<ライブレポート>Eve、自身最大規模のワンマンで観客と巻き起こした“花嵐”

<ライブレポート>Eve、自身最大規模のワンマンで観客と巻き起こした“花嵐”

 Eveにとって史上最大規模のワンマンライブ【Eve Live 2023「花嵐」】。さいたまスーパーアリーナにて2日間行われた同公演は、今年8月に開催した【Eve Arena Tour 2023 「虎狼来」】で垣間見えた変化をより強化させるだけでなく、これまでの歴史と現在位置をつないだうえで未来を見据える、ターニングポイントの象徴のようなステージだった。その2日目、最終日の模様をレポートする。

 【虎狼来】でも花道の先にセンターステージが作られ、Eveも「花道のおかげでみんなの近くに来ることができた」と話していたが、今回はセンターステージからさらに上手と下手に花道が伸び、サブステージが用意されていた。そこには彼のミュージックビデオや映像演出の世界を再現するかのごとく、街頭や草木の植え込みなどがあしらわれている。前回以上に彼の作る世界と現実世界の境界線が淡くなっていること、Eveが観客との距離を縮めていることが、開演前からも感じ取れた。

 植物の芽吹きを基調としたオープニングムービーとバックバンドによる「fanfare」の演奏を経てEveが登場。「ナンセンス文学」でこの日の幕を開ける。メインステージ背景に広がるLEDモニターには、MVをアレンジした映像の中にステージ上で歌唱するリアルタイムのEveの姿が、霞がかったフィルター越しに映し出されていた。彼がライブでここまで自身の姿や表情をモニターに映すこと、客席から表情を視認しやすい照明演出でパフォーマンスすることは、今までになかった。曲中でセンターステージに移動し、「ファイトソング」では彼を取り囲むように盛大に銀テープが舞い上がる。音楽で構築してきた世界から、生身の彼が飛び出てくるような演出は、会場の熱気をより掻き立てた。

 驚喜で興奮冷めやらぬ観客に、Eveは「盛り上がりすぎでしょ」と笑う。そして「最高の2日間にしたいと思ってここに来ました。特別な日にしましょう」と告げ、ギターボーカルスタイルで披露したフレッシュなギターロック「白銀」、クールな低音が効いた「トーキョーゲットー」、陰と軽やかさを併せ持つ「夜は仄か」、インストセクションと、少しずつ夜が深まるように内省的な世界観へといざなう。「楓」は彼が歌うごとにモニターに歌詞が浮かび上がり、消えずに残り続けていく演出が用いられた。彼の歌が言葉という花を咲かせていくようだ。さらに曲のクライマックスで、彼は花道へと歩みを進めた。彼が観客の輪の中に入れば入るほど、彼の歌がこちらの心の奥へと滑り込んでゆく。抱えきれないほどの花束を手渡されるような歌と演出に、会場一帯が酔いしれた。

 「羊を数えて」の後、Eveは「自分の曲だけでライブがしたい」と思ったことが曲作りを始めたきっかけであると振り返り、葛藤や悩み、迷いを抱えるなかでも自身の芯や救いになったのは音楽であったと話す。そして新旧織り交ぜたセットリストのリハーサルを重ねるなかで、昔と変わらないものがあることを再確認したという。「僕たちは歳を重ねるごとに成長して、趣味や価値観も変わっていく――それが当たり前のことだと思うんです。だけど自分の過去の曲を聴きながら、変化の中にも変わらないものがあると思ったし、(変わらないものの)いいところも悪いところもすごく大事にしていきたいと思いました」と告げると、多くの観客と自身の音楽を共有できることへの感謝をあらわにした。

 「迷い子」で会場を優しく包み込むと、「虎狼来」「群青讃歌」を高揚感たっぷり歌い上げて、観客の手を取り新しい世界へと連れ出す。その後のインストを経てなだれ込んだ「ドラマツルギー」「アウトサイダー」「バウムクーヘンエンド」の畳み掛けは、嵐を抜けたような解放感だった。彼がこれまでに蓄えてきたエネルギーで、音に乗りながら軽やかに観客を巻き込んでいく様は非常に痛快だ。この現象こそ花嵐と名付けたいくらいである。彼の変わらない思いが、新たな輝きとともに鳴り響いていた。

 「アヴァン」「廻廻奇譚」と『呪術廻戦』シリーズの書き下ろしタイアップ曲を続けざまに披露してスリリングなムードを作り出すと、「ラストスパート出し切れる? みんなの声ちょうだい!」と呼び掛けセンターステージまで躍り出て「ぼくらの」「退屈を再演しないで」としなやかな躍動感とグルーヴで包み込む。「いろいろ言いたいことはあるんだけど……とにかく楽しい。(歌っているときに)声が裏返っても、楽しいものは楽しい」と笑顔を見せるEveは、自分が好きなアーティストの音楽に救われてきたように、自分の音楽がリスナーにとって支えであり続けてくれたらと願いを語る。そして祝祭のパレードのような華やかな興奮のなか「花嵐」で本編を締めくくった。

 アンコール序盤に2015年に制作したVOCALOID楽曲「sister」のセルフカバーなどを披露すると、「君に世界」では観客がEveをスマホライトで照らし、あたたかいシンガロングを響かせる。「最後だから盛り上がっていこうよ、嗄れるくらい声出してさ。いけるか!」と高らかに叫び、2日間のフィナーレに選んだのは「お気に召すまま」。「この先ずっとよろしくね、よろしくね。」という歌詞で観客に呼び掛けた瞬間も、自然体の笑顔で花道を歩いていく姿も、観客の爽やかなクラップも、バンドメンバーによるエモーショナルな演奏も、すべてがとても瑞々しく美しかった。

 自身最大規模のワンマンで、観客と強く心を通わせたEve。来年の初夏には、神奈川・横浜BUNTAI公演を含むキャリア初のアジアツアー【Eve Asia Tour 2024「Culture」】が決定している。このライブタイトルは2017年にリリースしたアルバム『文化』と関連はあるのだろうか。そして新たなフェーズに入ったEveは、この先どんな音楽を作り、どんなライブを展開していくのだろうか。想像は尽きない。いずれにせよ、きっとこれからも彼は変わらないものを芯に持ち続けながら、健やかに変化を経ていくだろう。【花嵐】は彼の軌跡のすべてがあったからこそ巻き起こった。嵐の後は快晴であると、相場は決まっているのだ。

Text:沖さやこ
Photo:Takeshi Yao

◎公演情報
【Eve Live 2023「花嵐」】
2023年11月25日(土) 、26(日) 埼玉・さいたまスーパーアリーナ

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