【オフィシャルレポ】odol、色褪せない魅力を証明した結成10周年記念ライヴ
【以下、オフィシャルレポート】
odol、結成10周年記念ライヴである。約2時間、ダブルアンコールも含め全23曲。おそらくはodol史上最長のライヴだった。9年前のファースト・アルバム『odol』から最新シングル「伝えて!」までまんべんなく選曲され、その10年の道程を余すところなく見せた。私の実感からすれば短期間で進化し音楽的に成熟して完成度を高めていったodolの表現は、結成10年どころか20年30年選手に匹敵するほどの高いレベルに到達していると感じる。この日も圧巻というしかないライヴだった。
驚いたのは出音の大きさである。最近私が見たodolのライヴ──2023年11月丸の内コットンクラブ、2024年4月下北沢ADRIFT──とは比較にならないような「爆音」だった。音の大きなライヴは慣れているつもりだが、キックの音で体中が振動するような大音量は、リキッドルームでもなかなかない。odolのような内省的で思索的な作風のバンドには一見、似つかわしくないようにも思える。そんな爆音の中でも緻密に編み込まれたひとつひとつの楽器が打ち消しあうことなくクリアに聞こえたのはPAエンジニアの腕だろうが、バンドの轟音に負けじと声を張り上げ、まるで世の不条理とたったひとりで戦っているような、そんなミゾベの歌を見て、このバンドは繊細さや優しさだけではない強さを身につけつつある、と感じた。今いる場所に安住しようとはしていない。彼らは大きく変わろうとしているのではないか。
初期のネオ・サイケデリックでシューゲーザーなギター・バンド・スタイルから、研ぎ澄まされた音をひとつひとつ丁寧に組み立てていくような作風へと変化し、リズムやギターの歪みや音圧ではなく、空間の響きや広がりや旋律が前に出てくるような、それにつれてミゾベの歌心のようなものが中心にしっかりと位置するようなカタチへとバンドのあり方が変わっていった。そんなodolの歴史が、そのプロセスのすべてがこの日のライヴではドラマティックに描かれていた。映像や凝った演出もなく、音楽と音響と空間と光のみで、そうした楽曲のエッセンスを抽出する。「愛している」「生活」「夜を抜ければ」と続いた初期ナンバーの新鮮な響きは印象的だった。ミゾベリョウ、Shaikh Sofian、森山公稀に加え西田修大、大井一彌、須原杏という3人のサポートの力で、たとえ過去の曲であっても完全に2024年のテクスチャーとして更新されている。彼らの歌に描かれた、繋がりと、生きる意味、歌う意味を問う歌詞は古びることはない。歌詞もメロディも変わらなくても、ちょっとしたアレンジやフレーズ、手触りをリニューアルするだけで「今の歌」になる。大井のパワフルなドラムと、西田の鋭角的なギター・プレイは、odolをロック・バンドとしての原点に引き戻すような、そんなエネルギーを感じた。大井や西田が参加して2~3年ほどがたつが、彼らの役割がただのサポートではなく、バンドとしての根幹に影響を及ぼすほど存在感を増している。それがこの日の「爆音」で顕在化したような、そんな印象を持った。odolはロック・バンドとしての原点に戻ろうとしているのではないか。繊細でありながら強い。これこそが今やるべき表現だと直感しているのではないか。そんな気がした。
10周年記念ライヴにオールスタンディングのリキッドリームを選んだのは、観客に踊ってほしいからだろう。着席だったコットン・クラブとは逆である。じっくり鑑賞したり思索にふけるのではなく、カジュアルに、自由に体を動かし、叫び、自らを縛り付ける枠から解放して楽しんでほしいという意思のあらわれだ。撮影可、SNS可も同じ意味だろう。もっと気軽に楽しんで、どんどん広めてくれ、ということだ。
とはいえ観客はスタンディングというライヴの形式にまだ慣れていないようにも感じたが、ダブルアンコールとなった「伝えて!」では、ごく自然にフロアのあちこちから手が上がり、歓声が聞こえた。「伝えて!」はどことなくYMOを思わせるような軽快なシンセ・ポップだが、こうしたダンサブルでポップな曲をもっともっと増やしていけば、きっとライヴの雰囲気も変わっていくのではないだろうか。
text:小野島大
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photo:小田部伶
セットリスト
01. あの頃
02. 泳ぎだしたら
03. 退屈
04. 綺麗な人
05. 憧れ
06. 幸せ?
07. 今日も僕らは忙しい
08. GREEN
09. four eyes
10. 愛している
11. 生活
12. 夜を抜ければ
13. 歩む日々に
14. 不思議
15. 未来
16. 幽霊
17. 君は、笑う
18. 飾りすぎていた
19. 小さなことをひとつ
20. 時間と距離と僕らの旅 (Rearrange)
Encore
21. 伝えて!
22. 虹の端 (Rearrange)
Double Encore
23. 伝えて!
リリース情報
「伝えて!」
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