韓国研究チーム、犯罪リスクを“事前に予測”するAIシステム「Dejaview」開発|来年末までに商用化へ
警察庁のデータによると、2022年に認知された犯罪件数(刑法犯)は60万1,331件で、2023年には70万3,351件へと増加している。戦後最少となった2021年から2年連続して増加傾向にあるという。
犯罪対策の強化が求められているなか、国内外ではAIをはじめテクノロジーを活用した犯罪防止対策が実施されている。
2022年には、福岡県福岡市で独自の犯罪予測アルゴリズムを基盤とした犯罪予測システム「CRIME NABI」の実証実験が行われた。最近では、アルゼンチンがAIを活用して犯罪を予測する業務を担うユニットの新設を発表。
こうした機運を背景に7月、韓国の電子通信研究所(ETRI)は防犯カメラの映像、犯罪統計、位置データを分析して犯罪行為の兆候を早期に察知する高度な技術「Dejaview」を発表した。来年末までに商用化する予定だ。
過去の犯罪データをもとに犯罪行為のリスクを予測
Dejaviewは「多くの犯罪が過去の事件と類似したパターンをたどる」という原理にもとづいて、犯罪行為を事前に予測するAIシステム。AIを活用して現在の状況を過去の犯罪データ(種類、手口、場所、時間など)と比較・分析することで、犯罪行為のリスクを評価する。Dejaviewは2つの主要コンポーネントで構成されている。1つ目の「時空間犯罪予測システム」は、特定の場所・時間帯にどのような犯罪の発生リスクが高いかを分析するもの。例えば、深夜の人通りの少ない場所で過去の犯罪に似たパターンが出現した場合、リスクが高いとフラグを立てる。
このAIシステムでは、リアルタイムのCCTV(防犯カメラ)映像を自動分析し、犯罪状況と類似度を比較・測定。ストーカー行為や転倒、火災の初期段階など、犯罪や災害の疑いのある状況を即座に識別・追跡するほか、通行人と車両の不審な動きから麻薬・密輸を認識するといった全体把握も可能だ。
犯罪発生の可能性が高い地域示す地図
PCMは過去の犯罪統計情報をもとに、犯罪の発生日時、場所、強盗犯罪、交通事故、火災などの事件タイプ別に分類し、犯罪発生の可能性が高い地域を強調するという。また、リアルタイムの犯罪危険度を画面に提示することも可能だ。なお、PCMは韓国情報通信技術協会(TTA)の性能試験で82.8%の精度を達成している。
再犯のリスクを予測する技術
Dejaviewのもう1つの主要コンポーネントは、電子監視下にある“再犯のリスクが高い人物”を対象として「個人の再犯予測技術」だ。
この技術が既存のシステム組み込まれると、対象者が繰り返し移動制限の規定を違反した場合の再犯リスクを分析することが可能になる。分析性能は95%で、ソウル保護観察所に併設された「位置追跡中央管制センター」で活用可能な技術として期待されている。
ETRIの研究チームは、今回開発した技術を安全サービスに特化したシステムに発展させる計画だ。例えば空港、エネルギー施設、工場といった施設の危険事前対応システム、国家主要行事の安全システム、地域別の犯罪特性を考慮した現場カスタマイズ型犯罪予測システムなどに適用するという。
今後、ETRIは全国の法執行機関や地方自治体のCCTVコントロールセンターと連携し、Dejaviewの技術を実際の警察活動に導入するとのこと。また、監視対象者の高リスク行動を事前に特定するAIベースの監視技術の拡大を目指す方針だ。
参考・引用元:ETRI プレスリリース
(文・Haruka Isobe)
ウェブサイト: https://techable.jp/
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