絶品ラクダ料理と「サウジ文化を味わえる」体験型レストラン! Aseebレストラン

サウジアラビアに旅する時、美味しいローカル料理を食べることは一つの楽しみですが、その一方で「本当のその地の味」に出会うのはなかなか難しいかもしれません。しかし、それを見事に体現しつつ、現代的な演出や空間設計で「食文化の体験」にまで昇華させた有名レストランがあります。
リヤド市内北部、Alyasmin地区に佇むレストラン「Aseeb(عسيب)」は、サウジアラビアの中心のナジディ(ナジド)文化の伝統を現代の食卓に伝える注目のお店。サウジアラビアのリヤド市民だけでなく、観光客を含め国内外の熱い視線を集めています。

<写真:リヤド市内に聳え立つ要塞のような店舗入り口>
Aseebは中東のレストランを評価する「MENA’50 Best Restaurants」では堂々の39位にランクインし、文化的な評価も非常に高く、Taste & Flavors誌では「Riyadh’s Culinary Gem(リヤドの美食の宝石)」と紹介され、Tripadvisorでは「料理、空間、体験の三拍子がそろった唯一無二のレストラン」として高評価を得ています。
中東地域の文化や家庭の温もりを、そのまま空間と皿に落とし込んだスタイルが多国籍なゲストの共感を呼んでおり、味・空間・演出の三拍子そろった体験型レストランなのです。Aseebは、リヤドで外すことのない、まさに折り紙つきと言える素敵なレストランです。充実したメニュー、博物館のような歴史を感じられる店内の装飾、どれをとっても素晴らしい場所なので、私も現地でゲストをご案内する時には必ず利用しています。
そんなAseebの魅力を、この記事でぜひ紹介できればと思います。
家庭の記憶とナジディ文化の継承を体現した場所
この素敵なレストランの背景には一組の夫婦の情熱と物語を語らずにはいられません。創業者のAbu Saud氏とその妻Umm Saud氏は、いずれもナジディ文化色濃い、リヤド出身。
ふたりは、長年にわたり家庭の食卓で育んできたナジディ料理の味わいを、もっと多くの人に伝えたいという強い思いを持っていました。「Aseeb」という店名も、”日差しがまっすぐ差し込む静謐な場所”という意味を持ち、家庭のぬくもりと地域文化への敬意が込められていることがうかがえます。
夫妻は母から受け継いだレシピを基に、ラムやラクダ肉、地域特有のスパイスや穀物などを駆使し、素材そのものの力を活かした料理を創出しました。彼らの料理は単なる再現ではなく、家庭の記憶とサウジアラビアの中心部、ナジディ文化の継承を体現し維持している場所としてのレストランであると考えているようです。

<写真:伝統的な装飾が施された6メートルを超える木製扉>
店舗に訪れる人がまず目にするのは、高さ6メートルを超える巨大な木製扉。この扉にはナジディの伝統的な幾何学模様が施され、カラフルな円形装飾がアクセントとして並んでいます。伝統的な文様が刻まれた重厚な戸の奥、古代の城塞をイメージさせるような立派な建物の中は、なかなかモダンな造りになっています。

<写真:壁一面にあるのは床に料理を置くナツメヤシの葉で折られたお盆>
2階に上がる階段の壁にはナジディの床お盆が大量に敷き詰められており、その先には高さのある天井が広がります。
店内にはマジュリス形式のような伝統的な床座(待合室の意味合いもあるでしょうが)だけでなく、現代の一般的なテーブル座、天幕で覆われた家族用のテーブルも用意されています。現地の人はもちろん、観光客、平日のビジネスマンなど、接待利用から家庭用まで幅広い利用方法が可能です。
伝統的に現地では床で食べる習慣はあるので、前出の広々としたマジュリス形式の床座席があるのはもちろんですが、床で食べるのに慣れてない観光客や腰の悪い人向けに椅子とテーブルでもいただけるのがありがたいです。

<写真:店舗内は古い伝統的な装飾が目立ちつつ、テーブル席が組み合わさった身体に優しい設計>
店内は高い天井とやわらかな照明に包まれ、壁面一面には手編みのわら細工、民族文様が施された小物も各所に置かれており、まるで文化博物館に訪れたかのような空間が広がります。ナジディ様式の装飾が施された店内は、古代と現代が交差する象徴とも言えそうです。

<写真:店のロゴとおしゃれなプレート、シルバー>
お店の中の雰囲気が素晴らしいのはもちろん、テーブルにあるお皿やシルバーも考えられており、統一感は万全。そして料理も魅力的です。
魅惑的なお米の家庭料理

<写真:マシュフールはおこげも美味しく食べれるラム肉の炊き込みご飯>
さて、写真にあります「マシュフール」は、ナジド地方の家庭料理の定番で、祝い事の際によく振る舞われる一皿。新鮮なラムの旨味が染み渡り琥珀色になったお米と、香ばしい玉ねぎを合わせていただくサウジ伝統の炊き込み料理です。少し高めの金額ではありますが、2〜3名分の分量になります。
特徴的なのは「Qararah」と呼ばれるカリカリの米の層──すなわち「お焦げ」で、鍋底に焦げ目をつけるようにして焼き上げられた部分。香ばしく食感のアクセントにもなります。
一緒に炊かれたカルダモンやクローブ、ドライレモンといった香り高いスパイスが全体に穏やかに香り、ラムの脂が程よくご飯に絡んで美味しくいただけます。
ご飯ものでは「Pumpkin Kabsa(パンプキン・カブサ)」もオススメです。丸ごとの新鮮なかぼちゃの中に、スパイスで味付けしたお米とラム肉を詰めてオーブンで焼き上げる豪華な一品。Aseeb特製のスパイスミックスがラムとライスに深みを与え、かぼちゃの自然な甘さと溶け合います。
また、提供時にはかぼちゃの蓋を開ける演出があり、香りが一気に広がるのも特徴。まさに「五感で味わう」逸品。カブサもサウジアラビアの家庭では慶事の際に作られるご馳走料理です。

<写真:英語メニューもあります・どれも美味しいので好きな具材、肉や魚などで選ぶのもいいかもしれません>
また、ナッツやドライフルーツをふんだんに使った「ミックスビリヤニ」は、彩りも鮮やかで香りも豊か。付け合わせの赤と緑のチリソースと合わせて食べると、甘味と辛味が交錯し、自分の好きな味を見つけ出すことができます。

<写真:家系のように味変を倒しむのも一興なので、いろんな味を試してみては!>
ぜひご注文あれ!もちろん、こちらも2〜3名分の分量になりますのでご注意ください。
おぉ、ラクダ肉!
さて、お米もいいですがやはり肉料理もオススメが!

<写真:こちらラクダ肉、Hashi(ハーシー)は生後1〜2年の若いラクダ肉を指します>
写真にあるHashi(ハーシー)は、羊でいうところのラムに相当すると考えていただければイメージが湧きやすいと思います。
ラクダ肉の素材の中でも高級食材とされ、貴重な部位と言われている背中から腰にかけての部位は柔らかく風味が豊か。遊牧民の祝宴や客人のおもてなしの際に提供される、象徴的な肉の部位とも言えます。
こちらのラクダ肉ですが、調理のプロセスとしては独自スパイスで下味を染み込ませ、肉繊維を柔らかくして、Aseebレストランの売りでもある炭火グリル仕上げによって表面を強火で香ばしく焼いた後、低温の炭火でじっくり火入れし、中はミディアムの焼き加減に調整。仕上げのソースは蜂蜜とタヒーネ(練りごま)を合わせた特製ソースを添えていただきます。
「ほう、ラクダ肉に蜂蜜ですとな?」と少し驚くかも知れませんが、炭火の香ばしさにスパイスと蜂蜜の甘じょっぱさが加わり、ラムや牛とも異なる新しいラクダ肉の味だけではなく、特殊なソースとの組み合わせというのは体験するには十分な価値があるものかと思います。
炭火で香ばしく焼かれた骨付き肉は、外はカリッとしつつも中は驚くほどジューシーで、この一皿だけでも訪れる価値があると評されています。添えられたライムを絞ればこちらもまた味変が可能ですし、ラクダ肉のいろんな味を試してみてはいかがでしょうか。
またラクダ肉で続いて人気なのが、サウジならではのラクダ肉を使った「キビービー」と「サモサ」。
噛むごとに肉の旨味が広がり、スパイスとの調和が心地よい! 食べ慣れないはずの食材ではありますが、大変食べやすい味に調整されています。
キビービーはブルグル(粗挽きの挽き割り小麦)とミンチ肉を混ぜて生地状にしたもので一般的にはラムまたは牛肉を使いますが、こちらではラクダ肉、玉ねぎ、松の実、シナモン・ブラックペッパーなど練ったもの。ブルグルの衣のパリパリ感と、羊肉とは異なる深いコクのあるラクダ肉のハーモニーはクセになると思います。
もちろんラクダ肉だけでなく、ラム肉、鶏肉も全て炭火焼きの素晴らしい味を堪能できますのでぜひ頼んでみてください。
さて、次にAseebのおすすめ飲み物は、Vimtoシロップを使ったドリンク。甘さと酸味のバランスに優れ、濃い味の料理にぴったりです。サウジ国民に愛され、ラマダン時期などでも良く飲まれています。
そして中東全域で定番とも言えるレモネード+ミントのレモンミントジュースの爽快感は、食後の口直しとして定番になっています。他にもトルコのアイランに近い、しっかり泡立って出される飲むヨーグルトもその味を堪能できます。
料理の味だけではなく、伝統工芸に彩られた空間、サウジ民謡が流れる空気、スタッフのあたたかい接客──すべてが「文化を味わう」体験として融合されているのがAseebレストランです。
この場所は単なる食事処ではなく、旅のハイライトとなる体験型スポットとして記憶に残る存在と言えます。

<写真:お店は広いので団体客でも問題なく訪問できます!>
Aseebでの食事は、博物館に行かなくても文化と共に素敵な料理をいただける体験。ぜひリヤドご訪問の際はAseebへ!

<写真:”日差しがまっすぐ差し込む静謐な場所”をお楽しみください。>
Instagram: https://www.instagram.com/aseeb.najd [リンク]
公式サイト: https://aseeb.com.sa [リンク]
(執筆者: 鷹鳥屋明)

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