自然美を堪能と違った楽しみ方も!歴史や新たな富士登山の魅力が知れる富士山精進口登山道とは

世界中の人々を魅了する富士山。一度は頂上を目指してみたいと多くの人が登山に訪れる。そんな中、富士登山のまた違った魅力が知れる登山道があるのをご存知だっただろうか。今回、実際に筆者が体験してきたのが富士山精進口登山道。歴史や秋の紅葉の美しさを感じるこの登山道を歩くことは通常の富士登山とは異なり自然美との触れ合いや発見の連続だった。

世界遺産の富士山

日本の象徴とした聳え立つ富士山。2013年には世界文化遺産に登録されている。その富士山が噴火災害を繰り返していた最古の記録は8世紀にも遡る。この頃含め、富士山は人々の信仰の対象としても存在していた。また、多くの芸術作品としても富士山は描かれ、日本文化の象徴となっている。

そのような中、時代と共にいくつか富士山の登山道が開かれた。そして今回、登山に訪れたのが富士山精進口登山道だ。

この登山道に行くには先ずは赤池のバス停を目指し、徒歩で登山道の入り口に向かう。体験したのは赤池を出発し、富士山の5号目まで到着できるルートの一部。

それでも紅葉の季節と重なり、美しい自然美をたくさんみることができた。この登山道は大正時代に整備された比較的新しい登山道。精進湖南岸の赤池を起点に、青木ヶ原を抜け、大室山、長尾山などの側火山の間を縫うように登り、小御嶽に至る距離17km以上、1400m近い標高差を登る長いルートだ。その中に青木ヶ原樹海や富士風穴、大室山など雄大な自然が残されている。

登山スタート

今回の取材では天神峠から富士風穴付近の県道71号との交差地点までを、下山という形で体験した。

今回は入山前に特別に溶岩流の供給源となった天神峠付近の火口の一つを見た。氷穴火口列は少しボコっと穴が空いたような凹んだ地形となっていて、昔の噴火の跡を感じることができた。

そして天神峠付近の登山道から入山開始。精進口登山道は近代になり当初は林業のために開削されたという点で、歴史的に成り立ちが大きく異なるのが特徴である。五合目まで通じていることから、後に観光開発の目的で整備され1923年(大正12年)に竣工した。

歩き始めると意外に木々が伐採された人が通れる道のようなものがある。それに沿って歩けば初心者でも迷いづらい印象だ。

道中は自然豊かで、木々が生い茂っている。春夏は新緑、秋は紅葉、冬は静けさの中の木漏れ日などが楽しめそうだ。また、この登山道は富士山とは異なり、真冬以外は登山ができるので、長い季節で楽しめる。

登山道入口付近ではスコリアが降ったことから土が形成されているため植物もしっかり育った様子が見られる。しかし、進むほどに溶岩の上に何も降らなかったため、土が形成されない地形となる。そのため、木々が根をはれずに地表をはっていくような樹海らしい景観に変わっていく。

そのような歴史を感じ、植生の変化も楽しめるのがこの登山道だ。

下り続けると、岩を積み上げて石垣状に組んだ道が見られる。これによって窪んだ地形を歩きやすくしているなど、林業のために車両が通れるようにした痕跡が見られるのも面白い。樹海の中の自然資源によって産業も発達し、人々の生活に潤いをもたらしていたのだ。

木が根をはれない場所(溶岩が流れたところ)と木がしっかり根をはれている場所(溶岩が流れなかったところ)の境目などもあり、溶岩が流れた境目が見れるのは自然の偉大さを感じ、感慨深い。

最後に富士風穴(国指定天然記念物)を見た。

富士河口湖町の精進地区の青木ヶ原内に所在し、青木ヶ原丸尾(溶岩流)内の溶岩洞穴。標高1,110m、長さ230m以上、洞底幅5~10mの大きさだ。天井も高く平均5mで、ほとんど直立のまま出入りできる規模の大きい溶岩洞穴である。火山の噴火で流れ出た溶岩の表面が空気に触れて冷え固まってカサブタのようになり、内部の溶岩が流れてできるコウモリ穴のような洞窟を溶岩洞窟と言う。

この富士風穴については明治30年頃に着目された。中が非常に冷たく、年間を通して約0度を保っている。明治時代は養蚕が活発となり絹生産が行われた。蚕の卵をこの風穴に入れて冷蔵保存してから取り出すと蚕の卵が、春がきたと勘違いして孵化を始める。そうすることで蚕の孵化が増え、絹がたくさん取れるため、この風穴が注目された。この風穴の中に建物や管理事務所を置くなど当時は蚕の卵を預かる事業も行われていたそうだ。

また、下に降りる階段状の石がきは大正時代に後の昭和天皇が皇太子時代、ここに視察にくるということで造られた。そんな殖産興業を支えた重要な場所でもあると知っておくと登山時に面白いだろう。

そして今回の特別体験は終了。ごく一部の区間の体験だったが、噴火の名残りや産業の歴史、人々が紡いできた痕跡を見ることができた。また、普通の富士登山では見られない自然や紅葉、木漏れ日も気持ちよかった。

もし登山や富士山に興味があるのなら、ぜひこのような登山道も訪れてみてはいかがだろうか。新たな発見や魅力を知れるはずだ。

 

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