「定期借地権付きマンション」は費用が抑えられる? マンション価格高騰の中、総戸数522戸の大規模定借マンションが登場。

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「定借マンション」は費用が抑えられる? マンション価格の高騰の中、総戸数522戸の大規模定借マンションが示す価値。所有権付きとの違いは?

日鉄興和不動産が東京都文京区で総戸数 522 戸の大規模なマンションを販売する。2024年7月6日よりゲストサロンをオープンするに当たり、サロンの内覧会および事業説明会をプレス向けに行うというので、参加してきた。特徴は、環境自然配慮型と定期借地権のマンション(定借マンション)であることだ。今回は、定借マンションについて深掘りしようと思う。

【今週の住活トピック】
『リビオシティ文京小石川』 事業案内会・ゲストサロン内覧会

総戸数522戸の大規模な定期借地権付きマンションが登場

日鉄興和不動産が、東京建物、中央日土地建物、住友商事と共同で開発中の分譲マンション『リビオシティ文京小石川』の特徴は、主に2点。

1点目が、「環境自然配慮型」のマンションであること。小石川植物園などに近接する緑の多い立地環境から、環境に配慮した植栽配置を計画し、生物多様性保全に取り組む施設を評価する「ABINC認証」や緑地のすばらしさを客観的に評価する「SEGES認定」を取得し、「低炭素住宅」や「ZEH(ゼッチ)マンション(ZEH-M Oriented)」の認証を予定している。

サロンで50分の1の模型を見たが、建物周辺の植栽、中庭の植栽に加え、一部の棟の屋上にテラスや緑化(太陽光発電パネルを設置)を設けるなど、緑の多さが特徴だ。

全5棟の大規模定借マンション『リビオシティ文京小石川』模型(筆者撮影)

全5棟の大規模定借マンション『リビオシティ文京小石川』模型(筆者撮影)

もう1点が、総戸数522戸の大規模な定期借地権付きマンションであること。土地が所有権ではなく賃借権となっているので、所有権のマンションよりも取得時の価格を抑えることができる。専有面積は35.89~95.57平方メートル、間取りは1LDK~4LDK(3LDKが主体)で、販売価格は未定だが、85平方メートルの4階相当で約1.7億円、71平方メートルの4階相当で約1.1億円だという。都心部のマンション価格が高騰を続ける中、文京区小石川の立地でこの価格なら手ごろと言ってよいのだろう。

85.81平方メートルのモデルルーム。広いリビングダイニングが所有権マンションより手ごろな価格で手に入る(筆者撮影)

85.81平方メートルのモデルルーム。広いリビングダイニングが所有権マンションより手ごろな価格で手に入る(筆者撮影)

土地の所有者は、共同印刷だ。共同印刷は、老朽化した本社の建て替えに伴い、敷地の一部を効率的に活用するために定期借地権を設定することで、日鉄興和不動産と契約を結んだ。定期借地期間は、2097年7月31日までの約70年間としている。

定期借地権付きマンション(定借マンション)とは?

「定期借地権」のマンション(定借マンションと呼ばれることもある)について、少し説明をしておこう。

借地権には、普通借地権と定期借地権がある。いずれも、一定期間の賃貸借契約を結び、その間は土地の所有者(地主)に地代を払う。ただし、普通借地権は借り手を保護する観点から、地主側に正当な事由がない限り、契約が自動更新される。これに対して、定期借地権は、契約期間が満了したら、原則として土地を更地にして地主に返す。ここが大きな違いだ。

普通借地権の場合、貸主が一度土地を貸すと契約の解除が難しいが、定期借地権であれば、貸した土地が必ず返還され、返還時に借地に建った建物を買い取る必要もないことから、好条件の土地が借地として提供されやすいと言われている。最近では、寺社が伝統建築物の大改修の費用を捻出するために、土地の一部を定期借地権で貸すといった事例が多く見られる。

とはいえ、分譲マンションでは所有権が主流だ。日本住宅総合センターの「定期借地権事例調査(2023年度)」によると、2023年度の定借マンションの事例数は28件、959戸しかない。平均すると、1件当たり約34戸の販売戸数となる(注)。
注:調査はインターネット上に掲載された公開情報を中心に事例収集しているが、小規模なものなどすべての事例を網羅しているわけではない。

1件当たりの戸数は2016年度に約85戸だったが、翌年度以降は20~50戸の間で推移するなど、小規模傾向にある。したがって、552戸という大規模な定借マンションは、極めて珍しいことが分かる。

出典:日本住宅総合センター「定期借地権事例調査(2023年度)」

出典:日本住宅総合センター「定期借地権事例調査(2023年度)」

定借マンションのメリット・デメリット

定期借地権の契約期間は50年以上と定められている。『リビオシティ文京小石川』の場合はそれより長い約70年。2097年7月31日までに更地にして返還することになる。約70年という期間を考えると、30代などの若い世代に向いているといえるだろう。実際にこのマンションでは、30歳代の2~3人世帯を中心に、事前エントリー数は8000件を超えたという。

さて、定借マンションは、最終的に手元に残らないことがデメリットとなる。また、所有権では生じないコストがかかることも注意点だ。イニシャルコストでは、土地を借りる権利金や保証金(退去時に返還される)がかかり、ランニングコストでは、地代や解体準備積立金がかかるといった具合だ。
※『リビオシティ文京小石川』の場合は保証金不要

一方で、地主が手放したくない一等地の土地に立っていたり、土地の所有権がない分だけ価格を抑えることができたり、といったメリットもある。ただし近年は、契約期間が長くなっているので、必ずしも所有権に比べて大きくダウンするとは限らない場合もある。また、毎年納税する固定資産税・都市計画税については、土地は借地なので建物分についてのみ納めればよい。

なお、定借マンションは売ったり貸したりすることも可能だ。売る場合は、借地権の残存期間が短くなるにつれて資産価値が落ちることもあり、マンションによっては想定より高く売れない可能性もある点に留意したい。

このように、定借マンションにはメリットとデメリットがそれぞれあるが、住まい選びの選択肢は多いほうがよい。定期借地権に関する細かい条件を確認したうえで、自分のライフスタイルに合うかどうかを考えて、賢く選択してほしい。

●関連サイト
「総戸数522 戸×敷地面積12,000 m2超・文京区最大となる大規模開発 「環境自然配慮型」の分譲マンション『リビオシティ文京小石川』 7月6日(土)よりゲストサロンオープン・事前案内会を開始」日鉄興和不動産ほか
「定期借地権事例調査(2023年度)」日本住宅総合センター

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