新リース会計基準への対応を支援、SMFLのAIツール「assetforce リース会計パッケージ」
2025年10月23日、三井住友ファイナンス&リース株式会社(以下、SMFL)は、都内で「assetforce リース会計パッケージ」の発表会を開催した。
2027年4月から強制適用される新リース会計基準は、すべてのリース取引を貸借対照表に計上する大きな改正だ。企業は財務戦略の見直しを迫られており、準備期間は残り1年半。SMFLはリース会社としての「貸し手の知見」と、自社事業での「借り手の経験」を融合し、AI技術で効率的な運用を実現するパッケージを発表した。狙いは「制度対応の正しさ」と「現場のやりやすさ」の両立にある。
SMFL専務執行役員の有馬高司氏は、発表の背景を「2027年4月から新しいリース会計基準が適用されます。原則としてすべてのリース取引を資産・負債として認識する必要があり、多くの企業で資金調達や財務戦略の見直しが課題となるでしょう」と説明した。
これまでオペレーティングリースは賃借料として経費処理されていたが、新基準では「使用権資産」と「リース負債」を計上する必要がある。特に小売、航空、不動産、製造業などへの影響は大きい。
リース会社だからできた3つの強み
有馬氏はSMFLの優位性として「貸し手」「借り手」「DX推進力」という3つの強みを挙げた。
第一に、リース会社としての豊富な実績。SMFLは長年にわたり、リースを中心とした多様なファイナンスサービスを提供し、企業の事業成長を支えてきた。リース管理や会計を支える「スーパーネットリース」や「総合資産管理サービスASP」など、企業向けのパッケージも数多く手掛けてきた。
第二に、借り手としての経験。SMFLグループは金融会社であると同時に、不動産、再生可能エネルギー、サーキュラーエコノミーなど多角的な事業を展開しており、グループ自体もリース契約の当事者だ。実際、不動産事業では土地をリースしてビルを運営するなど、自らも新基準の適用対象となる立場にある。
第三に、デジタル技術の内製力。2016年には日本GEリース事業部門を買収し、デジタル開発力を強化。自社で構築したプラットフォームを基盤に業務改善を重ね、現在では700社以上が利用するデジタルサービスを展開している。こうしたノウハウを結集して生まれたのが「assetforce リース会計パッケージ」だ。
新基準がもたらす財務への影響
基調講演には、有限責任監査法人トーマツのマネージングディレクターで公認会計士の神谷陽一氏が登壇。リース会計専門委員として制度策定に関わった立場から、新基準の意義と課題を語った。
神谷氏によれば、新リース会計基準は国際会計基準(IFRS)第16号と整合する形で導入され、すべてのリースをオンバランス処理とする「使用権モデル」を採用している。適用は2027年4月以降の事業年度からで、早期適用も可能だ。
主な変更点は3つ。
1つ目は、リースの定義拡大であり、実質的にリースと判断される契約も対象に含まれる点。
2つ目は、全てのリース取引を資産・負債として計上する点。
3つ目は、リース期間の判定方法の変更だ。従来の「解約不能期間」を基準とする考え方から、延長オプションを含めた期間を算定に加える点。
これにより、貸借対照表の資産・負債は増加し、損益計算書では賃借料が減価償却費と利息費用に分かれる。「営業利益などの段階損益にも影響が出てくる」と神谷氏は指摘した。
企業はROA(総資産利益率)の低下や資金調達コストの上昇に備え、リース在庫の棚卸し、影響試算、システム導入を急ぐ必要がある。
AIが変えるリース管理の現場
続いて、SMFL DX推進部副部長の縄野雄大氏が「assetforce リース会計パッケージ」の機能を紹介した。SaaS型のこのパッケージは、AI-OCR(契約書のOCR読み取りとAIによるデータ抽出)でリース資産の管理を効率化する。リース資産の情報格納から期間判定、契約中の運用管理までをワンストップで支援。AIが入力作業を軽減し、複雑な契約書から資産・負債の算定を自動化する。AI-OCRは契約書の50項目のうち40項目(8割)程度を正しく自動入力できる精度を実現している。これは今後も随時アップデートしていく予定だ。
リース期間の推定値も自動算出し、「一定のロジックに基づいた推定値として提供する」と縄野氏。さらに、独自ロジックを組み込むカスタマイズも可能だという。続いて行われた質疑応答ではこの契約書の自動解析による具体的な事例として、SMFLグループの不動産事業会社での入力作業が50%削減したことを実績として回答していた。
承認フローの設計も強みのひとつだ。経理部門や管理部門など複数の担当者が段階的に承認できるワークフローエンジンを備え、複雑なプロセスを効率的に統制できる。価格は契約件数に応じた月額制で、導入支援チームが設定やトレーニングをサポートする。
会計の「正しさ」と「やりやすさ」を両立
新リース会計基準は、単なる会計処理の変更にとどまらず、企業の透明性と国際競争力を高める転換点となる。「assetforce リース会計パッケージ」は、AIによる自動化とリース事業者ならではの実務知見を融合し、この変革を支えるツールとして位置づけられている。
SMFLは今後、セミナーや個別相談を通じて導入支援を強化。2027年4月の適用開始に向け、企業はリース在庫の把握とシステム整備を急ぐ必要がある。「assetforce」は、会計の「正しさ」と現場の「やりやすさ」を両立させ、企業の変革を支える存在となるだろう。
「assetforce リース会計パッケージ」WEBサイトURL:
https://pr.asset-force.com/lap/
(取材・文/西本心)
ウェブサイト: https://getnews.jp/
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