『ロマサガ2R』レビュー:キャラ育成・探索・ストーリー分岐、すべてが洗練された名作リメイク

昨年、2024年を振り返るとさまざまなゲームタイトルが話題となったが、とりわけ大きな話題になったタイトルのひとつとして挙げられるのが10月25日に発売された『ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン』(ロマサガ2R)だろう。

原作の『ロマンシング サ・ガ2』(ロマサガ2)は1993年に発売されたスーパーファミコン用ソフト。これまでキャラグラフィックはドット絵のまま背景グラフィックや音楽などが一新されたリマスター版なども発売されていたが、フル3Dでのリメイクは31年もの時を経て初めてのこととなった。

本稿ではストーリー序盤のネタバレにも多少触れつつ、その魅力をお伝えしていく。なおスクリーンショットにはNintendo Switch版を用いている。

実はお恥ずかしい話、筆者はこれまで「サガ」シリーズファンを自称しながら、「ロマサガ2」はまともに触れてこなかった。原作が発売された当時は小学生で、いとこがプレイしていたのを見ていただけ。Switchでようやくリマスター版を買ったものの、最初のダンジョンを攻略したばかりの序盤も序盤で積みゲーと化してしまっていた。

「サガ」シリーズの中でも、「ロマサガ2」はとりわけ特殊な作品という印象があった。主人公(皇帝)がどんどん代替わりしていき、1000年という長い年月をかけて七英雄と戦っていく壮大な物語が繰り広げられていくことは知っていた。だがそのために、RPGの醍醐味のひとつであるキャラ育成が楽しめないのではという不安があった。

しかし、それは大きな誤解だったのだ。実際『ロマサガ2R』を触れて、皇帝が代替わりした際には先代皇帝の能力が引き継がれるということを知った。さらに仲間が身に付けた技や術なども、年代が変われば道場などの施設に登録され、誰もが覚えられるようになるということだった。

つまり皇帝となるキャラクター一人ひとりは、ちゃんと育てる意味がある。また世代交代して仲間として加えられる各クラス(職業・種族)の能力も、帝国の国力に応じて高くなっていく。皇帝というキャラクターに加えて、国そのものを育てていくのであって、これはむしろ通常のRPGよりスケールの大きな育成が楽しめるゲームと言える。

▲同じクラスのキャラクターは、名前や髪型は違うが顔はうり二つ。しかもボイスも同じだ。親族なのか、師弟なのか…

そもそもまともにプレイしていれば、序盤の物語がチュートリアルとなって、この「ロマサガ2」独自の育成システムの面白さに気づけたはずだった。それは最初の皇帝であるレオンが、七英雄のひとりクジンシーのソウルスティールという技で致命的なダメージを食らってしまう展開である。しかしレオンは死の床で、これこそが彼の思惑通りだったことを息子・ジェラールに語る。

▲ソウルスティールを食らうレオン

▲技を見切るために、あえて食らっていたとは……

レオンはわざとソウルスティールを食らい、技を見切ることに成功した。そしてその見切りを伝承法という術でジェラールに継承させたのだ。

▲伝承法により、レオンの力を受け継ぐジェラール

この息子ジェラール、最初のダンジョンではほとんど役に立たないキャラだった。他の仲間がどんどん武器レベルが上がっていくのに、ひとりだけずっとレベル0のまま。それが伝承法によりレオンの力を受け継ぐと、武器のレベルはレオンと同等になり、レオンが使えた技や術まで身に付く。そこからは完全に人が変わったような強さで、クジンシー討伐へ挑むことができるという少年マンガ的な胸熱の展開が繰り広げられる。

▲ロマサガファンの内では”パジャマ姿”と揶揄されがちな序盤のジェラール。戦闘を繰り返してもほとんど能力が伸びない

▲レオンの力を受け継いだジェラール。見違えるようだ

しかし、果たしてこれがジェラールの本来の人生だったのだろうかと思うと、同時に哀しみもわく。そもそも、ジェラールは文に秀でた王子として描かれていた。武に秀でていたのは兄であるヴィクトールの方で、本来なら兄弟で支え合いながら国を栄えさせていくことができただろう。

▲戦いは兄・ヴィクトールの務め。ジェラールにはジェラールの務めがある……ハズだった

クジンシーによって兄も父も殺され、二人分の人生を背負わされてしまったジェラール。言ってみれば彼自身の人生を犠牲にしたということでもある。

▲兄もクジンシーに殺されてしまっていた

さらにジェラールが退位した後も、次の皇帝、その次、さらにその次……と、幾度も皇帝を代替わりさせていくことになる。3代目以降の皇帝は仲間になったクラスの一部から選ぶことができるので、例えば雇われ兵士のフリーファイター(男)や無法者のシティシーフ(女)を選ぶこともできるし、後々にはトカゲのような見た目のサラマンダーが皇帝になることもありえる。

▲こんなかわいい女の子でも皇帝になれる!

伝承法により、職業・性別・種族の違いにもとらわれず皇帝になれるとはすごく夢のある話にも思えるが、彼らもある意味では国家のために己の人生を犠牲にして長い闘いに身を投じていくのである。物語としても非常に奥深い。

もう一つ、まともにプレイする前に危惧していた点は、プレイスタイルによっては敵が強くなりすぎて詰む瞬間が訪れるのではという点だ。このゲームは「ロマサガ1」に続き、キャラクターの成長度合いに応じて敵も強くなるというシステムが取られている。ボスはもちろん、雑魚との戦いでも全滅することがあり得るので、バトルの1戦1戦にスリルがある一方、戦闘の繰り返しだけで疲弊してなかなかストーリーが進められないというストレスも生む。

だがそうしたバトルの難易度は、この『ロマサガ2R』に関して「カジュアル」「ノーマル」「オリジナル」の3種類から選べるようになった。「ハード」に当たるのが原作相当の「オリジナル」というのが苦笑してしまう点だが、プレイする間口がグッと広くなったことは良いことだ。もちろん、2周目以降は「ベリーハード」「ロマンシング」とさらに上級者向けのモードも用意されている。

▲1周目は、3つの難易度から選べる

なお筆者は「ノーマル」でプレイしてみたが、それでもかなりの歯ごたえだ。これもまだ序盤のうちだが、隣国であるカンバーランドのシナリオを進めていた際、悪の宰相によってその国の城が乗っ取られるという展開があった。そこで城の奪還へと挑むのだが、門番として出てくる巨人の敵・スプリガンの猛攻により、呆気なく全滅してしまった。

▲門番なのに強すぎる……

▲パーティ全滅。そして、次の皇帝へ

そして全滅後に待っていたのが、ゲームオーバーではなく、次の皇帝に継承するという展開だ。「先帝の無念を晴らす!」という「ロマサガ2」としてはお馴染みのセリフを口にして新たな皇帝が立ち上がるが、その直後にカンバーランドへ向かうと、完全に滅亡してしまった後だった。

▲新たな皇帝でもう一度門番に挑み、カンバーランドを危機から救わねば!と思ったら……

▲すでに国は滅んだ後だった……先帝が負けてしまったせいで!

門番にさえ負けていなければ、城を奪還し、カンバーランドの平和を守ることができたのに……そもそもそこに至るまでの選択肢に依っては、門番とも戦わず簡単に城を奪還する展開を迎えることもできたはずだった。

基本的にはゲームオーバーにならない代わりに、重要な局面で全滅してしまうと先の物語の展開も大きく変わってしまうのがこのゲームの恐ろしいところでもあり、同時に面白いところだ。

▲カンバーランドの王位を継承するはずだったトーマ王子も、その兄ゲオルグ王子も、亡霊となっていた……

展開によっては新たなアビリティが手に入るなど多少有利になることはあれ、最終的な結末がバッドエンド・トゥルーエンドに分かれることはない。一人ひとりのプレイヤーがたどった道こそがトゥルーエンドと言うべきであり、プレイヤーの数だけ違う体験が待っている。これぞまさに「ロマサガ」シリーズの醍醐味だと言える。

▲カンバーランドが滅びず、トーマ王子とその兄・姉も無事だった展開

▲平和にイベントをクリアした後、アビリティが獲得できた!

このように、今まで「ロマサガ2」をまともにプレイしてこなかった筆者だからこそ、オリジナル版からある要素・リメイク版から加わった要素ともに新鮮で、どこを取っても非常に楽しめる作品だった。

話は少し変わるが、昨年『サガ エメラルドビヨンド』(サガエメ)をレビューした際には、おかげさまでたくさんの読者から感想をいただいた。その際も筆者は間口の広さに触れ、”「尖っている」「人を選ぶ」という言葉を安易に用いたことで、せっかく遊んでみようかと思っているユーザーの機会を奪うとしたらそれはとても残念”と書いた。だがそのことで、「いや、『サガエメ』は人を選ぶし、尖っているのは間違いない」という声もあった。

筆者としてはあくまで、ユーザーによってプレイの障壁となっているものがあれば取り除きたいという気持ちで書いたレビューであり、「サガエメ」も間口を広く作られている作品だと感じたのは間違いない。ただ特殊な点も多く、そこに戸惑いを覚えるユーザーが多かったということもよくよく理解しているつもりだ。

そしてこの『ロマサガ2R』に関しては、文句なしに万人にオススメできる。オリジナル版にあった取っつきにくさはマイルドになって新規のユーザーにも遊びやすくなっているし、3Dになってより臨場感のあふれるこの世界をオリジナルやリマスター版のユーザーにもぜひ体験してほしいと思う。

それも、ただ街やダンジョンが広く感じられるというだけではない。さまざまなところにアイテムや宝箱が隠されており、「せんせい」というマスコットキャラクターを探す新要素もある。ちょっと歩くだけでも時間を忘れてしまう。

▲黄色い体で一つ目のキャラクター「せんせい」が、いたるところに隠れている。

▲怪しく光る場所を調べるとアイテムが!

▲ダンジョンはもちろん、街中にも宝箱が隠されている

その半面、「ふつうのRPGになってしまった。『サガ』らしさがなくなってしまった」という否定的な意見も目にしたが、これもひとつの作品の展開の仕方だと捉えれば、個人的には悪くないと感じる。

『ロマサガ2R』が発売された後も、オリジナルに近いドット絵リマスター版の「ロマサガ2」を各プラットフォームで買うことはできる。筆者自身、『ロマサガ2R』の周回プレイにある程度満足出来たら、今度は積みゲー化していたドット絵リメイク版にもまた立ち返ってプレイしてみようとも思えた。

▲3Dフルリメイク版の序盤ダンジョン「ウォッチマンの巣」

▲ドット絵リマスター版の「ウォッチマンの巣」。比較すれば、こちらも味わい深い

そしてさらに、この『ロマサガ2R』が話題となったことで、また新たなリメイク作品や新作が作られる道も開けたのではと思う。ファンにとって一番哀しむべきは、コンテンツが死ぬことだ。それはオリジナルの楽しみを突き詰めるあまりに、新規ユーザーが誰も参入してこなくなってしまうこと。

ネガティブな意見も、時には大事だ。シリーズが続いていくに当たっては、ネガポジ両面の批評がなくなるのも良くない。人は本気でプレイしたゲームにしか批判も賞賛も送らない。批評は、ある意味ではそのゲームに対する愛ゆえの言葉だ。だからこそそのバランスこそが大事であって、『ロマサガ2R』に関しては非常に愛されていて、恵まれた作品になったとも感じる。

ではあえて、最後に筆者もこの作品について言わせていただくと、それはこのゲームが膨大な時間泥棒だということである。世界が3Dになったでなく、キャラクターボイスもあらゆる分岐で収録されている本作。年代によって街の様子も様変わりするなど、遊ぶほどに新しい発見がある。このゲームを遊び始めたら、なかなか今年2025年に発売される次の新作が手につかないということにもなりかねないだろう。

▲クジンシーに支配されていた魔物だらけのソーモンと、平和を取り戻したソーモン。年代によって様変わりする場所も

ただ、それをわかったうえでプレイするかしないか迷っているユーザーがいるとすれば、こう伝えたい。人生は有限だからこそ、やった後悔よりもやらなかった後悔の方が大きい。遊びたいなら、すぐにこの沼に飛び込んでみることだ。筆者も、「なぜ今までプレイしなかったのだろう。もっと早く遊ぶべきだった」と後悔した人間のひとりだ。

そして同時に、「やはりプレイしなければよかった。このせいで貴重な正月休みが潰れてしまった」と思ってしまう瞬間もあった(笑)。ただそれは、言うまでもないことだがいちゲーマーとしてはあまりに心地よいものだったということも、加えてフォローさせていただこう。

(文/平原学)

(執筆者: ガジェット通信ゲーム班)

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