5,000万ドル調達の米You.com、オールインワンAI支援サービスで“AIモデルの乱立問題”に一手|ナレッジワーカーの生産性向上へ
ナレッジワーカーのためのAI駆動による生産性向上支援サービスを提供するYou.comは、9月4日、5,000万ドルの資金調達を発表した。
You.comは、米国カリフォルニア州を拠点とするスタートアップ。2021年11月のサービス開始以来、10億件のクエリに対応しており、いまやヘッジファンドやテックユニコーン、上場企業を含む多数のユーザーに利用されている。同社は、ChatGPT以前に大規模言語モデル(LLM)を検索体験に組み込んだ初の企業であるとし、2024年1月からの年間経常収益(ARR)は500%の成長をみせている。
Google検索を再定義するYou.com
You.comは、Salesforceで研究チームを率いていたコンピューターサイエンティストのRichard Socher氏と、おなじくSalesforceでNLPを専門とするリード・リサーチ・サイエンティストとして活躍していたBryan McCann氏によって設立された。
Salesforce時代の2017年には、Google検索の登場以来、最大の改善を検索にもたらした功績を強調。翌年の2018年に出した論文は、プロンプトエンジニアリングの先駆けとなり、ChatGPTを開発するOpenAIからも高く評価される結果を出したことを伝えている。
You.comの共同創業者兼CEOであるSocher氏は述べる。
私たちがYou.comを始めたとき、すべての人々の検索体験を再発明する機会があると感じました。日々、Google検索に対してなされる何十億もの質問に対する回答が青いリンクのリストで示されていますがユーザーは満足していません。私たちはYou.comをナレッジワーカーがより生産的になり、新しいアイデアの創発を促進し、人間とAIの協働によって世界をより深く理解できるように構築しました。私たちのAIエージェントは、迅速かつ正確な回答、リサーチと分析、問題解決、コンテンツ作成などを通じて、何百万人ものナレッジワーカーを支援しています。
特定タスクを専門とするAIエージェントでAIの不正確性を解決
マッキンゼーの調査レポートによると、回答者のうち65%が自社で生成AIを定期的に活用しているという。企業は生成AIの活用によってコスト削減と収益向上の両方を実感しているというのだ。しかしその一方で、生成AIの不正確性が、依然として生産性を妨げる最大の課題であり続けている。
同社はこの課題を解決すべく、LLMの信頼性を高めることに重点を置いている。同社が提供するプラットフォームでは、特定のタスクを専門とする「スマート」「リサーチ」「ジーニアス」「クリエイティブ」などのAIエージェントが用意されており、検索の信頼性を強化している。特定のモデルに依存しないことも特長であり、ユーザーはOpenAI、Anthropic、Meta、Googleなどのモデルを使い分けて、あらゆるタスクに対応するカスタムAIエージェントを作成することが可能だ。
また、シングルワーカー向けの機能だけでなく、チームで活用できる共有AIワークスペース「マルチプレイヤー AI」も用意。たとえばマーケティングチームがAIをブランドの特性に従うようにトレーニングし、毎回手動でプロンプトを出さずにAIエージェントと共同作業を行うことができる。作業者はカスタムエージェントを同僚と簡単に共有できるため、ワークフローの合理化にもつながる。
生成AIが乱立する世界にオールインワンAIプラットフォームを提供する
さらに同社は、ユーザーの声を踏まえ、AIの無秩序な普及が大きな課題となっていることも指摘。新しいモデルが頻繁に登場し、さまざまなAIモデルにアクセスするためにユーザーが複数のサブスクリプションに年間1,000ドル以上を支払うという問題にも対処する姿勢だ。
こうした背景からYou.comは、特定事業者への依存を回避するためのオールインワンAIプラットフォームの需要が高まっていることを強調。企業がLLMの急速な進歩に追いつくための支援を必要としていることを訴えている。
ユーザーのクエリを最適なモデルに自動的にルーティングする同社のオールインワンAIプラットフォームは、生成AI乱立により振り回されている企業の救世主となるだろうか。
(文・五条むい)
ウェブサイト: https://techable.jp/
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