映画『アマチュア』日本語吹替・中井和哉インタビュー「ラミ・マレックの繊細なお芝居をどう表現するか」

『ミッション:インポッシブル』、『ボーン・アイデンティティ』に次ぐ、新たなるスパイアクション・サスペンスが誕生!スパイ映画史上最も地味(アマチュア)な主人公、CIA最高のIQを持つが、殺しは“アマチュア”の分析官チャーリーが、最愛の妻の命を奪った国際テロ組織にたった一人で挑む、無謀で予測不能な復讐劇の幕が上がる───。
アクション満載のスパイ・サスペンス『アマチュア』が大ヒット上映中です。本作でラミ・マレック演じるチャーリーの日本語吹替を担当した中井和哉さんにお話を伺いました。
――本作とても楽しく拝見させていただきました!ラミ・マレックの吹替を担当されるのは3回目となりましたね。楽しさやプレッシャーはどの様に感じていましたか?
担当させていただけて嬉しかったです。「海外のこの俳優さんの吹き替えはこの人だよね」と、決まって演じられるような声優になることを目標の1つにしていました。ラミ・マレックは他の方もやっていらっしゃいますし、僕はたかだか3回目なんですけど、少なくとも「もう1回中井にやらせてもいいんじゃないか」と思っていただいたことが嬉しかったです。
一方で、昔の様にこの役者さんだったら絶対にこの人が担当するというような時代ではないですし、僕はラミ・マレックの担当だという意識は、正直なところ今もありません(笑)。そういう意味でのプレッシャーはなかったですが、ラミ・マレックは非常に達者な、繊細なお芝居をされる方なので、どうやって自分の仕事をしよう、日本語として表現出来るだろうかというプレッシャーはありました。
――おっしゃるとおり繊細なお芝居がとても素晴らしかったです。中井さんにはどの様なディレクションがありましたか?
僕は声優なので、彼が言葉を喋って演技しているのであれば、それを日本語として表現することこそが仕事だと思っています。ところが今回は、黙っていることの意味合いがとても大きいと感じたんですね。何かをじっと見つめているとか、無言で思いを巡らせていると言う描写が多くのことを語っていて、そうなると手も足も出ない。吹替の台本って、そういうところに無慈悲に「息」とかって書いてあるんですよ(笑)。それをどう表現していくかが難しい作業でした。
――それは本当にすごく難しい表現ですよね…!
僕は、どういうタイミングで喋っているか、どこで息継ぎをしているか、ここはこの辺で声を震わせて…というようなことを細かく見て、台本に色々と書き込んでおかないと不安になってしまうタイプなんです。でも、今回の場合は、割と“大づかみ”というか、繊細な演技だからこそ、今目の前で行われていることや彼の表情がどう動いたかということを、フレッシュに感じて声を当てるようにしました。台本に書き込んだものを表現することは、ちょっと違う感じがしたんですね。
チャーリーという人って、全然特殊じゃないんですよね。ズバ抜けているところはあるけれど、ものすごく悪いことを考えている人というわけではない。大事な人が亡くなってしまったということに対するチャーリーの感情は、僕らの生活の地続きにあるものだなと思ったので、ガッツリ作り込むというよりは画面から受ける印象を素直にトレースするような感覚でした。

――とても興味深いお話をありがとうございます。改めて、本作の見どころや、中井さんが感じた魅力を教えてください。
予告編やあらすじで明らかになっている状況を考えれば、どうしたって悲しくてハッピーエンドにはならないお話なのに、見終わったあとには「良い映画だな」という気持ちになれると思います。
一番最初にパリでテロリストの女性を追い詰めていくシーンは僕もすごく緊張して。今までの日常から飛び出して、絶対にありえないところに踏み込んでいくことになるので。チャーリーがヘンダーソン(ローレンス・フィッシュバーン)に銃口を向けたときにも思ったのですが、ラミ・マレックが人殺しの役を演じる映画なんていくらでもあるし、これからもあるんでしょうけれど、実際に銃を持ったらこうなるよね、というリアルさが胸に迫ってくる演技でした。スパイアクションなのに、主人公に逡巡があっても全く不自然じゃない。むしろそういったところがこの映画のトーンを決めているところが衝撃でした。ぜひ多くの方に楽しんでいただきたいです。
――ちなみに、チャーリーは“謎解き”が得意ですけれど、中井さんも謎解きはお得意ですか?!
苦手です(笑)。そういったゲームに参加する時には、得意な人に頼りたいと思っています。
――今日は楽しいお話をありがとうございました!

撮影:オサダコウジ

『アマチュア』大ヒット上映中
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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