【ライヴレポート】フリージアン × ハンブレッダーズ、信頼が産んだ熱狂の一夜
2024年7月5日Shibuya WWWXにて、
この日の対バンは、フリージアンとしても、ファンとしても待望であったであろう
先攻のハンブレッダーズが、1曲目の「BGMになるなよ」のイントロを鳴らした途端に、オーディエンスが前にわっと駆け寄り拳を上げる。「名前も顔もない人の心ない言葉は/歪んだギターでかき消すよ」との歌詞の通り、早々にグッドミュージックと心強い歌詞で励ましていく。そこから、ムツムロ アキラ(Vo.Gt)による「憂鬱も孤独も全部、俺たちは今日、ギターでぶっ壊しに来ました」とのタイトルコールと共に加速度をぐんと上げ、ukicaster(Gt)はステージ前方に乗り出してギターを掻き鳴らし、続く「サレンダー」では、木島(Dr)のパワフルなバスドラムのリズムに合わせてオーディエンスがハンズアップで呼応して熱狂を生み出していく。
2016年から親交がある、ハンブレッダーズとフリージアン。ムツムロは、フリージアンのたなりょーから「正直いつでも対バンはできるけど、互いに何か還せるものがあるタイミングで一緒にやりたい」と話されていたことを明かした。その上で、今回東京でのツーマンが実現したことへの喜びを露わにしながらも「叩き潰しに来ました」と気合いの強さをしっかり言葉にし、フリージアンと出会った頃から演奏していたというミディアムチューン「口笛を吹くように」をプレイ。「俺らのライブはルールがないので、各々の正解を見つけて帰ってください」と鳴らされたダンスチューン「DANCING IN THE ROOM」では、心地良いリズムとでらし(Ba.Cho)のスラップに合わせて多くのオーディエンスが体を揺らしていた。
ムツムロは、中学生時代には友達がおらず、音楽だけを聴いていた時間を過ごしていたと話しつつ、そんな青春時代を経て、こうして渋谷のド真ん中で、信頼できる仲間とライブができることへの喜びを語った。こういう特別な夜をまた迎えられることを信じて「これからも続けていきましょうね、フリージアンの皆さん」と呼びかけ、大シンガロングを巻き起こした渾身の「DAY DREAM BEAT」を届けた。私たちが各々抱える、孤独、寂しさ、一人で過ごす情けない時間──そういう弱い部分に対して「俺もそうだよ」と伝えながら丸ごと肯定してくれるハンブレッダーズのライブは、元気をくれると共に、次の一歩を踏み出す勇気をくれる。「僕たちとフリージアンで、新しいロックの形を作っていきましょう」と未来を語る彼らは、ラストの「ワールドイズマイン」まで前向きな気持ちを届けてくれた。
そんな頼もしさに溢れたハンブレッダーズのライブを終えると、いよいよフリージアンが登場。熱が引かないフロアに届けたのは、マエダカズシ(Vo)のアカペラから始まった最新曲「月に咲く」だった。ミディアムチューンであるこの曲の中で歌われる「時間よ止まらないで/明日も君に会いたいから」というフレーズが印象的であり、メロディの美しさも相まって非常にグッとくる。今を大事にしたいから時間よ止まってくれと願う歌詞は多いが、彼らが歌うのはその逆だ。止まらずに進んでいこう。その先でまた君と出会いたい──なんて美しく、温かく、希望に溢れた想いなのだろう。時間は止まらないという絶対的な事実を踏まえた上で、今の自分が、自分の力で叶えられる願いを込めたこの曲は、聴く人の心に強く深く響いたに違いない。
そうして1曲目からオーディエンスのハートを鷲掴んだ彼らは、そこからブーストを掛けるように「盛り上がる準備はできてますか!?」と投げかけ、閃光のようなストロボの中で「仰げば尊し」をドロップ。静寂を切り裂いたMASASHI(Gt.Cho)のギター、力強く太く地を揺らすたなりょー(Dr.Cho)と隆之介(Ba.Cho)の強烈なボトムラインに合わせて、オーディエンスも熱を上げる。それはリアルな熱気と化して、フロア後方までブワッと届いてきた。マエダも着ていた上着を脱ぎ捨て、アッパーな「ノンアルコール」へと熱狂を運んでいった。ハンブレッダーズに呼んでもらってばかりだったこれまでを経て、このタイミングで彼らを招聘できたことの喜びを伝えつつ、「叩き潰しますとか言われてましたけど、そういう相手として見てもらえてるのがすごく嬉しかったですし、俺らもそういうライブをして、最後まで皆さんをブチ上げて帰ります」と気合いを伝え、ハンブレッダーズと出会った頃から歌ってきたという伸びやかで優しいラブソング「お願いダーリン」を届けた。そして「最高だけど、最高を更新し続けていきたい。フリージアンの目標は、紅白歌合戦に出ることです!ハンブレッダーズに先越されたくないので、俺らも負けじと最高更新していきます!」と語り、その決意を宿すように「満願成就の空に」を、突き上げた拳と共に高らかに届けた。
マイクレスでサビの歌詞を歌うメンバーと共に、オーディエンスも大シンガロングして始まった「夕暮れとオレンジ」を経て、「ハンブレッダーズもどうせ、音楽を勝手に続けていくでしょうね。俺らも全然まだまだ誰にも知られていないけど、辞めずにここまで来ました。そして今日、また、死ぬまで一生音楽を続けることを誓います」と「宣誓!」をアグレッシヴにプレイ。輪をかけるような盛り上がりを見せた。MCでは、たなりょーがムツムロとユニバーサル・スタジオ・ジャパンに行ったというエピソードを話し、「ハンブレッダーズ・ザ・ライドとかあったら乗るくらい仲が良いんですよ」と笑いを起こした。そんな良好な関係性を持ちつつ、マエダは、SNSなどで文章を通じて自分の考えを伝えることを苦手だということを踏まえ「ムツムロは自分にはできない戦い方をしているなと思ったし、それをすごい羨ましく思ってました。でも、それを真似するのではなく、自分のやり方で戦ってきたからこそ、今日こうして一緒にやれた」と、ハンブレッダーズとフリージアンは馴れ合うことはなく、互いに切磋琢磨し合える仲間であると語った。そして、そんな仲間が好きだと言ってくれたという「サトラ」がじっくりと届けられ、オーディエンスはその言葉と音のひとつひとつをしっかりと受け止めるように、大事そうに聴き入っていた。そこからラストスパートを掛けるように”夢の歌”である「空想新星」、さらに「一撃の歌」をプレイ。
ラストは「一人ぼっちの大きさは人によって違うから、君の気持ちが分かるだなんて言いたくない。俺の悲しみの大きさも、あなたの悲しみの大きさも、日々の憂鬱の大きさも、マジで誰にも分からん。あなたの悲しみがあなたの中にしかないということが、どれだけすごいことか!そんなん、分かち合わなくていいです。嫌なことがあったら、今日みたいな日に持ってきて下さいよ。何のために音楽があるんですか?」と力強く伝えながら、「悲しみの全てが涙ならば」を優しさとパワーをありったけ詰め込んで届けた。ひとりひとりがそれぞれの拳と想いを振り上げ、シンガロングして呼応する景色は、これ以上ないほどに眩しく、熱く、本当に素晴らしかった。
気合いが張りすぎて「宣誓!」の途中でズボンが破れたというマエダの登場を待ちつつ、アンコールでは「人間って、悪いところと折り合いつけたり、時に目を背けたりしながら生きていると思うんです。俺らもロックバンドですけど、一皮剥けたら”怪物”」だという解説を経て、新曲「怪物」が披露された。人間臭い歌詞を、ポップかつエネルギッシュに届けるメロディーに、初めて聴いたであろうオーディエンスも体を揺らしていた。
誰かではなく、あなたが日々どう思い、どう悲しみ、どう生きていきたいのか──上辺の話ではなく、芯の部分に真っ直ぐに問いかけてくるフリージアンの音楽は、私たちに希望と勇気を与えてくれる。止まらない時間の中で、先に進むことを選び続ける彼らは、11月16日に渋谷CLUB QUATTORでのワンマンも控えている。その時には、また、どんな景色を見せてくれるのか?今からとても楽しみだ。
ライター:峯岸利恵
Photo:きるけ。
ライヴ情報
〈FREESIAN ONEMAN LIVE 2024 -TOKYO-〉
2024年11月16日(土) SHIBUYA CLUB QUATTRO
OPEN 17:15/START 18:00
前売り:¥3,800 当日:¥4,500
[チケット]
イープラス:https://eplus.jp/freesian/
ローソンチケット:https://l-tike.com/freesian/
チケットぴあ:https://w.pia.jp/t/freesian-oneman2024tokyo/
プロフィール
【フリージアン PROFILE】
2021年正月、「最強のジャパニーズソング」を追い求めるためにどうしても手ぶらで歌いたいVo.マエダカズシが、歌以外全部やってくれそうなメンバーを集めて神戸で結成。
どこか懐かしさを感じさせる人肌の温もりがこもったメロディと、果てまで突き抜けていくようなド直球な歌声、そして激しく荒々しくも緻密にサウンドメイクされたバンドサウンドは、一度聴くだけで真水のように身体に染み込んでいく。
いま日本で一番清々しい日本語ロックバンド。
アーティスト情報
・フリージアンオフィシャル・ウェブサイト
freesian.jimdosite.com
・YouTube
https://www.youtube.com/@FREESIAN_OFFICIAL
・X
https://x.com/free__sian
・Instagram
https://www.instagram.com/free__sian/
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