大谷石地下採掘場跡が舞台。地下空間を体験するツアーに参加!
ツキイチで旅に出る平日会社員フォトグラファーのhirotographerです。餃子は皮からつくります。そうです、今回訪れたのは栃木県宇都宮市。ただ、今回餃子は一切登場しません!
ご紹介するのは、都内から1時間半ほど、1泊でも十分楽しめる地下空間でのアドベンチャー、「OHYA UNDERGROUND」の大谷石地下採掘場跡ツアーです。最近、ワクワクもドキドキも、多分餃子も足りていないあなたを、大谷石のつくり出す幻想と冒険の世界へご案内します。
東京駅を出発
東京駅発、地下空間行きはたったの1時間半
JR東京駅から東北新幹線で約50分のJR宇都宮駅へ。「JR東日本びゅうダイナミックレールパック」を利用すると、新幹線と宿のセットがお得に予約できるのでおすすめです。
宇都宮駅西口停留所から関東自動車の立岩行きのバスに乗り約30分。大谷観音前停留所で下車して3分ほど歩くと「OHYA BASE」に到着!
大谷石地下採掘場跡ツアー OHYA BASEを出発
冒険の始まりはOHYA BASEから!
そう、今回の旅は、大谷石の産地で「地下神殿」「地底湖」のような幻想的な光景に出会える「OHYA UNDERGROUND」の大谷石地下採掘場跡ツアーに参加することが目的。
OHYA BASEに入ると、既にツアーの参加者と思われる人たちが集まり始めている様子。挨拶して長靴とライフジャケット、ヘルメットを借りると、さっそく大谷石に関するオリエンテーションが始まります。
今回のツアーのガイドは、イギーさん、シャークさん、アマゾンさんの3人。大谷石の特徴や歴史、エピソードなどを聞いていると段々と大谷石が気になる存在になってきます。
長靴に履き替えてバンに乗り込んで、いざ大谷石の旅へ出発です。
車窓越しに見える景色や建物のエピソードをお話ししてくれるアマゾンさん、期待が高まります。
道路脇に積まれた大谷石。昔はこの高さを利用して馬車に石を積んでいたとのこと。
5分ほどで到着したのは現役の採石場。少し離れたところから見ると田んぼのなかにあるただの石置き場にしか見えませんが……、現在も大谷石を採掘しています。
ちょっと奥に進むと目に飛び込んできたのは、想像を超える深さ60m級の巨大な縦穴。
底は見えます……見えます……が、足がすくむほどの深さ。
ちなみに60mというのは20階建てのビルに相当する深さです。これがのどかな田園風景のなかに突然現れるというギャップ。ツアー冒頭から殴られたような衝撃です。
写真の奥に見える階段は、石掘りの職人たちが日々仕事場へと駆け降りる、いわばエクストリーム通勤経路。
この採石場では、石の加工だけでなく切削するための機械や、時間経過による石の状態の変化なども実物を見ながら教えてもらえます。これも通常では立ち入れない、現役の採石場見学ならでは。このツアーでしか味わえない醍醐味の一つです。
大谷石地下採掘場跡ツアー 里山をハイキング
地下空間の入口へ……そしてツアーが始まる
再度バンに乗り込み5分ほど移動。バンから降りて山のなかへと入っていきます。「周辺の里山ハイキングです」とガイドさん。先ほどの巨大穴の前例があるので、何が出てきても驚かないよう心の準備だけはしておきます。
歩きやすいように刈り込まれた坂道を少し歩くと大谷石でできた廃墟が現れました。
聞けばこの廃墟、以前は採石場の職人たちの休憩場所として使われていた場所だそう。向かいにある小さな建屋は、採石作業で冷えた体を温めるために入った五右衛門風呂だったとのこと。
この建屋は、質があまり良くなく売り物にならない大谷石を使ってつくられたとのことで、見ると確かにミソ(圧縮されたガラス質の部分)や穴が大きめです。
そこから少しだけ山間をハイキング。地盤が大谷石なので深く根を張れず、木の一本一本がスラっと細身です。
少し歩いた先には豪奢(ごうしゃ)なお屋敷が。もともとの家主は大谷石の石材屋さんだったそうで、ここで紹介されたのは「虎目(とらもく)」の大谷石を使った蔵。虎目とは、石のなかに含まれる鉄分が酸化で黄変し、虎のような模様になることから名付けられた最高級の大谷石です。
他の石よりも堅牢(けんろう)で見た目も美しい! 6億トンともいわれる埋蔵量の大谷石ですが、この虎目石は、今では採掘できない貴重品です。
大谷石地下採掘場跡ツアー 地底湖へ
採掘場跡はまるで地下神殿!
さて、ここでライフジャケットとヘルメットを装着して、未舗装の道を進みます。少し歩くと不意に姿を現すのはロールプレイングゲームの地下神殿の入口のような場所。このツアーの核心部である採掘場跡です。
垂直に切り立った柱や、自然と人工がつくり出した階段状になった岩場、崩れた瓦礫、崩落のチェックのために削られた石の柱など、その風景に目を奪われるばかり。
大谷石地下採掘場跡ツアー 地底湖クルージング
いざ暗闇に浮かぶ地底湖へ!
石の神殿を巡ったあとの次なるダンジョンは地下洞窟。
緩やかな坂道を下っていくと急激に気温が下がり、あっという間に光の届かない真っ暗闇の世界に突入します。
ライトで照らされた足元を見ると小さい穴が無数に空いています。なんとこれ、採掘場の天井から落ちてきた水滴が空けたものなんだそう。まさに「雨垂れ石を穿つ」。この跡に時間の流れと歴史を感じます。
ガイドさんが鉄柵の鍵を開けて、ダンジョン最奥部へと到着です。そこには地底湖のような空間が広がっていました。
2組に分かれて2隻のボートに乗ると地底湖クルージングの始まりです。意外かもしれませんが、手持ちで撮るならスマートフォンの夜景モードの方がきれいに撮れます。もしツアーに参加されたら是非試してみてくださいね。
長い時間をかけて雨水を湛(たた)えたその水深は約4m。水温は常に5℃程度とのこと。壁際に敷設されたライトが辺りの幻想的な景色をうっすらと照らし出します。
ボートはスムーズに奥へ奥へと進んでいき……
突き当たりには小さな入り口が。天井に頭をぶつけないよう気をつけながらくぐり抜けると、そこには空から光の差す空間が広がっていました。
このツアーでしか入れない特別な空間を満喫したところで全行程終了。あっという間の3時間でした。
今回は冬に参加しましたが、季節ごと、時間帯ごとに違った魅力があるそうで、ぜひまた訪れたい場所になりました。実際リピーターも多いそう。また、アーティストのミュージックビデオの撮影などにも使われているので、ファンの方は聖地巡礼でも楽しめそうです。
※編集部注:本ツアーは事前完全予約制です(当日申込は不可)。予約・問合せは受付窓口「えにしトラベル」まで。OHYA BASEは集合場所で、問合せ先ではありませんのでご注意ください
カトリック松が峰教会 ライトアップ
黄昏時の大谷石の教会を堪能!
大谷石を満喫したあとは大谷観音前停留所から宇都宮駅西口行きバスに乗り約30分、東武駅前停留所で下車してそこから徒歩10分ほどの、黄昏時にライトアップされた「カトリック松が峰教会」を訪れました。
こちらも大谷石を使った建物の一つ。ロマネスク様式を基調にした建築が特徴で、国の登録有形文化財にも指定されています。夕闇に浮かび上がる凛とした姿に心奪われます……。
敷地内の見学は翌日にして、この日は宇都宮駅に戻り、駅近くのホテルに宿泊しました。
カトリック松が峰教会
再訪、大谷石の教会
2日目は、石造りが印象的なカトリック松が峰教会の再訪からスタート。
静かな教会の中に入ると厳粛な気持ちになります。
柱やレリーフにも使われる大谷石。加工性の高さが伺えます。
教会に入って気づいたのは加工された大谷石の美しさ。直線中心の外観とは対照的な曲線の柱などにも大谷石が使われており、昨日聞いた「軽さ、燃えにくさ、加工しやすさ」というその特徴が生かされていることがよくわかります。
宇都宮ライトレール
2023年夏開業! 宇都宮自慢のライトレール
教会から宇都宮駅までは駅西口行きのバスで20分ほど。駅の東側には2023年8月に開業したばかりのLRT路線「宇都宮ライトレール (愛称:ライトライン)」(※)が走っています。
※編集部注:LRT(Light Rail Transit)とは、快適性や省エネ性などに優れた、新しい路面電車交通のこと
黄色の車体が市内の風景によいアクセント。
どう撮っても絵になりそうなカワイイ車両です。撮影にいらっしゃっている方も多数。なおこのライトレール、宇都宮駅の西側、昨日行ったOHYA BASEのある方まで延伸も検討されているそう。いつか大谷地区までこの路面電車で行けたら……と思うと少しワクワクしますね。
カフェギャラリー柚
ランチは大谷石と素敵な器に囲まれて!
旅の締めに向かったのは、駅から徒歩10分ほどの「カフェギャラリー柚」。大谷石を基礎に使った築70年の蔵をリノベした素敵なカフェです。
注文したのは「柚のおまかせランチ(コーヒー・甘味付)」。
織部のプレートの上にところ狭しとかわいらしい小皿が並べられており、それぞれに野菜中心のお料理が盛られています。
メインの南蛮料理は、チキン、お豆腐、白身魚とバラエティに富む具材で、上にかかるタルタルソースにもお野菜がたっぷり。スティック野菜もソースに胡麻の風味がついていておいしい。これにコーヒーとミニあんみつまでついてくるので嬉しくなります。
数えていて途中でわからなくなりましたが、確実に30食材は超えています。スタッフさんいわく、地場の野菜を中心にメニューを考えているとのこと。
有田や波佐見から取り寄せた焼き物のギャラリーが併設されていて、多くのお客さんが買い求めていくそう。お気に入りの食器を探してみるのも楽しそうです。
帰りは行きと同じく、宇都宮駅から新幹線に乗って約50分、大谷石をめぐる冒険の旅からあっという間に東京駅へ到着。宇都宮の秘められた魅力の一つ、大谷石に触れた1泊2日の列車旅、後ろ髪を引かれながら終了しました。
東京駅に到着
掲載情報は2024年4月16日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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