【辺境レターズ】第4回 辺境的CDクレジットゲイズ!Wilco『SKY BLUE SKY』

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【辺境レターズ】第4回 辺境的CDクレジットゲイズ!Wilco『SKY BLUE SKY』

CD、ひっくり返してますか?

Glimpse Groupベースのツカダサトルです。いきなりですが、みなさま、CDをアレコレひっくり返してますか?帯とかどうやって仕舞ってますか。特典のステッカーを貼るのになんだかためらって歌詞カードに挟んだままになってませんか。黒のトレイだったとき裏ジャケの内側になんか書いてないかなあとかいって外したりしてますか。紙ジャケの背中にできるシワが気になったりしてますか。あれ、CDの向きってどこが上にくるのが正しいんだろう? とか、とか、とか……。とにかく、CD、ひっくり返してますか?

ここ数年はやっぱり僕もCDを買う機会ってどんどん減ってきています。でも、やっぱりCDっていいよねぇ~なんだかさぁ~、的な、いやそんな懐古的なハナシがしたいわけではありません。実際Spotifyありがとうな毎日ですから。はい。さっさと本題に入りますが、なにが言いたいのかというと、CDの「クレジット」を読むことが、面白い! ということなんです。

【辺境レターズ】第4回 辺境的CDクレジットゲイズ!Wilco『SKY BLUE SKY』

クレジットって、メンバーをはじめ制作に携わった人が記載されていたりする、歌詞カードや裏ジャケなんかにあるやつです。この企画では、その、クレジットを、読むのです。意外とそこに新しい発見がけっこうあったりするじゃないですか。もちろんアートワークの一部でもあるので、実はアーティストの個性が表れる部分でもあります。

で、今回取り上げたいのが、Wilco。ウィルコです。アメリカの、バンドの、6人組の、Wilco。去年13枚目のアルバム『Cousin』が出て、今年3月に来日もしましたね(行きたかった泣)。1994年結成なのでもう30年目のベテランです。

 そのWilcoの6枚目のアルバム、『SKY BLUE SKY』(2007年)をピックアップします。現体制になった1枚目でもあります。

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 4枚目『Yankee Hotel Foxtrot』(2001年)、5枚目『A Ghost Is Born』(2004年)の流れから一転、実験的な音遊びは控えめで、いい感じに力の抜けた、ナチュラルな演奏が収められているなというのが個人的な印象。ポップな曲調のなかにもジャム要素がいい塩梅に入っていて、僕は大好きな1枚です。ライヴでも定番曲である「Impossible Germany」のアウトロはいつ聴いても昇天できます。

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このアルバムに限ったことではないんですが、Wilcoはメンバーほとんどが数種類の楽器に堪能なマルチプレイヤーなので、CDクレジットには曲ごとの担当楽器がけっこう細かく書かれているんです。

では、ちょっと細かく見ていきましょう。1曲目、「EITHER WAY」のクレジットです。

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 ギターヴォーカル(ジェフ・トゥイーディー)、ベース(ジョン・スタラット)、ドラム(グレン・コッチェ)はだいたいどの曲も固定なんですが、このアルバムではふたりのギタリスト(パット・サンソン、ネルス・クライン)と鍵盤奏者(マイケル・ヨルゲンセン)の上物陣が、実に多彩な楽器を使い分けています。ちなみに「viola,violin」と書かれているKaren Waltuchはおそらくストリングスのゲストプレイヤー。

 ここで注目したいのが、Pat Sansoneのクレジットにある、「Hammond A100 organ」という記載。オルガンです。「ハモンドオルガン」という名前は知っている方もいるかもしれません。1934年発明の、電子楽器としても先駆け的存在になったオルガンです。有名どころだとディープ・パープルのジョン・ロードはハモンドのC-3というモデルを使っていて、ロックのオルガニストにもよく愛用されるモデルです。僕が好きなところだとアル・クーパーも使ってたみたいです。YOUR SONG IS GOODのサイトウ“JxJx”ジュンさんもハモンドオルガンを愛用しています。

 Wilcoのパットが弾くのはハモンドの「A100」というモデル。そのC-3の後につくられたようですが、どうも後継モデルというわけではなさそう。75年まで製造されていたとのことで、現在でも中古市場で100万はくだらないです。2段鍵盤のオルガンで、下でベースパート、上で主旋律という使い方をする人が多いみたいです。

【辺境レターズ】第4回 辺境的CDクレジットゲイズ!Wilco『SKY BLUE SKY』

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 曲中ではバッキング的に入ってるので何気なく聴いてたけど、そんなシロモノだったのか……と驚き。ちなみにパットは今年の3月にソロアルバムを出していますが、おそらくハモンドオルガンは入っていないであろう、超ダークな雰囲気のアンビエントアルバムでした。

 鍵盤楽器という点で見ていくと、マイケルとパットのふたりで、全12曲のうち実に7種類の楽器を使い分けていました。ピアノ、ハモンドA100、ハモンドB3、チェンバリン、メロトロン、ウーリッツァー、チェンバロの7種類。正直僕はその音色の違いが聴き分けられない……ですが、きっと適材適所のセレクトなんでしょう。というか、このCDクレジットをきっかけにハモンドA100という楽器を知っただけでちょっと満足してしまいました。

※ハモンドオルガンの歴史は鈴木楽器のHPに詳しいので気になった方はチェケ!
https://www.suzuki-music.co.jp/information/11237/

 さて、ほかの曲も見ていくと、ベーシスト的に見逃せないものを見つけました。8曲目「HATE IT HERE」です。John Stirrattのところ、「8-strings bass」と書いてあります。なんとなんと、8弦ベース!

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 多弦ベースといえば通常より低い音域を出す5弦とか6弦をイメージするかもしれませんが、この8弦というのは、おそらく、というか多分間違いないんですが、「複弦」のある8弦なんです。メイン弦のすぐ上に細い弦(=複弦)が張ってあって、オクターブ上の音が出るようになっているんです。簡単に言えば12弦ギターのベース版です。音の抜けがよくなって、キラキラした印象になります。

 8弦ベース自体けっこう珍しいです。僕はザ・フーのジョン・エントウィッスルが使ってたことで知りました。あとツェッペリンのジョン・ポール・ジョーンズも。日本人ではカシオペアの鳴瀬喜博さんが使ってる動画を観たことがあります。ほかにも調べていたら、スピッツの田村明浩さんも使っている曲があるみたいです。

 ジョンがたくさん出てきてなんだかアレですが、この「Hate It Here」でのジョンの8弦ベースの使い方が、実に贅沢なんです。1曲とおして使われているわけではなく、おそらく、サビのフレーズだけで使われているんですよ。ほかのセクションは普通の4弦ベース。これ、クレジット見るまで気づかなかったです。というかなにも知らずに聴いて、「ここのフレーズ8弦じゃね?」と気づく人はいないのでは……。

 先にあげた8弦ベースの使い手たちは、どちらかというとベースがガンガン前に出る曲で使っているのですが、ジョンはさりげなくこのフレーズだけで、あくまでもベース的に鳴らしているのです。

 それも、オクターブ上の音を足すだけだったらオクターバー(エフェクターの一種です)を使うというもっと手軽な選択肢もあるんですが、このフレーズのためだけの8弦というセレクトは実にマニアックかつ、職人的。結果、ギター、ピアノとのユニゾンのフレーズが、とにかく立体的に聴こえてきます。すんばらしい~~~アイデア。 かっこいい!

 長々と書いてしまいましたが、トラッドなアメリカンフォークをベースにバンドのアレンジ力が冴えるWilcoの魅力の一端が、クレジットからも感じられるんですよねえ。本当に一筋縄ではいきません、Wilco。最高。

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ライヴ情報

Glimpse Group ライヴ情報
5月9日(木)下北沢BASEMENTBAR/THREE 2会場往来 ※BASEMENTBARに出演
6月22日(土)下北沢BASEMENTBAR/THREE 2会場往来
6月26日(水)新宿紅布
6月28日(金)下北沢BASEMENTBAR
7月31日(水)渋谷WWW

アーティスト情報

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