審査員会推薦作品に選ばれ 、美術館に展示されるという快挙が起こった数日後、動画制作にも関わってきた『実況野郎B-TEAM』の加藤レイズナ、たろちん、ルーツ(Revinは残念ながら欠席)が手作り料理を飯田さんにふるまうという謎(なぞ)のイベントが、ガジェット通信編集部でひっそりと行われた。
食事後、膨満感に苦しむ飯田氏からいくつかの本音コメントを聞き出すことに成功したため、これをガジェット通信が追ってきた『ディシプリン』事件完結編としてお送りしたいと思う。イベントの模様は幻冬舎のWebマガジン『実況野郎文芸部(B-TEAM)』*2でレポートされているので、こちらも合わせてお読みいただきたい。
・満腹中枢MAXインタビュー
飯田 いっぱい食べたよー。おなかいっぱいすぎて倒れそう。あ、胃腸薬ないですか。
記者 どうぞ。
飯田 (胃腸薬を飲み、おなかをさする)うー、もう食べれない。
記者 お腹いっぱいのところ申し訳ないのですが、いろいろとお話を聞かせていただけますか。
飯田 えー、嫌です。
記者 え?
飯田 だって、ゲロ吐いちゃいそうだよ。いいの? むしろゲロするか! 本音を語るよ。
記者 飯田さんが作ったゲームの『ディシプリン』では、良い意味でもハプニングがいろいろありましたね。スタートからエンディングまでの全工程の実況動画を発売前に『ニコニコ動画』にアップロードして、ソッコーで8万回再生を達成したかと思ったら、ソッコーで動画が削除される*3ということが起こったり。
飯田 そうですね。
記者 クリエイターである飯田さん自身が、『mixi』や『Twitter』で『ディシプリン』について書いている人に直接コメントしたり。
飯田 いろいろやりましたね。今はできないですけど(遠い目……)。
・『ディシプリン』が美術館に展示されて
記者 弊社も関わらせていただいた『贖罪(しょくざい)会見』*4 、Wiiウェアランキングで1位もとりましたね。
飯田 金メダルとったね。
記者 そして、その『ディシプリン』が文化庁メディア芸術祭の審査員会推薦作品*5に選ばれて、美術館に展示されるという。これは本当に快挙ですね。取材で観に行きましたが、宮本茂さんの『スーパーマリオブラザーズ』のすぐ近くに『ディシプリン』が展示されていて、あのゲームを初めて知ったような人たちが、係の方の説明を聞きながら楽しそうに遊んでいましたよ。なんだかほほえましかったです。
飯田 僕も観に行ったけど、あれは嬉(うれ)しかった。普通だったら僕のゲームに出会うことができない人も遊んでくれて。つい遊び方を説明しちゃいましたよ。
記者 その場に居合わせた方はすごくラッキーでしたね。喜んでいました?
飯田 なんか楽しんでくれていてね。でも僕の方が喜んでいたかもしれないな。
・一つのハッピーエンド
記者 さて、『実況野郎B-TEAM』が料理をふるまってくれましたが、感想を教えていただけませんでしょうか。
飯田 『ディシプリン』の実況プレイを一緒にやった『実況野郎B-TEAM』も、いろいろな騒ぎや話題になる中で成長して、たろちんや加藤はライターとして活躍するようになり、ルーツ君もマンガ家デビューした。Revinはプログラムを組んだりしている。そんなふうに時代は変わっていく。『ディシプリン』は幸い注目を受けて、Wiiウェアランキングで1位をとることができて、今回文化庁メディア芸術祭の審査員推薦作品に選ばれ美術館にも展示されるということになった。こんな時代の中でね、暗い話題ばっかりの中で、小さいけれども一つのハッピーエンドだと思う。
今回、加藤が『実況野郎B-TEAM』の幻冬舎での連載終了にあたって、生まれてはじめて料理を作ってくれて、およばれして、僕はここのところ体調不良でほとんど何も食べれていなかったんだけれども、みんなの作った料理は、うまくはなかったが、いっぱい食べたよ。
記者 いっぱい食べてましたよね。あれ、まずかったですか。
飯田 あ、いや、言うほどまずくなかったかも。いや、やっぱりまずいかな? まあ、うまかったよ。
・人と会うためにゲームを作っていこうと思う
記者 『ディシプリン』というゲームを作ったことを、いま振り返ってみるといかがでしょうか。
飯田 こんなふうに、今まで知らなかった人達と接点を持つことができて、これからも友達でい続けることができる。そんなことがあっただけでも、このゲーム作って良かったなと思っています。だからこれからも、作り方はいろいろと変わっていくと思うけど、何のためにゲームを作るかというと、人と会うためにゲームを作っていこうと思う。
記者 最後に、『ディシプリン』という作品に込めたものは何だったのでしょう。
飯田 世の中ひどいことばかりだし、ひどいことを気にするようになるとそればかりが頭を占めてしまう。、そして実際、事件は終わらないし、止めることも出来ない。そんな中で、僕らが出来るたったひとつのことは新しい生命をはぐくむ努力しかない。それは子どもだったり、作品だったり、出来事だったり色々な形をとるけれど、結局は未来に希望を託していく。それしかできないんだ。
それは『ディシプリン』をエンディングまでクリアした人は分かると思う。
記者 ありがとうございました。
——–
『ディシプリン*帝国の誕生』というゲームを通じて、私たちもたくさんの出会いがありました。飯田さん、これからもたくさんの人をつないでいく、そんなゲームクリエイターでいてください。
今回のイベントを開催してくれた『B-TEAM』の皆さんにも感謝。また料理作りましょう。
*1:『ディシプリン*帝国の誕生』公式サイト
http://www.mmv.co.jp/special/game/wiiware/discipline/
*2:実況野郎文芸部(B-TEAM)
http://webmagazine.gentosha.co.jp/B-TEAM/index.html
『ニコニコ動画』のゲーム実況者4名(加藤レイズナ、たろちん、ルーツ、Revin)で結成された「文芸部」。09年4月から「webマガジン幻冬舎」で連載開始。漫画、コラム、人生相談、ネタ投稿と、メンバーの個性を活かした4本の連載と、その道の専門家に取材する特集で構成された記事は、これから社会に出て行く世代の共感を呼ぶ。10年3/1号で第一期を終了。
・加藤レイズナ http://twitter.com/kato_reizuna
ブログ:『レイズナブログ』
http://blog.livedoor.jp/reireizuna/
・たろちん http://twitter.com/tarochinko
ブログ:『おちんちんbelong』 http://tarochinko.blog92.fc2.com/
・ルーツ http://twitter.com/JT_roots
ブログ:『ルーツ家総本山』 http://soituhasugeeya.blog47.fc2.com/
・Revin http://twitter.com/rev84
プログラム: 『Ustream Checker』 http://revinx.net/ustream/
*3:『ニコニコ動画』から削除され、『Zoome』で公開後、再度アップされた動画
『ニコニコ動画』「発売前のゲームを実況プレイしたら売れねぇだろ【開発者自演】 part1」
http://www.nicovideo.jp/watch/sm8004053
*4:『ガジェット通信』「天才改め贖罪ゲームクリエイター飯田和敏『ディシプリン』”贖罪”記者会見レポート」
https://getnews.jp/archives/26968
*5:平成21年度[第13回]文化庁メディア芸術祭 エンターテインメント部門 審査委員会推薦作品
http://plaza.bunka.go.jp/festival/2009/recommend/entertainment.php
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