改正健康増進法施行から5年、加熱式たばこ専用室のある飲食店で働く従業員への影響は? フィリップ モリス ジャパンが調査
2020年4月に全面施行された改正健康増進法により、多くの施設において屋内が原則禁煙となった一方、加熱式たばこ専用室を設けていれば、加熱式たばこと共に飲食可能となる経過措置が認められた。
施行から5年を経た2025年10月23日、フィリップ モリス ジャパン(PMJ)は、都内で「加熱式たばこの屋内空気と周囲への影響」に関するメディアセミナーを開催。
法改正当時には得られていなかった、加熱式たばこ専用室を有するカフェで働く従業員のニコチン受動曝露に関する最新調査結果を発表した。
ハーム・リダクション:より害の少ない選択肢へ
▲PMJ コミュニケーションズ ディレクターのシウ セシリア氏
煙のない社会の実現を目指すPMJには、「吸っていない人は吸い始めない」「喫煙している人は禁煙する」のがベストな選択肢であることを前提に、これからも喫煙する意思のある成人喫煙者に対しては、より害の少ない選択肢への切替えを促していく、“ハーム・リダクション”の考え方が根底にある。
紙巻たばこの煙に含まれる有害性成分の発生は“燃焼”によって起こるが、加熱式たばこではたばこ葉を“加熱”することによって、発生する有害性成分の量を大幅に低減している。
紙巻たばこの煙と比較して、IQOSから発生するエアロゾルに含まれる有害性成分の量は平均して約95%低減しているという化学的分析が報告されている。
では、加熱式たばこ専用室を有するカフェにおいて、実際に加熱式たばこを使用しない従業員への影響はどうなのか。
従業員のニコチン曝露量は低水準に抑制
PMJでは、禁煙室と加熱式たばこ専用室を併設するカフェチェーン6店舗を対象に調査を実施。
空気中のニコチン濃度を、静的ポンプを用いて測定したところ、調査を実施した全ての店舗において、禁煙室および加熱式たばこ専用室のいずれにおいても、日本産業衛生学会ガイドラインに示されるニコチン許容濃度(500 μg/m³)を大きく下回っていることが確認された。
また、勤務中にポータブル装置を使用して測定した従業員個人へのニコチン曝露レベルは低く、化学物質の個人曝露測定のガイドライン(日本産業衛生学会)による「極めて良好(管理区分1A)」の作業環境に分類されることが確認された。
フィリップ モリス インターナショナル 東アジア&オーストラリア地域 サイエンティフィック・エンゲージメント責任者のクー イヴォンヌ博士は、「換気基準が守られている施設において、従業員の通常業務中におけるニコチン曝露の有意な増加を防ぐうえでは非常に有効であることが分かりました」と結論付けている。
専門家が評価:多角的な視点から安全性を検証
実際のところ、加熱式たばこのエアロゾルには、ニコチン以外にも様々な化学物質が含まれる。
パネルディスカッションに登壇した、東海大学理学部化学科教授の関根嘉香氏は、従業員のニコチン以外の化学物質への曝露に関する独自のシミュレーション研究を発表。「加熱式たばこ由来の化学物質において、許容レベルを超えるとは考えにくい」と、客観的な実測データを提示した。
労働衛生コンサルタントの小嶋純氏は、「労働衛生工学の分野では、もちろんリスクをゼロにできれば一番ですが、ゼロにできなくても減らすことに価値があると考えます。紙巻たばこから加熱式たばこへの切換えは、健康障害リスクを低減させるうえで有効であると言えます」と、ハーム・リダクションの観点から今回の調査結果を評価した。
今回発表された、加熱式たばこ専用室で働く従業員への影響に関する実証データは、今後の政策議論において重要な材料となるかもしれない。
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。
