映画『ボストン1947』カン・ジェギュ監督インタビュー「今を生きる人たちの力になるのではと思います」

『シュリ』『ブラザーフッド』などの韓国の名匠カン・ジェギュの最新作、『ボストン1947』が公開中です。1947年のボストンマラソン大会という史実を基に、歴史の陰に隠された祖国解放から朝鮮戦争の間の時代の真実にヒューマンドラマとして迫った感動作です。

ラスト15分間の圧巻のマラソンシーンも注目ですが、壮大なスケールで重厚なヒューマンドラマを描いてきた名匠は、本作にどのような想いを込めたのか。来日したカン・ジェギュ監督にお話をうかがいました。

■公式サイト:https://1947boston.jp/ [リンク]

●クラシカルな題材をなぜ今描こうと思われたのでしょうか?

ももともわたしはマラソン映画を撮りたいとずっと前から思っていました。どのようなマラソン映画にしようか具体的なことを考えていた時に知り合いのプロデューサーがわたしにシナリオを持って来て演出してみないかと提案して来たんです。

そこでわたしがそのシナリオを読み演出をしようと決心した理由なのですが、本作の時代背景はもちろん1947年ということであり、今と比べると時代的に本当に辛い時代でした。

一方で今を生きる若者たちは、これは韓国のみならず日本の若者たちもそうだと思うのですが、現実の中でどうしたらいいのかさまよっていたり、はっきりしない未来に対して漠然とした不安を抱いている若者も多いと思うんです。そこに映画化する意味を見出しました。

●マラソンをはじめスポーツは時代に左右されない普遍性がありますよね。監督の想いは、各国のファンに届いたのではないでしょうか?

韓国の観客はこの映画を観てどう思うだろうか、そして日本など韓国以外の国の方々がこの映画を観てどう感じるだろうかということは、映画を撮りながらもわたしが一番気になったところであり、同時に心配していたところでもありました。

この映画は3人の男たち、その中でもひとりの人間が中心となりますが、スポーツを愛して夢を見て、純粋に情熱を持ってマラソンに取り組んでいるんです。それがそのまま伝わればいいなと思ったのですが、もしかしたらこの映画を観て、ある人は愛国主義的だとか、国家主義的だとか、思うかも知れないですよね。わたしは決してそうは望んではいなかったのですが、一方でそういう受け止めもあるかも知れないという心配もありました。

わたしはあくまでもここに登場する3人の男性の夢、その夢に対する執念をそのまま感じてほしいなと思いました。本作は、2023年に韓国で公開され、その2か月後にロンドンで初の海外上映となりましたが、むしろ韓国よりもみなさん熱くこの映画に反応してくれました。わたしの心配は、取り越し苦労だったなと感じたことを覚えています。

●映画を待っている方たちへメッセージをお願いします。

現代を生きる人たちもこの映画を観ていただいたら、タイムスリップしたような感覚になると思います。今自分たちが暮らしているよりもずっと大変なあのような時代であっても、主人公はこのようにして夢を叶えたのだということを目の当たりにすれば、今を生きる人たちの少しは気持ちの慰めになり、力になるのではと思っています。

●今日はありがとうございました。

■ストーリー

「私たちが望むのは、祖国の国旗をつけて走ることです」

1936年、ベルリンオリンピック。マラソン競技に日本代表として出場した孫基禎は、オリンピック新記録を樹立し金メダルに輝く。だが、表彰式で日本国歌が流れる間、月桂樹の鉢植えで胸元の国旗を隠したことが問題視され引退を強いられる。

1946年、ソウル。祖国が日本から解放された後、荒れた生活を送っていたソン・ギジョン(孫基禎)の前に、ベルリンで共に走り銅メダルを獲得したナム・スンニョンが現れ、“第2のソン・ギジョン”と期待されるソ・ユンボクを、ボストンマラソンに出場させようと持ち掛ける。高額の保証金を始め数々の問題を乗り越えた3人は、1947 年、ついに消された祖国の記録を取り戻すべく、ボストンに旅立つ。しかし、さらなる難題が彼らを待ち受けていた。

公開中
配給: ショウゲート
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(執筆者: ときたたかし)

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