安井建築設計事務所が100周年の記念に「まちなか展」開催。東京・大阪それぞれを代表する名建築、サントリーホールや大阪倶楽部などが見学できる!

安井建築設計事務所が100周年の記念に「まちなか展」開催。東京・大阪それぞれを代表する名建築、サントリーホールや大阪倶楽部などが見学できる!

1924年に建築家の安井武雄が創設した「安井建築設計事務所」は2024年の今年、100周年を迎える。100周年に際して、同社が設計した“まちなか”の建築を大阪と東京でそれぞれ5つ選び、設計のプロセスや建築のこだわりなどを紹介する会場にして、だれもが自由にめぐれる展覧会「まちなか展」を開催する。その「まちなか展」のプロジェクトを担当した東京事務所の方々に、その狙いなどを聞いた。

100周年記念事業を企画するグループから誕生した「まちなか展」

安井建築設計事務所といえば、国の登録有形文化財でもある「大阪倶楽部」や「大阪ガスビルディング」をはじめ、「サントリーホール」、「東京国立博物館 平成館」、「大阪国際空港ターミナルビル」、「中部国際空港(セントレア)庁舎・管制塔」など、誰もが知っている、利用したことがある建築を多く残している設計事務所だ。

その安井建築設計事務所が、大阪と東京で100周年記念事業として、「まちなか展」を開催する。その内容を見ると、とても興味深いものになっている。そこで、「まちなか展」プロジェクトの東京事務所のメンバーで設計部の髙野健太さんと生沼千里さんに、どういったイベントか、なぜ開催するのかについて話をうかがった。

「まちなか展」のチラシの表紙(安井建築設計事務所提供)

「まちなか展」のチラシの表紙(安井建築設計事務所提供)

「まちなか展」のきっかけは、3年前に同社が100周年記念事業として何をするかを企画するために、5つのグループを社内で募集したことに始まる。5つのグループとは、「雑誌・出版グループ」、「講演・WSグループ」、「展覧会グループ」、「動画グループ」、「WEBグル-プ」だ。

髙野さんと生沼さんは「展覧会グループ」に応募した。大阪と東京で6人からスタートし、最終的に名古屋も含めて20人近くが集まった。グループでは、他社やアーティストが過去にどんな展覧会を開催したかを調べることから始めて、一年間に何度も議論を重ねた。もともと『人やまちを元気にする』というコーポレートメッセージがあり、「やっぱりまちに開いた展覧会を目指したい」ということを共有し、「まちなかに安井建築設計事務所がつくった作品があって実際に足を運ぶことができるので、まち全体で展覧会ができるものにしたい」と決まったのが、この形だったという。

「まちなか展」について語る髙野健太さんと生沼千里さん(撮影:片山貴博)

「まちなか展」について語る髙野健太さんと生沼千里さん(撮影:片山貴博)

大阪と東京の自社事務所を拠点に、まちなかにある建築をめぐる

では、100周年企画「まちなか展」の内容を紹介しよう。

●「まちなか展」概要
【大阪会場】2024/9/6(金)~9/8(日)10:00~17:00
A:医療複合施設【i-Mall】医誠会国際総合病院 9/6(金)~9/8(日)
B:大阪ガスビルディング 9/7(土)~9/8(日)
C:大阪倶楽部 9/6(金)~9/7(土)
D:京阪中之島線 大江橋駅構内 9/6(金)~9/8(日)
E:安井建築設計事務所 本社・大阪事務所 9/6(金)~9/8(日)
なお、A・B・Cについては、「設計者解説付き 建築見学ツアー」開催(9/2時点でABは申込終了、Cは募集中)

大阪会場

【東京会場】2024/10/15(火)~11/2(土)10:00~17:00
F:東京国際クルーズターミナル 10/15(火)~10/19(土)
G:サントリーホール 10/15(火)~10/19(土)
H:日本大学芸術学部 江古田キャンパス アートギャラリー 10/24(木)~10/26(土)
I:みらいステップなかの + 中野東中学校 10/24(木)~10/26(土)
J:安井建築設計事務所 東京事務所「美土代クリエイティブ特区」 10/15(火)~11/2(土)
※ただし、10/20(日)、26(土)、27(日)は休館。初日10/15(火)は12:00~
なお、東京会場についても、「設計者解説付き 建築見学ツアー」開催予定(詳細は後日公表)

東京会場

このほか、大阪・東京会場それぞれで、「対談・トークセッション」や「ワークショップ」も開催される。

大阪会場の期間が短く、東京会場が長いのはなぜかを聞いてみた。「まちなかのわれわれの建築を会場に、サーキット上に回る展覧会にしたかったので、回ってもらえる期間を考えた」ところ、大阪の5カ所は一日でも徒歩で回れる範囲にあるが、東京の5カ所はそれぞれがかなり離れているので、期間を長めにしたのだという。

大阪、東京の会場となる建築はどんなもの?楽しみ方や見どころは?

さて、数ある同社設計の建築から、どういった基準でそれぞれ5つを選んだのだろう?

同社の歴史は古く、創業者である安井武雄の代表作といえる「大阪倶楽部」、御堂筋のランドマーク「大阪ガスビルティング」など大阪でよく知られたものも多い。また、駅として、あるいは病院や劇場として利用するなど、大阪の人たちに親しまれている建築という趣旨で、大阪会場は設定された。

一方、東京会場は、「まちにひらく」というコンセプトの下、建物自体にオープンなスペースがあるものを会場として選んだという。たとえば、日大芸術学部の江古田キャンパスには、入口付近に誰もが入れるガラス張りのギャラリーホールがあって、まちとつながっている。こうした建築をピックアップしている。

次に、「まちなか展」の楽しみ方を聞いた。建築の知識がない一般の人は、どうやって楽しめばよいのだろう?

それぞれの会場には、設計者がこの建築はここにこだわっているといった説明をしたパネルを展示する予定で、それらの展示を見ることで建物の理解を深めることができるという。さらに、一部については設計者などによる解説付きツアーも開催される。募集人数が少ないので、運が良ければ(?)建築裏話を直接聞けるかもしれない(大阪会場は一部で募集終了)。

また、ポストカードをつくって希望する来場者に渡す予定なので、それを集めるという楽しみ方もあるという。スタンプラリーならぬ、ポストカードラリーだ。子どもたちでも楽しめそうだ。

さらに、東京会場の見どころをいくつか挙げてもらった。

まずは拠点となる、同社東京事務所「美土代クリエイティブ特区」。ここは、社内コンペで採用された設計案を基に、社員の意見などを反映したオフィスになっている。1階は「まちとつながりながら、私たちも自らやりたいことを実践する場所」、2・3階は「自ら働き方を組み立てる場所」で、特徴的な吹き抜け階段でつながっている。

たとえば、固定席ではなく完全なフリーアドレスにして、集中したいとき、メンバーで図面を広げたいときなどでそれぞれのスペースを臨機応変に選べたり、大きなキッチンで皆で昼ご飯をつくって食べたり、広い空間で講演会をしたりといった使われ方をしている。こうした設計上の考え方を実際に見て確認するとよいだろう。

同社東京事務所「美土代クリエイティブ特区」1階。高さの異なるイスやテーブルが配置され、奥に社員のコミュニケーションの場となる大きなキッチンがある。椅子やテーブルを片付ければ講演会の会場にもなる(撮影:片山貴博)

同社東京事務所「美土代クリエイティブ特区」1階。高さの異なるイスやテーブルが配置され、奥に社員のコミュニケーションの場となる大きなキッチンがある。椅子やテーブルを片付ければ講演会の会場にもなる(撮影:片山貴博)

「東京国際クルーズターミナル」は、増加する大型のクルーズ客船に対応するためにつくられたもの。さまざまな大きさの客船に対応するため自由度の高い大空間を持つことが特徴だ。そうした開かれた場所に展示をするので、展示を見ながらデッキに出て、クルーズ客船を眺めるといった楽しみ方もできるという。

「東京国際クルーズターミナル」(安井建築設計事務所提供)

「東京国際クルーズターミナル」(安井建築設計事務所提供)

また、「みらいステップなかの + 中野東中学校」は、中学校と図書館、子ども・若者支援センター、教育センターの複合施設。「多様性」と「知の集積」を本や本棚をモチーフに表現したデザインを各所に取り入れているので、そうしたものを見つけていくというのも楽しいだろう。7~9階が図書館になっているが、7階の「こどもフロア」には、小上がり(居室の中に設けられた、段差で区切られたスペース)があるなど、普通の図書館のイメージを覆すという。

「みらいステップなかの + 中野東中学校」(安井建築設計事務所提供)

「みらいステップなかの + 中野東中学校」(安井建築設計事務所提供)

安井建築設計事務所を知ってもらう場でもある「まちなか展」。今回で最後?

まちなかにある同社の作品を見て回る「まちなか展」だが、訪れた人に安井建築設計事務所を知ってもらう場でもある。

「江古田キャンパスでは、今進行中の小学校や高校といった同じ教育関係の施設や図書館などの建築の展示もする予定です。そういう展示を通して、安井建築設計事務所がどういうことを考えているのかが伝わればと思っています」(髙野さん)。
「中野の図書館に普段来ている人も誰が設計したか、どんな思想で設計したかまではわからないと思うんです。何気なく図書館に来た人が展示を通して、安井建築設計事務所ってこんな会社なんだと知っていただけばと思います」(生沼さん)。

同社東京事務所の掲示物(撮影:片山貴博)

同社東京事務所の掲示物(撮影:片山貴博)

では、「まちなか展」は今後も継続して開催されるのだろうか?
プロジェクトに参加した名古屋については、今回開催がないので、名古屋をはじめ同社のオフィスのある九州や海外の台湾やベトナムなどで開催する可能性はあるが、ここまでの規模のものは、100周年事業でなければ難しいだろうという。

たしかに、今回の「まちなか展」では、対談・トークセッションやワークショップが開催されるが、5つのグループのうち「講演・・WSグループ」が、展覧会の趣旨をくんで企画したものだという。「WEBグループ」が作成した「100周年特設サイト」で展覧会の告知をし、会場で流れる動画は「動画グループ」が作成したものを会場で流すといった、各グループが連携しているのも、100周年事業ならでは。100周年記念事業の最後として、2025年秋に『建築画報』で100周年特集号が出るが、これは「雑誌・出版グループ」の取り組みの一環だ。

ということは、ここまで充実した「まちなか展」を楽しむ機会はそうはないのだろう。ぜひ、この機会に見学してほしい。プロジェクトのメンバーは、いま、どれだけの来場者が訪れるかドキドキしていることだろう。

●関連サイト
安井建築設計事務所「100周年特設サイト」
安井建築設計事務所「まちなか展」開催のお知らせ

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