【ガジェット博物館 vol.1】カメラは小さな『部屋』から始まった:日本カメラ博物館

収蔵点数1万カメラ以上!

ガジェットの歴史がわかる&しくみが見える、そんな博物館に行ってみようという企画連載シリーズ「ガジェット博物館」の第一回は、カメラの歴史がまるごとわかる『日本カメラ博物館』におじゃましました。

半蔵門の駅からすぐのこの博物館には、世界で最初に市販された『ジルー・ダゲレオタイプ・カメラ』や、日本の歴史的カメラ、世界中の珍しいカメラなど1万点以上が収蔵されています。写真やカメラを展示する博物館は他にもありますが、これほどの数と種類のカメラを収蔵している博物館は、日本ではここだけだそう。

「年配の男性が、じっくりと時間をかけて見ていかれることが多いですね」と学芸員の山本一夫さん。「でも、デジカメが普及したことにより、写真を撮るのが好きになって、フィルムカメラを使い始める若い人も増えているんですよ」とのこと。

ところで、カメラのはじまりって「壁に穴をあけただけの暗い部屋」だったって知っていました? 紀元前には発明されていたという、カメラの原型を解説したパネルのあたりから、ご案内したいと思います。

撮影:エルモ

■カメラは小さな部屋から生まれた

暗い部屋で外の景色を眺める

カメラはそもそも小さな「部屋」から始まりました。暗くした四角い部屋の壁に穴をあけ、この穴を通して入った光が反対側の壁に、外の景色を映すというもので、『カメラ・オブスキュラ(camera obscura)』と呼ばれていました。ラテン語で、「カメラ」が「部屋」、「オブスキュラ」が「暗い」という意味だそう。今でいう、ピンホールカメラと同じような原理だったそうです。

昔は、この原理を使った箱を、画家さんが絵を描くのに使っていた時代もありましたが、「この映像をそのまま紙に焼き付けられないか」と考える人が現われて、写真技術が発展してできたのが今のカメラ、というわけなのです。複雑そうに見える機械も、はじまりはとてもシンプルなしくみなんですね。

■世界で最初のカメラ

入れ子になった箱でピント調節!


そして世界で最初につくられたカメラがこちら。『ジルー・ダゲレオタイプ・カメラ』です。日本カメラ博物館には、ジルー氏と同じ通りに仕事場を持っていたというビアンキ氏の『ビアンキ・ダゲレオタイプ・カメラ』もあります。ダゲレオタイプでは、入れ子になった箱を前後させて、ピントを調節していたそう。ジルー氏も、ビアンキ氏も、今のオートフォーカスカメラなんか見たら、腰が抜けるほど驚くでしょうね。

家具みたいな風情

この頃のカメラは木製で、まるで家具のような趣です。日本カメラ博物館には、1839年に、このダゲレオタイプ・カメラで撮影された写真パネルも展示されていました。露光時間はなんと約10分以上。何千分の1秒でシャッターが切れるようになった、現代のカメラからは考えられない超スローシャッターです。写真というよりは、なんとなくエッチングみたいな風合いですが、目の前の風景がカメラを通じて写し取られたのを見た当時の人たちは、どんな気持ちがしたでしょうか。古いものを見ていると、今現在あたりまえのように使っているものが、なんだかすごいモノに見えてきます。

■カメラを斬る!脱がせる!

きれいに切られています

一眼レフカメラをまっぷたつに切った『カットモデル』です。手前から、レンズ、絞り、そして一番奥にフィルムがあります。百聞は一見にしかず、カメラ内部のしくみがよおーくわかります。このカットモデル、真ん中でピタリとあうように、二つのカメラを切って作られるそうです。「切るとどうしても削れてしまうところがあるので、二つ使わないとピタリと合うものにならないんですよ」と、山本さんに説明されて納得。でも、高価なカメラを切るなんて、もったいない気もしますね。

まっぱだかのカメラ

同じコーナーには、内部の部品が見えるように透明の樹脂で筐体を作った『スケルトンモデル』もあります。カットモデルを見ていると「カメラって意外とシンプルかも」と思えたのですが、スケルトンモデルで複雑な配線がされた内部を見ると、やはり機械的で複雑な印象を受けました。カメラって、「身近なようで手が届かない存在」。きっとそこが、ツンデレ的にいいんですよね(ちょっと違うか……)。

■日本の歴史的カメラがズラリ

かつての愛機もここに!

日本カメラ博物館では、中立的な立場にある専門家や学識経験者から構成される『歴史的カメラ審査委員会』によって、その年に発売された新しいカメラを対象に、『歴史的カメラ』を審査・選定しています。選ばれるのは、「技術史的に日本最初の試みがなされているもの」あるいは「市場において特に人気を博するなど、歴史的にみて意義がある」国産カメラ。日本カメラ博物館には、過去に選ばれた『歴史的カメラ』のほとんどが収蔵されています。常設展では、その一部が公開されており、近年発売されたデジカメなども見ることができます。かつての愛機も、「歴史的カメラ」の称号を受けて並んでいるかもしれませんよ。

■スパイが愛したカメラ!? ディテクティブカメラ

スパイご愛用!?


タバコ、ライター、マッチにペン。これ、全部カメラなんです。昔のスパイのみなさんは、タバコに火をつけると見せかけて、写真を撮っていたんですね。「これ、実際にスパイ活動に使われたものなんですか?」と質問してみたところ、「すべてではないですが、『マッチボックスカメラ』は実際に使われていたと言われています」とのこと。まさに、映画みたいな現実ですね。このほかにも、ステッキの柄の部分がカメラになったもの、ジュース缶カメラなど、いろんな形のカメラがありました。常設展には出ていませんが、収蔵品にはKGBのバッグ型カメラなんかもあるそうです。

今はデジカメが高機能で小型化し、スパイの隠し撮りも難しくなくなり、もはや動画の生放送(?)で情報活動ができそうな時代になりましたが、昔のスパイ道具ってなんとなく夢があるカタチをしていますよね。

■おもちゃのカメラとカメラのおもちゃ展(終了)

愛嬌あるカタチのブローニー

小さいってかわいい

左下の望遠レンズ、秀逸!

たいへんカラフルです

取材に行った日は、ちょうど特別展の展示替えの最中で、前回の特別展の展示を見せていただくことができました。今回の取材で撮影を担当してくれた、「スイーツ(笑)ガジェット」を連載中のエルモさんは、特別展のコーナーからなかなか出てきませんでした。どうやら、エルモさんのスイーツ(笑)ガジェット魂に火が点いてしまったようです。

おもちゃのカメラもかわいいのですが、カメラのカタチをした置物やカメラを持った人形など、どれもすごく絵になるんですよね。もしかすると、目に見える風景やモノを絵に切り取る機能の面白さだけでなく、そのものもが絵になる姿をしていることが、カメラの人気の秘密のひとつかもしれません。

終了してしまったので、見に行っていただけないのが残念ですが、この展示に出ていたモノは、ほんともう、全部ガジェ通博物館の「殿堂入り」にしたいくらいでした。

■フィルム写真を撮りたくなったら

博物館グッズのポスター(300円)

日本カメラ博物館は、財団法人日本カメラ財団(JCII)が運営する博物館。博物館と同じ建物のなかには、写真とカメラに関する貴重な資料を集めた『JCIIライブラリー』や、写真展などが行われる『JCIIフォトサロン』も併設されています。

また、『JCIIアカデミー』では、プロの写真家から撮影のテクニックの指導や撮影実習もある『フォトクリニック』のほか、初心者向けの写真教室やワークショップなども行われており、写真を撮ることに興味を持ち始めた人の撮影入門にもなりそう。2009年5月には、『黒白印画紙でヴィンテージプリントを制作する』という教室が予定されています。モノクロフィルムの現像、暗室でのプリント製作が体験できて受講料は9,000円。定員少なめなので、ご希望の方はお早めにどうぞ

博物館には、カメラに詳しい方がいらっしゃいます。「古いカメラを持ってきて使い方を質問されたり、どのくらい価値があるのかを尋ねる方もいます」。これからフィルムカメラの購入についての相談もOKとのこと。カメラと写真を愛する人の強い味方になってくれる博物館です。

■日本カメラ博物館
カメラ収蔵点数日本一! カメラと写真の面白さがわかる博物館。展示はワンフロアだけですが、密度が濃いのでついつい滞在時間が長くなりそうな予感。1月27日~5月17日は、特別展「世界のカメラ探訪 ~カメラを作ってきた国々~」が開催され、世界中の珍しいカメラを見ることができます。
http://www.jcii-cameramuseum.jp/

住所: 東京都千代田区一番町25番地 JCII 一番町ビル(地下1階)
交通: 東京メトロ 半蔵門線半蔵門駅 5番出入口より徒歩 3分
東京メトロ 有楽町線麹町駅 3番出入口より 徒歩 8分
開館時間: 午前10時~午後5時
休館: 毎週月曜日 (月曜日が祝日の場合は翌日の火曜日)年末年始
入館料: 一般 300 円、小・中学生 無料/団体割引(10名以上)一般 200 円
電話: 03-3263-7110

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Kyoko Sugimoto

京都在住の編集・ライター。ガジェット通信では、GoogleとSNS、新製品などを担当していましたが、今は「書店・ブックカフェが選ぶ一冊」京都編を取材執筆中。

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