社会保障や各種相談先など、今の時代を生き延びるための必須情報がこの一冊に!

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 2020年の国政調査によると、日本でいちばん多いのが「単身世帯」。その割合は1985年には20.8%で5世帯に1世帯だったものが、2020年には2.5世帯に1世帯となる38.1%にまで増加しています。頼れる人もいない中、働けなくなったら、病気になったら、お金がなくなったら、親の介護が必要になったら、自分が死んだら……と先のことを考えて不安になる人は多いのではないでしょうか。この記事を書いている私とて、今は結婚しているものの、離婚する可能性や配偶者に先立たれる可能性を考えれば、いつ単身者になるかわからず、けっして他人事ではありません。

 そこで今回ご紹介したいのが、雨宮処凛さんが執筆した『死なないノウハウ~独り身の「金欠」から「散骨」まで~』です。同書は同じく自身の将来を気にかけるアラフィフの雨宮さんが、各界の専門家に丹念に取材し、社会保障を使いこなすコツや各種困りごとの相談先などをまとめた一冊。人生の荒波の中でどうにか生き延びるためのノウハウがぎゅっと詰め込まれています。

 約20年間、貧困問題に携わり、その現場に立ってきた雨宮さんがまず「生死を分けるもの」として挙げるのが「情報」です。「ちょっとした情報があるかないかでこの国では生死が分かれるようなことが日々起きている」(同書より)という通り、日本には100以上もの社会保障制度があるにもかかわらず、それを知らずに利用していない人が多くいるといいます。特定非営利活動法人の理事長を務める男性は、これを「メニューを見せてくれないレストラン」とたとえています。

「立派なメニューは揃っているのに、決して客には見せてくれない意地悪なレストラン。ごく一部の、メニューを一字一句間違えずに正確に、しかも正しい窓口で『注文』できた人だけに料理=制度利用が提供されるというシステムだ」(同書より)

 行政にも改めるべき点があるのはもちろんですが、私たちも自身が困ったときの助けになる制度や仕組みなどについて、普段から知識を入れておいて損はないでしょう。家賃が払えないときの給付金や病院に行けないときの無料定額診療、生活費が足りないときの資金援助などのお金に関することから、解雇予告手当や未払賃金立替払制度といった仕事にまつわること、さらには親の介護、自身の病気や死にいたるまで、同書では私たちが知っておくべき情報が相談先とともに詳しく記されています。

 また、実際の場面で役立つアドバイスが多いのも同書の素晴らしい点です。たとえば、行政に行く際は「水際作戦」に遭わないようにすべき、とは同書で学んだことのひとつ。生活保護にしろ、給料未払いにしろ、プライベートでのトラブルにしろ、「相談に来ました」という言い方をしては体よく追い返されてしまうケースが多いそうで、これは素人にはなかなか分かり得ないノウハウではないでしょうか。詳しい内容はぜひ同書で確認してみてください。

 このように実用的な対処法や解決法が網羅された同書は、独り身に限らず、すべての人に役立つはず。「備えあれば患いなし」との言葉もある通り、困ったときのためのガイドブックとして手元に置いておきたい一冊です。

[文・鷺ノ宮やよい]

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