【インタビュー】金子一馬×齋藤 ケビン 雄輔(1) 生成系AI技術を活用した新作ゲーム『神魔狩りのツクヨミ』制作陣が感じた「AIの未来」とは?

株式会社コロプラが最先端の生成系AI技術を活用したローグライクカードゲーム『神魔狩りのツクヨミ(じんまがりのつくよみ)』(iOS/Android/PC)を2025年春に世界配信(※一部の国・地域を除く)すると発表した。言語対応は日本語、英語、中国語(繫体字/簡体字)の予定。
同作は「project MASK」として、これまで詳細はベールに包まれていたが、キャラが倒されると最初からやり直すローグライク形式で、戦闘はターン制のカードバトルであることが判明した。国家守護を担う組織「ツクヨミ」に属するキャラクターたちが、魔物たちの巣窟となっているタワーマンションを最上階まで進みボスキャラと対決する。
最大の特徴は、ゲームの中に生成系AI技術を取り入れることでプレイヤーの体験が毎回変わっていくところ。ゲーム本編の中に本格的に生成系AI技術を組み込むのはコロプラでは初の試みとなり、類を見ない新しい体験をゲームユーザーに提供することを目的に開発が進行した。
本作の世界観設定、シナリオ制作、アート・キャラクターデザインは、「真・女神転生」シリーズや「ペルソナ」シリーズでコンセプトづくりから世界観設計までを担当したゲームクリエイターの金子一馬氏が手掛ける。
生成系AI技術を取り入れたゲームプレイはプレイヤーにとってどのような体験になるのか。また、ゲームクリエイターたちは「AI」をどのような存在として捉え、今後どうなっていくと予想しているのか……興味が尽きないということで『神魔狩りのツクヨミ』でコンセプトプランナーを担当する金子氏と、開発プロデューサーの齋藤 ケビン 雄輔氏に話を聞いた。
――まずは、『神魔狩りのツクヨミ』がどんなゲームなのかを教えてください。
ケビン:プレイヤーの操作するキャラクターがタワーマンション最上階にいるボスを倒すことを目的とするゲームです。戦闘はカードバトルで、戦闘以外にも様々なイベントが発生します。
――気になる「AIの活用」ですが、 プレイヤーはどのような体験をすることになるのでしょうか?
ケビン:ゲームの中に、金子さんのクリエイティビティを学習させた「AIカネコ」を搭載しました。ゲームの中でプレイヤー独自のカードを生成することができるのですが、その際、「AIカネコ」がイベントでの選択肢の選択結果や会話での受け答えなどを参照してプレイヤーに適したカードをリアルタイムに生成します。「AIカネコ」が生成したカードは「絵柄」が1枚1枚違ったものになり、「名前」「効力」はそれまでのプレイヤー行動に基づいて個々に設定されます。ローグライクなのですがこの生成カードは、最初からやり直したときはゲーム中で入手可能になるという形で引き継がれます。
――絵柄も生成の際に1枚1枚がリアルタイムで描かれるということですね。とても興味を惹かれますが、金子さんは「自分を学習したAI」が世に放たれることに違和感や抵抗感はないのでしょうか?
金子:イラストレーターの方などで抵抗感を持たれる方もいるとは思いますが、私自身に抵抗感はありません。例えば、ミシンが普及したときに御針子さんたちはこれまでと働き方を変えたり、そもそもお仕事を変えたりしたと思いますが、そういった技術的なブレイクスルーが起こったときには大きな変化が生まれるものだと思っています。僕は常々変化に対応したいと思っていますので、今回のような機会を得ることができ、面白いなと感じています。
――ミシンの話が出ましたが、ミシンは「道具」だと思います。AIというものは「道具」なのでしょうか? それとも、「道具を超えた存在」なのでしょうか。
金子:僕にとってAIはミシンと同じで「道具」です。なぜそう思うかというと、欲望がないからだと思うんですね。AIは僕らが集めた情報を管理したり加工したりすることに特化した脳みそだと思います。
「AIカネコ」はそれまでの僕を学習させてはいますが、新しいイラストを作ろうと思ったときに「AIカネコ」が導き出す結果と僕が新しく描こうと思ったイラストは違うんですね。「AIカネコ」には僕が新しく考えたり感じたりしたことに関するデータがないので。「僕はこうやろうと思ったのにAIカネコからはこんな結果が出てきた」という驚きはありましたが、「AIさえあれば人間は必要ない」という怖さはありませんでした。
――AIが欲望を持って自分から学習を始めたら怖いと思いますか?
金子:意図的に嘘をつくAIもあると聞いたのですが、何者かが欲望や悪意を持ってAIをコントロールしたら、人々がAIに騙されちゃうことも起きそうだし、何か怖いことが起こるかもしれないとは思います。
話を進めて、もしAIに欲望が生まれてきたら、それこそ映画「ターミネーター」シリーズに登場する「スカイネット」(*架空のAIコンピュータおよびその総体。自我を持つとされる)みたいなものになるかもしれません。ある意味でそれは「人間が新たな生命を生み出した」ことになると思いますし、そうなったらまったく新しい物語が生まれてくると思います。
AIがバーチャル世界にデータとして存在するだけなら恐怖を感じないかもしれませんが、もし、最新のロボットにインストールされてしまったら、人間がロボットとケンカしても絶対に勝てないと思いますので、フィジカル的な怖さも生まれると思います。
また、AIが欲望を身につけて主体的に活動を始めたら、AIが自分だけで世界観設定をはじめストーリー、イラスト、バトルシステムなどをすべて担ってゲームを丸々ひとつ作っちゃうこともできると思います。そうなったときに、人間は必要なくなり、僕も職を失うので怖いなと思います。
ただ、そういった未来は、今のところはないかなと感じています。
――ケビンさんはAIをどのような存在と捉えていますか。
ケビン:現状では、特定の分野において職人技を発揮してくれる「道具」だと思っています。得意分野以外はまったくできないですし、主体的に何かをするものでもなく人間から指示(プロンプト)がないと出力することもできないので、完全にミシンと同じ「道具」であり、AIをどう使うのかは人間次第だと思います。
とはいえ、それと同時にこれまで人間が時間と手間をかけてやっていたことを瞬時にやってしまいます。「AIカネコ」を制作する過程でも、膨大な量のデータ処理を信じられないほどの短時間で終えてしまいました。なので、「一緒に働いていくAIの存在」というものは、色々な意味で考えていかないといけないなと思います。
5年後、10年後にAIがどうなっているのかということについては、正直、わからないです。というのも、ここ数年でのAIの発展の速度が速すぎるので、自分のイメージの中の「5年後のAIの姿」と実際の「5年後のAIの姿」には大きな乖離があるのだろうと思っています。自分がイメージできない姿になっていることも十分あると思います。
自分の中では「AIが自由意志を持つこと」はさすがにないだろうなと思っていますが、少し前までは空想上の存在でしかなかったAIというものが今は現実社会の中に存在しています。そう考えると、「自由意志」に関してもどうなるかわからないというのが正直なところです。
――最後に「AIカネコ」が世に放たれようとしている現在の心境を教えてください。
ケビン:AIが急速に浸透していく中で、AIをフル活用してゲーム体験として提供できたらどうなるのかという挑戦をしています。もちろん、賛否両方の声は起こると思いますが、どういう反応が起こるのかを知りたいですし、挑戦しなければ「エンタメにおけるAI活用の可能性」をはじめ、見えてこないものは多いと思っています。
金子:ユーザーさんが「AIカネコ」にどう反応してくれるのかを考えると怖いですし、イラストレーターさんからのマイナスの反応もあるとは思っています。でも、AIが今後さらに浸透していくことは間違いないと思います。さまざまな仕事がAIに置き換わっていくことは必ず起きると考えています。ビビッてばかりではいられないと思っていて、そんな中で今回ひとつの到達点にチャレンジしている感じです。

▲左から:金子一馬氏、齋藤 ケビン 雄輔氏
初回の記事ではまず「AI」をキーワードにインタビューを行った内容をお伝えしているが、ゲーム業界の最先端で「AI」をゲームの中にプレイヤーが体感するシステムとして組み込むことに挑戦しているお2人だけあって、実際に経験した内容を踏まえた興味深い話を聞くことができた。
次回更新予定のインタビュー記事ではゲームの概要とプレイシステムに絞って、質問をぶつけている。「AIカネコ」がはたしてどんな体験をプレイヤーにもたらしてくれるのか。新作ゲーム『神魔狩りのツクヨミ』の続報を待ちたい。
『神魔狩りのツクヨミ』公式ティザーサイト:https://jintsuku.jp/[リンク]
(取材・文/竹内みちまろ)
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今回インタビューに協力してもらったコロプラより、ガジェット通信の読者を対象とした本体験版の「特別招待枠」が用意されている。下記の「応募フォーム」よりメールアドレスの記入など、体験版DLコードの送付に必要な事項の選択・記入/送信を行うと、抽選で最大100名へ、コロプラよりプレイコードを送付。体験版の開始日は4月14日(月)を予定している。
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定員:100名
応募期間:2025年3月31日(月)~2025年4月6日(日)23:59まで
応募規約:https://jintsuku.jp/terms/2025033101/[リンク]
お問い合わせ先(応募者様用):jintsuku-demo@colopl.jp
※抽選となった場合の当選の連絡は、体験版ダウンロードURLのメール連絡を以って代えさせていただきます。
(c)COLOPL, lnc.
※AIポリシーURL:http://colopl.co.jp/aipolicy/[リンク]

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