【ライブレポ】紫 今が築き上げた、音楽というシェルター──〈PURPLE SHELTER -ep.1-〉東京公演

2026年10月3日、東京・SHIBUYA CLUB QUATTROにて、
開演時刻を迎えると、サイレンの音が鳴り響き、不穏な空気が会場を包み込む。やがてステージに姿を現した紫 今は、強烈なシャウトを轟かせた。その歌声は、不安や緊張感を切り裂くかのように響き渡った。

オープニングを飾ったのは“革命讃歌”。壮大なサウンドが革命の幕開けを告げ、会場の空気を一気に引き締める。続く“ゴールデンタイム”、“フラットライン”では、アップテンポなナンバーを立て続けに披露。力強さとしなやかさを併せ持つ紫 今の歌声が、バンドサウンドとともに会場を満たしていった。
さらに次のブロックでは、“魔性の女A”をはじめ、“Not Queen”、“ウワサのあの子”を披露。持ち味である、楽曲ごとに表情を変えるヴォーカルがさらに際立つ。妖艶さと鋭さを自在に行き来しながら、楽曲の持つキャラクターを鮮やかに描き出す。多彩な楽曲を織り交ぜ、紫 今というアーティストの幅広い表現力を見せつけていた。


一度暗転し、会場の空気が切り替わると、バラードナンバー“八月の花火”へ。先ほどまでの勢いある展開から一転、情緒豊かな歌声がライブに新たな彩りを添える。紫 今の魅力は、パワフルな歌唱だけではない。繊細な感情の揺れや、楽曲に込められた物語を声のニュアンスで表現する力も持ち合わせている。ひとつのライブの中で、さまざまな感情の景色を描き出せることも、彼女の大きな魅力だろう。ちなみに、今回のツアーでは裸足でステージに立っていることをMCで明かした紫 今。ライブ中はパワフルながらも、MCでは自然体なパフォーマンスの背景には、そんなスタイルも関係しているのかもしれない。
再びステージが動き出すと、“Server Down”を披露。続く“ブルーチーズ”では、ゲストにmuqueのAsakuraを迎え、特別なコラボレーションが実現した。サプライズでのゲスト登場に、会場からは大きな歓声が上がった。

さらに、“メンタルレンタル”へとつなぎ、ライブは再び加速。思わず身体を揺らしたくなるような、躍動感あふれる楽曲が続き、会場の熱気を高めていく。ゲストとの共演も交えながら、ソロアーティストとしての枠にとどまらない、紫 今の音楽的な広がりを感じさせるステージとなった。
そして、再び会場が暗転。披露されたのは“最愛”だ。ここまでの激しいナンバーから一転、楽曲の持つ感情にじっくりと向き合う時間が訪れる。優しさと力強さを併せ持つ愛の歌が、会場いっぱいに響き渡った。



圧巻のライブを披露した紫 今は、今回のツアータイトルに込めた想いを語った。
「夏に、制作のために引きこもって過ごしていた時期があったんですけど、心があまり元気ではなくなってしまって。無性にみんなに会いたくなって、早くライヴがしたい、みんなの顔が見たい、みんなとあたたかい時間を過ごしたいと思っていました」
そんな日々のなかで、改めてファンやライヴハウスの存在が、自分にとってかけがえのないものであることに気づいたという。
「その時に、みんなの存在やライヴの時間が、私を救ってくれているものなんだなって気づくことができて。私にとって、みんながシェルターなんだなって思ったんです。私も、もしみんなが心につらさを抱えた時に、この空間や私の音楽が、みんなにとってシェルターのような存在になれたらいいなと思って、今回『PURPLE SHELTER』というタイトルをつけました」
さらに、今回のライヴのコンセプトである「滅亡した世界」についても言及。宇宙人の侵略や隕石の落下といったSF映画のような世界の終わりだけでなく、現実の世界にも、そうなってしまった方が楽だと思えるほどのつらさや残酷さが存在すると語った。
「それでも、この空間だけは絶対的に汚れも痛みもない、幸せな場所として、シェルターとして守っていきたい。実家みたいに、いつでも帰ってこられる、『おかえり』『ただいま』と言い合える、そんな場所にしていきたいなって思っています」
そして、孤独を感じる瞬間があっても、決してひとりではないと呼びかける。「絶対に私がいて、絶対にみんながいて、ここには紫 今の音楽がいつでもあるので。人はひとりにはなれないし、私がひとりにはさせないから」
そしてライヴでエネルギーをチャージし、再び外の世界へ踏み出してほしいという願いを込めて、“New Walk”を披露。軽やかなステップを踏むようでいて、それでいて力強い一歩が踏み出された。
続いて、二人目のゲストとしてyowa(CLAN QUEEN)が登場。“天獄と地極”を披露した。異なる個性を持つアーティスト同士の共演が楽曲に新たな表情をもたらし、この日限りの特別なステージを作り上げた。

ライブはいよいよ終盤へ。“青春の晩餐”、“メロイズム”、“合法パンチ”と、エネルギーに満ちた楽曲を立て続けに披露。さらに“凡人様”へと続き、会場の熱気は最高潮に達する。紫 今の楽曲に通底しているのは、誰かの価値観にとらわれず、自分自身の感情や生き方を表現しようとする意志だ。多彩なジャンルを横断しながらも、一曲一曲に彼女ならではの視点が息づいている。
なかでも印象的だったのは、“凡人様”の終盤に巻き起こったシンガロングだ。会場に響き渡る歌声が紫 今の歌声と重なり、フロアとステージが一体に。彼女の音楽だからこそ生まれた、かけがえのない景色がそこに広がっていた。これまで積み重ねてきた多彩な表現がひとつの流れとなり、ライブは鮮やかなクライマックスを迎えた。

終盤のMCでは、2027年春にワンマンツアーを開催することを発表した。そのツアーファイナルの会場は、東京・Zepp Shinjukuだ。
「Zeppは、私がひとつの目標として掲げてきた会場なので、こうして叶えることができて、本当に嬉しいです。ぜひ今日ここにいるみんなと一緒にZepp公演も実現できたらなと思っています。また会いに来てくれますか?」
続けて、これまであまり語ってこなかった自身の生い立ちについても明かした。
「今まで、自分の生い立ちや過去のことをあまり話してこなかったんですけど、もしかしたら、この話を聞いて力になれる人もいるんじゃないかなと思って、少し小さい頃の話をします」
まだ小学校に上がる前の幼い頃、周囲になじめず、クラスの中で孤立していたという紫 今。ある日、クラスで誰かが描いた少し怖い絵が見つかり、先生が絵を描いた人を探し始めた際、クラスメイトから紫 今の名前が挙がったという。
当時、仲間外れにされたり、自分だけ名前で呼んでもらえなかったりする経験をしていた彼女は、その出来事に深く傷ついた。先生に自分の気持ちを伝えても信じてもらえず、話を聞いてもらえなかったことも、幼い心に大きな影を落とした。


「『私の名前を呼んでほしい』『誰かに私の言葉を聞いてほしい』っていう気持ちがその時に生まれて。それが呪いみたいなものになって、音楽を始めるきっかけになりました」
幼い頃に抱えた痛みやトラウマ。それらは、音楽を始める原動力となり、今ではファンとの出会いにもつながっている。
「今は、その呪いやトラウマが、こうしてみんなに出会わせてくれたものでもあります。だから少しずつ、あの痛みも無駄じゃなかったなって思えるようになってきたし、あの経験と痛みがあったからこそ、みんなに出会えて、音楽を始めて、このシェルターが生まれたと思ったら、人生捨てたもんじゃないなって、そういうふうに思いました。本当に改めてありがとう」
自身の過去と向き合いながら、音楽を通じて生まれたファンとのつながりへの感謝を伝えた紫 今。最後には、今後も夢を追い続けていく決意を語り、さらなる未来への意欲をのぞかせた。

そしてラストナンバー“ギンモクセイ”へ。ライブを締めくくるこの楽曲が、終末世界を描いたステージに柔らかな余韻を残す。滅亡した世界の中に存在する「PURPLE SHELTER」。その場所は、単に外の世界から身を守るための避難所ではない。音楽を通じて感情を解き放ち、誰かとつながることのできる場所でもあるのだろう。
〈PURPLE SHELTER -ep.1-〉と題された今回のワンマンツアー。タイトルに冠された「ep.1」から察するに、これはひとつの物語の始まりでもあるのだろう。紫 今が生み出す楽曲の数々と、彼女自身の多彩なヴォーカルの表現によって形作られた、唯一無二の音楽世界。今回のシェルターの先にどのような景色が待っているのか。2027年のワンマンツアーも発表され、紫 今の描く物語は、これからさらに広がっていく。
取材&文:ニシダケン
Photo by Natsumi Korimoto



セットリスト
紫 今〈PURPLE SHELTER -ep.1-〉
2026年10月3日(土)東京・SHIBUYA CLUB QUATTRO
M1. 革命讃歌
M2. ゴールデンタイム
M3. フラットライン
M4. 魔性の女A
M5. Not Queen
M6. ウワサのあの子
M7. 八月の花火
M8. Server Down
M9. ブルーチーズ(Guest:Asakura/muque)
M10. メンタルレンタル
M11. 最愛
M12. New Walk
M13. 天獄と地極(Guest:yowa/CLAN QUEEN)
M14. 青春の晩餐
M15. メロイズム
M16. 合法パンチ
M17. 凡人様
M18. ギンモクセイ
インフォメーション
・HP
https://mulasaki-ima.com/
・YouTube
https://www.youtube.com/@mulasakiima
・Instagram
https://www.instagram.com/mulasakiima/
・X
https://twitter.com/MulasakiIma
・TikTok
https://www.tiktok.com/@mulasakiim
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。
