『ドンキーコング バナンザ』レビュー:”穴掘り沼”にハマる中毒性MAXの時間泥棒ゲー

2025年7月17日に発売となったNintendo Switch 2専用ソフト『ドンキーコング バナンザ』は、ドンキーコング(以下、DK)を主人公に据えた3Dアクションゲームだ。謎の集団「ヴォイドカンパニー」に奪われた黄金のバナナ「バナモンド」を取り戻すため、DKが地下世界を冒険する物語が展開していく。Nintendo Switch 2の性能を活かした美しいグラフィックと、自由度の高いゲームデザインが特徴である。
発売から2週間以上が経過し、SNSでは「神ゲー」という評価が飛び交っている。しかし20時間近くプレイした筆者は声を大にして警告しておきたい。このゲームは、RPGで宝箱を隅々まで開けたい完璧主義者には絶対におすすめできない危険なゲームだと。
なぜ「おすすめしない」のか? 答えは単純、「時間が溶けるから」
本作の最大の魅力は、DKのパワフルなアクションによる「破壊」の爽快感だ。Yボタン一つで、敵や岩などを豪快にぶっ壊せる。また壁や地面もひたすら破壊し、掘り進めることで、周囲をほぼ更地にすることも可能だ。

▲Yボタンで壊しまくれ!


▲店だって壊せる! 迷惑客以外の何者でもないが、なぜか怒られない

▲地中を掘り進む姿はまるでモグラ
しかも掘れば掘るほどゴールドやバナモンドが出てくる。無限に湧き出る宝の山。「もう少しだけ……」と思っているうちに、気づけば何時間も経過している。
さらに厄介なのが、DKの「ハンドクラップアクション」だ。手を叩くとソナーのように周囲に隠れているアイテムのシルエットが浮かび上がる。「あそこに何かある!」と見つけてしまったからには、いくら目的地と逆方向だとしても掘り進まずにはいられなくなる。

▲ハンドクラップすると近くに隠されたバナモンドのシルエットが。掘り進めずにはいられない!
コレクター要素が時間泥棒すぎる件
ゲーム内で集められるバナモンドと化石。これらはコレクション要素になっているのだが、コンプリートを目指すと本当に時間が溶ける。一方でゴールドや宝箱の出現位置はランダム要素があるらしく、掘れば掘るほど出てくるのでキリがなく、ゲームも進めば徐々に「まあ無視しても良いか」という気持ちにはなってくる。


▲バナモンドを砕くと毎回演出が入る。嬉しい


▲金が噴き出しているところを壊せば大量のゴールドを獲得できる

▲宝箱ゲット! 中にはゴールドや化石・バナモンドの隠し場所が記された地図などが入っている。宝箱自体はランダムで出てくる様子だ
またバナチップというアイテムは、集めるとバナモンドと交換できる。危険な場所に配置されているものも多いが、結局これも「スーパーマリオ」のコインと同じようにランダムで集められるものなので無理に取りに行く必要はない。ただそれでも、見えてしまうと取りたくなるのがゲーマーの性である。

▲斜面に突き刺さっているのがバナチップ

▲画面右側にバナチップが! 無理に取りに行くのは回り道で危険だが、それでも集めたい……
「バナンザ」システムがゲームバランスを崩壊させる?
ゲームを進めると獲得できる「バナンザ」という能力。これを使うと「コングバナンザ(巨大なゴリラ)」「ゼブラバナンザ(シマウマ)」「オーストリッチバナンザ(ダチョウ)」に変身可能だ。なお、変身形態はこれら以外にも存在する。

▲コングバナンザはコンクリートをも砕く!

▲ゼブラバナンザは薄い氷の上を走れる。足が細くて速いからか?

▲オーストリッチバナンザは空を飛べる!……って、ダチョウなのに!?
例えば「コングバナンザ」になると、コンクリートをも砕くパワーを得られる。『マリオ』でいうところの「スーパースター」状態……とまではいかず、ダメージは受けるので過信は禁物だが、発動条件は「一定数のゴールドを集めるなどしてアドレナリンゲージをMAXにする」という簡単なものとなっている。

▲ゴールドを貯めてアドレナリンゲージを増やせ!

▲L、Rボタン同時長押しでお手軽変身!
つまり穴掘りに夢中になっていれば自然とゲージが溜まり、ほぼいつでもフルパワー状態になれてしまう。ゲームバランス的に大丈夫なのか? と心配になるレベルだ。
歴代ドンキーコングファンには簡単すぎ? 爽快感優先に感じるゲームバランス
そんなこんなで、中盤あたりまでの難易度はかなり優しめ。歴代ドンキーコングのような硬派なアクションを期待していると、良い意味で裏切られる。本作は「難しさ」よりも「気持ちよさ」を優先した作りになっている。


▲ボス戦もあるが、中盤くらいまではYボタン連打で倒せたりするので拍子抜けに感じることも
ただし、ステージの至るところに隠されている三角形の縦穴に入った際のチャレンジコース、または丸い穴に入った際のチャレンジバトルは歯ごたえがある。特にチャレンジコースは1つの穴で3つのバナモンドが獲得できるが、1つは確実に取れるものの、残り2つはヒントもなく探し出すのが困難。ここでもまた時間が溶ける。

▲三角の縦穴のチャレンジコース。例えばここでは風船を探してぜんぶ割るとバナモンドが1つもらえる。残りの2つは自力で探し出そう

▲歴代ドンキーコングのような横スクロール画面のチャレンジコースもある

▲丸い穴で挑戦できるチャレンジバトル。時間制限内に敵を倒せ!
効率プレイ vs 寄り道プレイ、どちらも正解
効率を優先すれば、穴掘りを最小限にしてサクサク進めることも可能だ。しかし、回り道することこそオープンワールドゲームの醍醐味。プレイスタイルに個人差が出るのも、このゲームの面白さの一つだろう。
ただし、バナモンドを集めるとスキルが解放されるシステムがあるため、完全に無視するわけにもいかない。このバランスが絶妙で、「効率的に進めたいけど、バナモンドも集めたい」というジレンマに陥る。

▲バナモンドでスキル解放。アクションが苦手ならライフを優先して上げるべき? ハンドクラップのソナーの範囲を上げる便利なものもあるので悩ましい
ポリーンが可愛すぎて辛い
またDKのパートナーであるポリーンは、本作のもう一つの大きな魅力だ。彼女の歌声はバナンザ変身の鍵であり、物語の進行にも重要な役割を果たす。最初はモジモジして歌うことに自信がない少女だが、冒険を通じて成長していく姿が丁寧に描かれる。

▲最初はモジモジしているポリーン

▲フロアをクリアするとポリーンがDKと一緒にドラミングする(胸を叩く)のがかわいすぎる
特に、ベッドで休む際のDKとの会話は毎回異なり、彼女の鋭いツッコミやユーモアが光る。こうした細かな演出は、読み飛ばすのがもったいないほどだ。


▲ベッドで寝ると毎回話しかけてくるポリーン。体力回復よりこれが聞きたいまである

▲「ダチョウって飛べたっけ?」ゲーム内のキャラ自らツッコミ入れてくるスタイル、好き
ポリーンの衣装変更も楽しく、例えば「ワイルドコーデ」にするとバナンザの変身時間が延長するなど、ゲームプレイにも影響を与える。
こうしたキャラクターの魅力や、彼らが成長していくストーリーが、単なるアクションゲームを超えた感動を与えてくれる。

▲DKやポリーンをコーデして冒険を楽しもう!
協力も妨害も!? マルチプレイの予測不能な楽しさ
また本作は、マルチプレイにも対応している。筆者はNintendo Switchと連動した「おすそわけ通信」を活用して家族と協力プレイを試みたが、ソロプレイとは一味違うカオスな楽しさに驚いた。協力プレイでは、2Pがポリーンの歌声を岩のように飛ばしてDK同様の破壊アクションを楽しめる。

▲マルチプレイも楽しい!
もちろんただ協力するだけでなく、イジワルをしたければNPCに攻撃を連発して話しかけなくしたり、DKの足場を崩して穴に堕とすなどの妨害行為も可能だ。

▲NPCを攻撃してもいなくなることはないが、攻撃を連打されている間は話しかけられないのでやめてほしい……
地面を掘るシーンでは、DKとポリーンが同時に破壊するため、誰が何を壊しているのか分からなくなる忙しさが生まれる。もはや「協力プレイ」ではなく「妨害ゲー」と呼びたくなるほどだ。

▲地中を掘り進めている際の協力プレイはカオスだ
一方で、空から襲う敵(岩を投げないと倒せないタイプ)は、ポリーンの歌声で援護射撃すれば簡単に倒せるなど、効率的な攻略も可能だ。ソロプレイのストイックな探索とは異なり、マルチプレイは笑いと混乱が絶えない。家族や友人と遊べる環境があるならぜひ試してほしい。

▲壁を覆う溶岩も協力プレイで簡単に除去できる。本来の協力プレイはこれ
Switch 2を買ったら、まずはこのゲームから
まだまだSwitch 2は品薄状態が続いている。とはいえ、量販店によっては予告なく販売されることもあり、これから購入機会は増えていくだろう。
本体だけ買ったものの何のソフトから始めればいいか迷っている人も多いはず。そんな人にこそ本作をおすすめしたい。
ハードの性能をフルに活かした本作は、グラフィックとパフォーマンスの進化を体感するのに最適だ。暑い今の季節にぴったりなビーチや水の表現が美しい貯水湖など、地下世界の美しいロケーションは圧巻である。Switch 2の性能の凄さや、幅広い遊びの自由度に触れる良い機会となるだろう。

▲夏だ! 海だ!「なんで地下世界に海や青空が?」とか言ってはいけない

▲ひたすら水の表現が美しい貯水湖。涼しそう
ただし……覚悟を持って挑むべき”時間泥棒”ゲーム
『ドンキーコング バナンザ』は間違いなく面白い。掘って、壊して、集めて、また掘る。この単純な繰り返しが、なぜこんなにも中毒性があるのか。完璧主義者には向かないと冒頭で述べたが、それは「つまらない」という意味ではない。むしろ面白すぎて止められなくなるから危険なのだ。
週末の予定がある人、締切に追われている人、睡眠時間を大切にしたい人は、くれぐれも注意してほしい。このゲームを始めたら最後、気づけば朝になっているかもしれない。それでも挑戦したいという勇気ある方は、時間泥棒を覚悟で、ぜひ広大な地下世界での冒険を楽しんでほしい。

(文:平原学)

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