【ライヴレポ】kurayamisaka、超満員の初ワンマンで放った一糸乱れぬ音の塊と旋律の美学

【ライヴレポ】kurayamisaka、超満員の初ワンマンで放った一糸乱れぬ音の塊と旋律の美学

kurayamisakaのワンマンライヴがすごかった。

内藤さち(Vo,Gt)、フクダリュウジ(Gt) 、清水正太郎(Gt.Vo)、阿左美倫平(Ba)、堀田庸輔(Dr)の5人で2022年に東京・大井町で結成されたロックバンド、kurayamisaka。

これまでにEPを1枚、シングルを2作品リリースしており、EP「kimi wo omotte iru」はCD、LPともに発売後に即完売。LPは追加の抽選販売も常に応募が殺到しているという。2022年8月に下北沢近松にて初ライヴを行って以降、口コミで評判が広がり、ライヴを行う度に動員がみるみるうちに増加。初自主企画ツアーでは4都市でチケットが全公演即完、〈FUJI ROCK FESTIVAI’2〉ROOKIE A GO-GOにも出演してさらに知名度がアップした。今年5月から行われる東名阪ツアーの会場規模も拡大しており、ツアーファイナルでは恵比寿リキッドルームでのライヴが控えている。そんな中で決定した渋谷CLUB QUATTROでの初ワンマンライヴのチケットも即完となり、その勢いはとどまることを知らない様子だ。

メディア露出はほとんどないにも関わらず、音楽ファンの注目を一身に集めているのは何故なのか?その魅力がどこにあるのか?満を持して行われた2月8日(土)のワンマンライヴ〈tomoran pre. kurayamisaka tte, doko? #4 -はじめての単独公演編〉の会場となった渋谷クアトロに足を運んでみると、フロアは若い世代を中心に後方までギッシリと埋まっていた。

BGMのボリュームが上がり暗転すると、拍手に迎えられてメンバーが姿を現した。セッティングの間、会場中が息を飲んでステージを見守る。静まり返り緊張感が漂う中、メンバーは堀田のドラムセットの前に集まり、手を伸ばして声を合わせて気合い一発、持ち場に着いた。

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中央にメインコンポーザーを務めるギタリストの清水が陣取り、「こんばんは、kurayamisakaです。今日は僕たちのはじめてのワンマンライヴにお越しいただきましてありがとうございます。しかも満員御礼ということで、本当にありがとうございます!」と挨拶して会場は拍手に包まれあたたかなムードに。その刹那、爆音と目潰しの照明がステージから放たれて、内藤が歌い出すとフィードバックがピタッと断ち切られて、すぐにギターをストローク。「theme (kimi wo omotte iru)」から「cinema paradiso」へと、EP『kimi wo omotte iru』と同じ流れでライヴがスタートした。内藤は舞台上手に立って歌い、その後方にドラムの堀田。清水とフクダのギター2人、ベースの阿左美は俯きながら、文字通りのシューゲイザースタイルで音を奏でながら、キメになると一斉に楽器を頭上に掲げて叩きつけるようなアクションを見せる。童謡のようにすら感じる綺麗なメロディ、内藤の優しい歌声が、やがて轟音と共に感情を露わにしてシャウトに変わると、フロアから「ウォ~!」とどよめきにも似た声が上がった。その声を飲み込むような音の洪水が渦巻く、怒涛のオープニングとなった。

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阿左美が弾くベースのゴリゴリなビートから始まるライヴアレンジが施された「seasons」へと続くと、内藤はギターを鳴らしながらフロアを見渡して笑顔を見せる。美しい旋律を口ずさむ物憂げなボーカルと、その裏側の内面を吐露するような激しく暴れるドラムプレイが対照的で、終盤のサビの繰り返しにはグッと迫るものがあった。

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【ライヴレポ】kurayamisaka、超満員の初ワンマンで放った一糸乱れぬ音の塊と旋律の美学

「今日は初めてのワンマンに来てくれて本当に本当にありがとう!集大成ではなくて、初ライヴのような気持ちで今日を迎えました。そしてみなさんにこうして会えたこと、本当に嬉しいです。ありがとうございます」(内藤)

【ライヴレポ】kurayamisaka、超満員の初ワンマンで放った一糸乱れぬ音の塊と旋律の美学

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ゆったりとしたスローな曲「last dance」では、先ほどとは打って変わって、深海を漂うような演奏とウィスパーボイスが心地良く響く。清水がエフェクティブなソロでさらに深く潜って行く。激しさがあるからこそ引き込まれる静寂は、バンドの奥深さを感じさせた。内藤の作詞作曲による「ハイウェイ」はシンプルな演奏が歌の良さを際立たせている。間奏で清水とフクダのギターが絡み合うと、どこまでも続く広いハイウェイを走って行くような清涼感のある展開に変わっていくところに、5人が描くサウンドスケープの非凡さがあった。

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清水がMCで新曲をたくさん披露することを告げてフロアを沸かせると、「何回かやってる曲もあるんですけど(笑)」との注釈も加えつつ、ギターをかき鳴らして「metro」が始まり、バンドが一体となって疾走する。曲が終わると耳をつんざくフィードバックから、阿左美にスポットが当たり和音で重低音を鳴らして、清水がアルペジオで静かに曲に誘う「kurayamisaka yori ai wo komete」へ。堀田のカウントからフクダと清水が高音をかき鳴らし、内藤は訥々と歌う。緊張と緩和を繰り返しながらピタッと曲が終わると、今度は堀田にスポットが当たりしばしのソロプレイからカウントを取って始まった曲は「sunday driver」。キャッチーで一緒に歌いたくなるサビメロが印象的だ。ギターの2人は顔を見合わせて手を上げてユニゾンソロを決めた。

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「まだまだ新曲をやっていきたいと思います」とのひと言から、清水が豪快なストロークを弾いて始まった曲のタイトルは、「sekisei inko」。ミディアムテンポで大きなリズムをとった曲で、これまで発表された曲とはちょっとテイストの違った、パワーポップ調な音が新鮮に思えた(ライヴ後にはこの曲が4月10日にリリースされることが発表された)。続いても新曲(タイトル未定)で、少し和風にも聴こえるキラキラしたギターリフから、音数が少なく淡々とした序盤からドラマティックに展開していく、メロディアスな曲だった。

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幻想的なSEに合わせてスキャットする内藤が、アコースティックギターを弾きながら「evergreen」を歌い出す。サイケデリックなサウンドと儚げな声で繰り返すフレーズ〈夏が足りないね〉が耳に残る。穏やかな空気感を醸し出しながら乱れることなく進んでいく演奏は、5人の中に流れる脈拍がバンドを1つにしていることが感じられた。その一糸乱れぬ呼吸の合い方、一体感こそが、叩きつけるような激しさを放出する曲でもバラバラにならずに発揮されるグルーヴなのだろう。それがこの曲の最中によくわかった。

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ライヴは後半へと差し掛かり、清水がマイクを取る。「改めまして、今日は来てくれて本当にありがとうございます。知らない曲ばかりだったと思いますけど、かっこよかったですか?(大歓声)近いうちに、録音してイヤホンでも聴けるようにするので、楽しみに待っていてください」。終わりたくねえな、と呟いた清水は続けて「自分がバンドをやるようになったのは10年以上前になるんですけど、部屋でコツコツ作った曲をみんなが聴いたらどう思うんだろうって想像していた、ある種自己満足の楽曲たちをこうやってみんなが聴いてくれて。チケット代を払って電車に乗って渋谷まで来てくれてっていう、想像もできない光景を今、目にしていると思います。本当にありがとうございます」と満員のフロアに向かい、実感を込めて感謝を伝えた。

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「俺の親友が作った曲です!」と紹介して自ら歌い出した「modify Youth」(清水が所属するバンド「せだい」のカバー)でライヴは後半へ。清水から内藤へとマイクリレーしてやがて歌声が1つになる。キメのあるタイトな演奏でこの日一番のポップな1曲に、終盤でオーディエンスから合唱が起こった。

【ライヴレポ】kurayamisaka、超満員の初ワンマンで放った一糸乱れぬ音の塊と旋律の美学

阿左美がベースを置いてステージ前に出て煽ってから始まった「curtain call」で、フロアは異様な盛り上がりに。一丸となって疾走しながら躍動するサウンドの中から、爽やかな内藤のボーカルが伸びやかに突き抜けて行く。続けざまに「farewell」に進むと、ライヴ中に終始それぞれの演奏に没頭していた感じだったフクダ、清水、阿左美がフロアの人々と向き合う姿も。「最後に1曲、大切な曲を」(清水)と、ハイトーンのギターイントロから最新曲「jitensha」へ。そのメロディは、どこか懐かしさすら感じさせるほど親しみやすい。清水がそんな歌メロの印象とは対極に思えるエモーショナルなギターソロを炸裂させる。落ちサビでは演奏がブレイクして内藤がギターを軽快にかき鳴らして歌う。16ビートとどっしりとした8ビートを混在させて、独特のノリが構築されているようだ。曲中のメンバー紹介を経て、エンディングへと登り詰めて行く5人。これがものすごい迫力で圧倒された。延々と続く演奏で興奮の渦を巻き起こすと、フロアからは称賛の拍手喝采が沸き起こった。

【ライヴレポ】kurayamisaka、超満員の初ワンマンで放った一糸乱れぬ音の塊と旋律の美学

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アンコールでは「いつも架空の歌詞を書くんですけど、この曲で初めて自分自身のことを書きました」と清水が紹介して、新曲「あなたが生まれた日に」が披露された。静かな立ち上がりから、5人が一斉に音を叩きつけて怒涛の2ビートで爆走すると、巨大な音の塊となってエンディングを迎えた。最後はメンバー同士で手を繋ぎお客さんに深々と一礼して感謝を伝えると、轟音の余韻を残してステージを後にした。

【ライヴレポ】kurayamisaka、超満員の初ワンマンで放った一糸乱れぬ音の塊と旋律の美学

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1時間半、全16曲。1人ひとりが奔放に爆音を鳴らしているようでいて、片時も緩むことのない一体感のある演奏のグルーヴと心を掴む歌声は、圧倒的な迫力と求心力があった。途中のMCで清水が言った「今年、やっとまとまった音源を出せると思います。鋭意作成中なので、お楽しみに」との言葉に期待して、今後の活動を追い続けようと思う。

【ライヴレポ】kurayamisaka、超満員の初ワンマンで放った一糸乱れぬ音の塊と旋律の美学

写真:タカギタツヒト @tatsuhito_tkg (instagram,X)
取材・文:岡本貴之

ライヴ情報

 
kurayamisakaワンマンライヴ
〈tomoran pre. kurayamisaka tte, doko? #4 -はじめての単独公演編〉
2025年2月8日(土) 渋谷CLUB QUATTRO
〈セットリスト〉
1. theme (kimi wo omotte iru)」
2. cinema paradiso
3. seasons
4. last dance
5. ハイウェイ
6. metro
7. kurayamisaka yori ai wo komete
8. sunday driver
9. sekisei inko
10.新曲
11.evergreen
12. modify Youth
13. curtain call
14. farewell
15. jitensha
EN. あなたが生まれた日に

ツアー情報

〈kurayamisaka tte, doko? #5 「つま先から頭の隅に流れるツアー」〉
2025年5月24日(土) 梅田Shangri-La
OPEN / 17:15 START / 18:00
ゲストバンド : MASS OF THE FERMENTING DREGS

2025年5月25日(日) 名古屋CLUB UPSET
OPEN / 17:30 START / 18:00
ゲストバンド : mekakushe(バンドセット)

2025年6月4日(水)恵比寿LIQUIDROOM
OPEN / 18:00 START / 19:00
ゲストバンド : Homecomings

チケット販売URL : https://eplus.jp/kurayamisaka2025/
*チケット先行販売(五次抽選)
販売期間 : 2025年2月8日(土)20:00~2025年2月24日(月祝)

アーティスト情報

・kurayamisaka X
https://x.com/kurayami_saka

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