新たなビジネスを生み出す多彩な技術が集結!「ビジネスチャンス EXPO in TOKYO」現地レポート

11月26日(水)・27日(木)の2日間、東京ビッグサイトで開催されている「ビジネスチャンス EXPO in TOKYO」には、ロボティクス、AI、ものづくり、フードなど、個性豊かな企業が集まっている。広い会場内には未来のビジネスを感じさせる技術が所狭しと並び、来場者は次々と新しい刺激に出会える構成である。

中でも印象に残ったのが、“身体の情報”そのものを活用するアプローチだ。デジタルと身体感覚を結びつける技術群が注目を集めており、本記事ではその代表例としてヒトやロボットなどと体験を共有する最新技術「BodySharing®」を軸に、会場で話題を集めていた技術をいくつか紹介する。

身体の「感覚」をそのまま活用する最新技術が登場

身体の動きや力加減といった“内側の情報”をデジタル化し、遠隔地のロボットや別の身体に伝える。そんなSF的な発想を実現しようとする技術が会場で紹介され、多くの来場者が足を止めていた。琉球大学とH2Lが共同で展開する「BodySharing®」関連の展示である。

体験共有装置「カプセルインタフェース」

6月にリリースされた「カプセルインタフェース」は、ユーザーの動き・力の入れ方・筋肉の膨らみといった身体内部の情報をロボットへ伝達する装置だ。座ったままの姿勢で利用でき、従来必要だったウェアラブルデバイスや複雑な操作訓練を不要にしている。

展示ではまず、筋変位センサによるキャリブレーションが実演されていた。ユーザーの筋肉量を測定し、動かした際の“膨らみ”を読み取ることで、ロボットの動きを同調させる仕組みである。同じユーザーが使い続けるほど動作精度が向上していく点も印象的だ。

応用範囲は広く、危険区域での遠隔作業、農作業支援、家事サポート、医療・リハビリ、さらには体の不自由な人の生活補助まで多岐にわたる。利用環境や用途に応じたカスタマイズも可能で、現場ニーズとの親和性の高さを感じさせる技術である。

感覚データ化プラットフォーム「Maaart」

「Maaart」は、熟練者の微細な力加減や身体の使い方を定量的に記録し、可視化するプラットフォームである。展示ではゴルフスイングを例に、どの局面でどれだけ力が入っているかが視覚的に示されており、従来“感覚”として伝承されてきた技術がデータとして理解できる仕組みが紹介されていた。

スポーツ分野に限らず、工場の技能継承や工芸品製作といった領域でも活用可能性がある。さらに、蓄積したデータをアップロードすることで報酬を得られる仕組みも実装されており、技能の価値を新しい形で提示するプラットフォームとしての役割も期待される。

リモートワーカー支援「BodySharing® for Business」

「BodySharing® for Business」は、筋変位センサによってリモートワーカーの身体状態を把握するサービスだ。メタバース空間上で社員の状態を可視化し、緊張の度合いや疲労感などを捉えることができる。発話が難しい障がい者支援にも応用可能で、体調や心身の不調を客観的に把握することで、周囲が適切にサポートできる点が強みだ。

世界初の4人乗り4足歩行ロボットが示す“乗れる未来”

そのほか、会場でもひときわ目を引いたのが、三精テクノロジーズによる世界初の4人乗り4足歩行ロボット「SR-02」である。

搭乗体験を目的に訪れた来場者も多く、歩行時の安定感や重厚な駆動音は、巨大ロボットならではの迫力があった。産業用だけでなく、災害現場や宇宙開発への応用も視野に入れており、日本のロボティクス技術の可能性を象徴する展示といえる。

AIが「ドキュメント」と「対話」を進化させる

AI関連の展示が増える中、リコーの取り組みは現場の実務に寄り添う“実装志向型”のアプローチが際立っていた。

まず注目を集めていたのが、自然な音声対話によって案内や提案を行う「バーチャルヒューマン AI エージェント」である。画面越しに人と会話するような感覚で情報提供ができ、商品の提案、問い合わせ対応、店舗・施設案内などを担う“デジタルスタッフ”として機能する。ブースでは勤続年数や勤務地といったプロフィールが設定されたバーチャルヒューマンが登場していたが、見た目・声・性格といったキャラクター性も柔軟にカスタマイズできる点が特徴だ。

RICOH JAPANなどでの導入が進んでおり、実際の業務シーンでの活用が始まっている。

一方で、図表を含む文書を読み取り、必要な情報を正確に引き出す「マルチモーダルRAG」も来場者の関心を集めていた。請求書、技術資料、経営資料など、日本企業の現場で日常的に扱われる文書には図や表が多く含まれる。しかし、従来の検索手法では求める情報にたどり着くまでに手間がかかるという課題があった。

リコーはこの問題に対処すべく、GENIACプロジェクトで600万枚以上の視覚データ生成やアノテーションを実施し、高精度な読解モデルの開発を進めている。ユーザーが「何を知りたいのか」「どこに情報があるのか」を把握したうえで検索・回答する点が強みで、企業内ナレッジの効率的な活用に貢献する技術である。

地域の魅力や技術が集まるブースも賑わい

会場内は、フード、ものづくり、ライフスタイル、サービス・DXといったテーマごとにエリアが分かれ、それぞれ最新の技術や商品が紹介される構成となっている。フードゾーンではスイーツや発酵食品、アップサイクル素材を使った食品などが並び、試飲・試食ができるブースも多く、終日活気に満ちていた。

また会場奥には、全国の商工会議所が集まる展示ゾーンも広がっており、各地域の特色ある展示が展開されていた。

【出展ブース例】

  • 野菜の色素を使った「おやさいクレヨン」(mizuiro)
  • ヴィーガン&グルテンフリースイーツ(松竹圓)
  • 精密な温度管理を支えるフレキシブルヒーター(サカエ)

さらに奥には商談コーナーが設置され、出展者と来場者が実際の導入や協業の可能性について意見交換する姿も見られた。展示を通して“知る”だけでなく、その場でビジネスへとつながる接点が生まれていたのが印象的である。

まとめ

「ビジネスチャンス EXPO in TOKYO」は、ロボティクス、AI、身体情報の活用など、未来を見据えた技術が一堂に並ぶ場であった。特にH2Lが展開する「BodySharing®」技術は、技能継承、遠隔作業、生活支援といった社会課題に対して新たな解決策を提示しており、その可能性を強く感じさせる内容である。

一方で、SR-02のような乗用ロボットや、リコーによるビジネスの現場のニーズに応えるAI技術など、多様なアプローチが未来の働き方・暮らし方を多角的に描き出していた。さまざまな領域の技術と出会える展示会であり、来場者が“未来の選択肢”を体験できる貴重な機会となっている。

 

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