【「インパルス板倉さんのバンライフ」インタビュー】あえて“普通のハイエース”で一人旅する理由。気づいたのは「旅する場所と住む場所、それぞれの“最適解”」

車中泊をするようになって「家のすごさ」も分かった。インパルス板倉俊之さんがハイエースで一人旅をする理由と、そこから得たもの

愛車のハイエースで車中泊をしながら旅をする長尺の動画を、自身のYouTubeチャンネルで発信している板倉俊之(いたくら・としゆき)さん(インパルス)。試行錯誤しながら車内で快適に過ごすための「生活空間」をつくる様子や、アクシデントに見舞われつつもどこか楽しそうに乗り越える姿が好評で、人気を集めています。
多忙な日々の合間を縫って、板倉さんはなぜ旅に出るのか? 車中泊ひとり旅の魅力や、空間をカスタマイズしていく楽しさ、そして、旅を続けるなかで気づいたこと、考え方の変化などについても伺いました。

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旅をしながら必要だと思ったものを、少しずつ増やしていく

板倉俊之さん

(撮影/嶋崎征弘)

――板倉さんは3年前からハイエースを使った車中泊ひとり旅を続け、自身のYouTube(『板倉 趣味チャンネル』)で発信していますよね。以前、SUUMOジャーナルでもバンライフ(バンを生活拠点とする暮らし)を取り上げていますが、「車で寝泊まりをしながら好きな場所へ行く」という点では共通していると思います。そもそも板倉さんは、どんなきっかけでハイエースでの車中泊旅を始めたのでしょうか?

YouTube『板倉 趣味チャンネル』

YouTube『板倉 趣味チャンネル』

インパルス板倉さん(以下、板倉):数年前にハイエースを買ったときから、ずっと旅に出て車中泊をしたいと思っていました。ただ、一人は怖いから、同じハイエース持ちの馬場くん(ロバート)とかに、行きたいねっていう話をしていたんですけど、なかなかスケジュールが合わなくて。

車中泊をしたくてハイエースを買ったのに、このままじゃ一生行けないな……と悲しくなってきたので、勇気を出して一人で山梨に向かったのが最初ですね。動画に関しては記録用に撮っていただけです。自分がおじいさんになったときに見ようと思っていただけなので、YouTubeで出すかどうかは決めていませんでした。

――ちなみに、どうしてハイエースを購入しようと思われたのでしょうか?

板倉:そもそも、ずっとキャンピングカーが欲しかったんです。幼少期から憧れていたし、楽しそうだし、『ウォーキング・デッド』でもキャンピングカーがあると生き残れるし。それで調べてみたら、ハイエースのコンパクトなキャンピングカーがあって、これならマンションの駐車場にも置けそうだし、家具とかも全部ついているし、いいかもと思ったんですよ。

ただ、ちょっと待てよと。旅をするってことは荷物を載せるわけだけど、例えば車中泊のためにキャンピングカー内の椅子を動かしたりして寝床をつくるときに、その荷物はどこに置いておけばいいのだろうか?みたいな疑問が湧いてきまして。キャンプ場とかだったら外にいったん出しておけばいいんだろうけど、いちいちそれをやるのも面倒だなと。だったらノーマル車をベースに、自分で必要だと思うものを追加していったほうがいいなと思い、キャンピングカーじゃない普通のハイエースを買いました。

【「インパルス板倉さんのバンライフ」インタビュー】あえて“普通のハイエース”で一人旅する理由。気づいたのは「旅する場所と住む場所、それぞれの“最適解”」

(撮影/嶋崎征弘)

板倉さんの愛車(YouTube『板倉 趣味チャンネル』より)

板倉さんの愛車(YouTube『板倉 趣味チャンネル』より)

――ノーマル車をベースに、自分でカスタマイズしていくのも楽しそうです。

板倉:とりあえず車内で寝るためのベッドキットを入れて、実際に車中泊をしてみたら寒すぎて眠れないからFFヒーターを入れて……とか、必要に応じてどんどん積み重ねていきました。効率は悪いんでしょうけど、最初から色んな設備がついているとありがたみが分からないじゃないですか。一つひとつ、「これは必要なものなんだ」と思いながら増やしていけたのが良かったなと思います。

車内の様子(YouTube『板倉 趣味チャンネル』より)

車内の様子(YouTube『板倉 趣味チャンネル』より)

あとは、途中で天井にダウンライトを入れたんですけど、それまではマグネットを使ってライトを吊るしていたんですよ。最初はそれが楽しくて。「よし、これから夜を迎えるぞ」って、ライトを準備するワクワク感があったんです。でも、段々と面倒になってきて、結局はダウンライトを後付けしました。それも最初から導入するんじゃなくて、「面倒くせえな」を経験してからのダウンライトだから、良さをより感じられる。別にそういうことを狙ったわけじゃないけど、結果的に自分にはこのやり方が合っていたと思います。

カスタマイズで重要なのは「得られる恩恵」と「削られるスペース」のバランス

板倉俊之さん

(撮影/嶋崎征弘)

板倉俊之さん

(撮影/嶋崎征弘)

板倉俊之さん

(撮影/嶋崎征弘)

――YouTubeのハイエース一人旅でも、試行錯誤しながら快適な空間をつくっていく様子が伺えます。最近は「車内水道システム(※)」を導入されていましたよね。

※車内水道システム:YouTube『板倉 趣味チャンネル』の「ハイエース一人旅47」で初登場。電動ポンプとバケツ(生ゴミ用)を駆使することで、車内で水道を使えるようになった。詳しくは動画を参照。

車内水道システム(YouTube『板倉 趣味チャンネル』より)

車内水道システム(YouTube『板倉 趣味チャンネル』より)

板倉:あれはマジで発明ですよ! 伝わらないかもしれないけど、あれだいぶすごいんです。似たようなことをやっている人は他にもいるんですけど、だいたいは給水用のタンクと排水用のタンクを並べているんです。ただ、それだとかなりスペースを食ってしまう。僕の場合は給水タンクを“床下”に置くことによって、かなりの省スペースで水道が使えるようになりました。他にも工夫ポイントがあるんですけど、とにかくめちゃめちゃ効率の良いシステムを編み出したと思っています。なぜか、真似してる人を見たことがないけど。見た目がただの生ゴミのバケツだからかもしれません。

――あれができたことで、車内で歯磨きができるようになるなど、QOLが向上していますよね。

板倉:バケツをもうちょっとでかくすれば、洗顔までいけるかなとも思ったけど、重要なのは「得られる恩恵」と「削られるスペース」のバランスなんです。これだけのスペースを使うに値するだけの恩恵を得られるかどうか。そう考えたときに、洗顔はマイナスのほうが大きいからやめておこうとなりました。

――貴重なスペースをいかに無駄なく有効に使うか。そこが悩ましさでもあり、楽しさでもある。

板倉:そうですね。特に「床面」は貴重で、一瞬でなくなってしまいますから。天井にパイプを通して物をひっかけるようにしたりと、なるべく床面をフリーにするためにいろいろやってますね。

――限られた予算で住まいを選ぶ際、広さを妥協している人も多いと思います。貴重な床面をどう残すかという考え方は、住まいにも共通することですね。

板倉:そうですね。実際、家でも「縦の空間」をいかにうまく使うか、みたいなことは考えるようになりました。

――カスタム系で、これからやってみたいことはありますか?

板倉:いつかはキャンピングカー仕様というか、サイドに収納棚をつけたいと思っています。そうすれば、床下からいちいちトースターを出したり、出発前に片付けたりしなくていいので。ただ、それをやるともう後戻りができない。一番ダメなのは、棚をつけることで貴重な床下が削られて、寝づらくなってしまうこと。なので、今のところはまだ引き返せるレベルのカスタマイズに留めています。

板倉俊之さん

(撮影/嶋崎征弘)

旅先でのアクシデントも「一人で乗り越えるゲーム」だと思えば楽しい

――あらためて、板倉さんが感じる車中泊旅の魅力を教えてください。

板倉:車中泊の一人旅って、「一人で乗り越えるゲーム」としてめっちゃ面白いなと思います。誰の手助けもないから、自分で乗り越えるしかなくて。作戦がハマってうまくいったときはすごく楽しいし。それは一人の良さかもしれないですね。

――冬の会津を旅したときには、豪雪でハイエースが埋もれそうになり、何度も雪かきをされていました。

板倉:出発前はあんなことになるとは思わなかったんですけどね。猪苗代湖の白鳥に餌をあげたり、スノーシューで雪の上を歩いたりと、優雅な時間を過ごすつもりだったんですけど、あんな生きるか死ぬかみたいな状況になるとは。

でも、いつかリベンジしたいです。雪がどんなに積もってもドアが開く状態をどうにかつくり、FFヒーターがなくても暖かい空間をつくるための作戦を立てられたら、またチャレンジしたい。

板倉俊之さん

(撮影/嶋崎征弘)

――動画を拝見すると他にもいろいろと大変な目に遭われていますが、板倉さんはそんなときでもどこか楽しそうです。アクシデントすらもゲームのようにクリアしていく感覚なんですね。

板倉:まあ、そういうのだけじゃなくて、単純に車中の時間が楽しいっていうのもありますけどね。旅だけじゃなく仕事でロケ現場に行くときにも普通にハイエースを使うんですけど、撮影の合間にお弁当を食べるだけでもちょっと楽しかったりしますから。

車中泊カスタム車があれば、どこにでも部屋ごと行ける。それがロマンっていうんですかね。最初はすぐに飽きるのかなと思ったんですけど、ぜんぜん飽きないです。

車中泊をし始めてから「家ってすごいな」と思うように

板倉俊之さん

(撮影/嶋崎征弘)

――旅をするようになってから、自身の内面や考え方が変化したと感じることはありますか?

板倉:「旅する場所」と「住む場所」の違いみたいなことは意識するようになりましたかね。僕はずっと市街地で生きてきたから、常に自然への憧れみたいなものはあるんです。実際に田舎を旅しても、やっぱり自然っていいなと感じるんだけど、同時にここで暮らすとなると過酷だなと思うところもあって。毎日絶景を見て過ごしたいと思う半面、最寄りのスーパーまで車で1時間かかるのはしんどいなと考えてしまう。今のところ「市街地8、自然2」くらいのバランスが僕の限界なのかなと思います。だから、たまにハイエースで旅をするくらいがちょうどいいのかな。

あと、車中泊をするようになって、家ってすごいなとあらためて思いました。コンクリートで囲われた中にキッチンがあって、風呂があって、トイレがあって。用を足してもボタンを押せば遠くへ流れていくし、夜も電気をつければ闇を恐れなくていい。今まではそれが当たり前だったけど、これってとんでもないことなんだなと分かったのは良かったですね。

――板倉さんはアクティブに行動して色んなことを経験されていますが、そうした経験からしっかり何かを得ているのが本当に素晴らしいと思います。

板倉:車中泊もそうですけど、自分の人生で「必要なこと」をしているなっていう確信はありますね。今後どんなふうに生きるか、どんな作品に携わるかは分からないけど、今やっていることは絶対に無駄にならないだろうなと思います。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
板倉さんのハイエース旅の動画は本インタビュー時点で60を数えます(2025年11月11日時点)。限られたスペースで色んな工夫をしたり、アイテムを導入したりして楽しさや快適さを求めていく記録は、部屋づくりという視点でも参考になりそうです。そうした空間のアップデートも含めて、板倉さんにとっては「ゲーム」なのかもしれません。

また、旅を通じて自分にとって最適な「市街地と自然のバランス」が分かったというのも、板倉さんらしい深い洞察です。田舎暮らしや二拠点居住に憧れる人は、まずは板倉さんのように色んな場所を訪れ「暮らす」という視点で土地を観察してみてはいかがでしょうか。

板倉俊之さん

(撮影/嶋崎征弘)

●取材協力
お笑いコンビ「インパルス」の板倉俊之さん
1978年1月30日生まれ。堤下敦さんとお笑いコンビ「インパルス」を結成。
芸人活動だけではなく小説やエッセイを執筆し作家としても活躍している。
Youtube「板倉 趣味チャンネル」では愛車のハイエースとともに車中泊やキャンプを楽しんでいる様子を公開中。
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