世界と人々の繋がりを身を持って体験したコジマプロダクション10周年記念イベント“Beyond The Strand”レポート

2025年9月23日(火)、ゲームクリエイター・小島秀夫氏が2015年12月16日に設立したゲーム開発スタジオ“コジマプロダクション”の設立10周年を記念して、TOHOシネマズ六本木ヒルズで“Beyond The Strand”と題したイベントが開催。
当日は小島秀夫監督みずからが10年の歩みを振り返るだけでなく、同スタジオが手掛けた人気作『デス・ストランディング』シリーズのキャスト、映画やテレビ番組の制作や配給を手掛ける“A24”のサム・ハンソン氏のほか、ジョージ・ミラー監督やギレルモ・デル・トロ監督、押井守監督という世界的クリエイターが登壇。
新作タイトルの最新情報や今後のプロジェクトを語る豪華な内容となった。
繋がることの大切さを知る
本記事ではさまざまな発表があったコジマプロダクション10周年記念“Beyond The Strand”のなかでも、とくに筆者と関わりの大きなNiantic Spatialと連携した新プロジェクトに注目。
この貴重な瞬間に立ち会うことになった特別な“繋がり”をレポートしていく。

人生をかけて繋いだ縁の行く先
「筆者はサムワンだ」
コジマプロダクション(以下、コジプロ)が手掛ける『デス・ストランディング』とその続編『デス・ストランディング2』というゲームには、サム・ポーター・ブリッジズという人物が登場する。
彼は分断されたアメリカ大陸を舞台に荷物を運びながら各地で通信を復旧させ、大陸をつないでいく主人公。
そんなサムと“誰か”や“あるひと”、“1個人”などの意味を持つ“Someone”とかけ合わせて同タイトルのプレイヤーを“サムワン”と呼ぶ文化がある。
語りだしたら一晩あっても足りないので世界観やゲーム性については省略するが、要するに筆者は『1』と『2』を含めドハマリしたプレイヤーであり、文字を通じて人々とのつながりを築こうと歩き続けてきたサムワンだ。


▲前半では『デス・ストランディング』に関わったキャスト陣が次々と登壇。津田健次郎氏、井上喜久子氏、忽那汐里氏、伊藤潤二氏、三浦大知氏らが作品やキャラクターへの想いと制作秘話を語る。

▲後半では『デス・ストランディング』にも出演しているジョージ・ミラー監督、ギレルモ・デル・トロ監督、押井守監督が登壇。“エンタメの未来”について語り合う豪華なトークショーが行われた。
【Beyond The Strand:公式動画アーカイブ】
そんな豪華すぎる10周年記念イベントに今回、結論から言うと筆者は個人として招待されることとなる。
ある日、コジプロからの1通のメールが届く。
その内容がまさに“Beyond The Strand”への招待状だ。
コジプロから直接? そんなわけがない。
何かの間違いか、新手のフィッシングかもしれないと大混乱。
その日は怖くていったんなかったことにして仕事に専念するのだけど、頭のなかでサム(ノーマン・リーダス)やレイニー(忽那汐里)、デッドマン(ギレルモ・デル・トロ)など大好きな『デス・ストランディング』のキャラクターたちが「さぁ、こっちだ」と呼びかける。
この繋がりが誤り(詐欺メール)だったとしても、サムワンのひとりとしてこのイレギュラーは見逃せない。
恐る恐る参加申請の書類に個人情報を書き込んで提出。
それが正規のものだったことはこの記事からもわかるとおり。
しかしだ。
筆者が小島監督の全作品を網羅している熱烈ファンであっても、この夢の舞台に招待される理由が1ミリも理解できない。
豪華キャスト陣、愛してやまない作品を手掛ける映画監督らのトークを最前列で堪能しながらも、脳裏にはずっと「なんで呼ばれたんだ」という疑問がつきまとう。

▲映画『マッドマックス』シリーズでおなじみ、『デス・ストランディング』ではタールマンを演じるジョージ・ミラー監督。

▲映画『パシフィック・リム』や今年は『フランケンシュタイン』の公開を控えているギレルモ・デル・トロ監督は、『デス・ストランディング』でデッドマンとして登場。

▲日本を代表する映画監督である押井守監督は、『デス・ストランディング』でピザ屋として登場。筆者の大好きな劇場版『機動警察パトレイバー the Movie』などを手掛けた。

▲映画とゲームという産業が今後どうなっていくのか。その役割と重要性について熱い議論が交わされた。ぜひ、公式アーカイブを確認してほしい。
半信半疑のまま約1時間半が経過。
いちファンが最前列でただただ興奮しっぱなしという贅沢すぎる時間だけが流れていく。
そして、もう終わるというそのとき、眼の前に映し出されたのがこの映像だ。
【KOJIMA PRODUCTIONS and Niantic Spatial: A New Dawn】
映像が流れ出したその瞬間、おそらく誰よりもはやく事態を理解した。
「この映像はNianticだ」
約12年、Niantic Labs当時から関わってきた筆者には馴染みのありすぎるアプローチであり、とくに位置情報ゲーム『Ingress』を深く知るものであれば誰もがピンと来たはずだ。

▲冒頭、この映像で全身に電撃が走る。

▲うんうん知ってるぞ、あれはポータルだ。遠からずそのような存在だろうし、長らく追いかけてきた夢が現実になろうとしているのだろう。

▲XRグラスを使って世界を見るようなシーン、現実世界に映し出されるさまざまなデジタル表現はまさに。

▲出てこい、 Niantic Spatialのロゴ! たのむ、Nia……

▲出たぁぁ!! この瞬間、号泣(最前列で何度もハンドタオルで涙を拭いていたのは自分です)。
古くはMSX2の『メタルギア』から小島監督のファンであり、この約12年『Ingress』をきっかけにNiantic(現Niantic Spatial)を追いかけてきた筆者にとって最高のサプライズだ。
そんなわけで今回、コジプロとNiantic Spatialがパートナーシップを締結。
Niantic Spatialが持つ地理空間AI技術を活用し、現実世界に拡張する次世代イマーシブエンタテインメントの共創を目指すようだ。

▲Niantic Spatialの創業者兼CEOであるジョン・ハンケ氏が登壇。ジョーン、俺だ、いつも無茶振りしてる俺だ!!

▲新プロジェクトのジャンルやプラットフォームは明かされなかったが、コジプロが手掛けてきた『デス・ストランディング』シリーズのテーマを考えればそれだけで期待値はバク上がりだ。
地理空間AI技術“大規模空間モデルLGM”やARプラットフォームを開発するNiantic Spatialは、フィジカルとデジタルの世界をつなぎ、世界を広げる基盤を構築してきた。
その技術開発に多少なりともプレイヤーとして関わることが多い『Ingress』エージェントである自分は、まさに『デス・ストランディング』のサムワンというわけだ。
これも縁。
人とのつながりを求め誰かの役に立てるならと、約23年ライター業を続けてきた筆者にとってこのうえないサプライズ。
このさきどんな体験が待っているのか。
コジプロとNiantic Spatialのファンとしてはもちろん、今後もみなさんとのつながりを大切にさまざまな情報をお伝えしていきたい。
改めて自分が“サムワン”であり、すべき役割を強く再認識する貴重な時間だった。

▲じつは当イベントの夜、ジョン氏らNiantic Spatialのメンバーと合流。その様子は別途『Ingress』サイドの記事でリポートしたい。
P.N.深津庵
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(執筆者: 深津庵)

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