タリーズコーヒーが明かす品質へのこだわり / コーヒー好きが唸る「マイクロロット」とは?

コーヒーの味わいにこだわる「TULLY’S COFFEE」のブランド方針発表会が9月14日、東京・竹橋にある「タリーズコーヒー 丸紅ビル店」で開催。タリーズコーヒージャパンと、タリーズのコーヒー飲料販売元となる伊藤園が共同で開催したもので、タリーズコーヒーのこだわりと今後の展望が語られた。

全国に約770店舗を展開

アメリカ・ワシントン州シアトルで生まれたタリーズコーヒーは、日本では1997年に東京・銀座に1号店がオープン。2004年にはカフェチェーンで初となる病院内店舗を出店し、2014年には全国47都道府県すべてに進出。

コロナ禍で一時的に売り上げが落ちるも現在は店舗数・売上ともにコロナ前を上回る成長を続けており、現在全国に約770店舗を展開。コロナで変わった生活様式の変化に合わせ新規出店戦略として“多様化”に注目し、空港や百貨店、パーキングエリアなどへの出店も増えている。身近なところでも、勤め先のビル1階ロビーやショッピングモールのちょっとした場所にタリーズコーヒーがあるかもしれない。

発表会ではまず、タリーズコーヒージャパン マーケティング本部 グループ長の工藤和幸氏が登壇。厳選した生豆を国内の自社工場で焙煎し、注文後に各店舗でバリスタがトラディショナル・エスプレッソマシンを使って1杯ずつ抽出するというコーヒーに対するこだわりが語られた。工藤氏いわく、「トラディショナル・エスプレッソマシンを約770ある店舗のすべてに導入しているコーヒーチェーンは世界中でほかにないのでは」とのこと。

コーヒー豆の生産者の生活を大事にし、高品質コーヒーを確保する「サステナブルな生産体制」

続いて、タリーズコーヒージャパン プロダクト本部 グループ長の南川剛士氏から「生産者と共につくるコーヒーの未来」と題して、高品質なコーヒーを継続的に提供するための取り組みが紹介された。

現在、世界的な視野で見渡すと、新興国・生産国・発展途上国での需要拡大による「高品質コーヒーの買付競争激化」と、地球温暖化を背景とした産地環境の変化による「コーヒーの世界的な品質低下」という2点が挙げられるそう。

そんな中、クオリティーを維持するためには生産者との信頼関係を強化し産地により深く入り込んだ取り組みが必要と考えたタリーズコーヒーは、ブラジル・コスタリカ・ペルー・グァテマラなど世界のコーヒー産地で、収穫から精製までのプロセスをアドバイスし品質の維持と向上を目指すプロジェクトを展開。2019年にペルーで始まった品種改良プロジェクトが現在、本格植樹・生産の段階に入っており、2026年に初収穫を予定していることなどが紹介された。

現在、タリーズコーヒーではコスタリカの「ドータ農協」と協力し小規模生産(マイクロロット)による最高品質のコーヒーを作り上げるプロジェクトも進めている。今年で16回目の開催となるこの「マイクロロットプロジェクト」はタリーズコーヒーの担当者が生産地へ赴いて審査を行い、より品質の高い豆を選定し、日本のタリーズコーヒーで販売するプロジェクトだ。正しく品質を評価され正当な対価が得られることは、生産者が安心してコーヒーの生産を続けられるほか、生産者のモチベーションを高めることにつながる。

ちなみに、コスタリカといえば、サッカー日本代表がドイツとスペインを破るという快挙を成し遂げたカタールワールドカップのグループリーグで痛恨の敗北を喫したことが頭に浮かぶ方も多いのでは。2023年にプロジェクト内のコンテストで金賞を受賞したコスタリカのある生産者は、元サッカーコスタリカ代表選手だそうだ。このようなセカンドキャリアを含めて、コーヒー豆の生産地が、若者たちの働く場所として根付き、拡大していることは良いことだろう。

(右から2人目が元サッカーコスタリカ代表選手である生産者)

南川氏は、ドータの町は人口の約9割が農業に携わるような「コーヒーの町」であり、そこの小規模生産者たちと「マイクロロットプロジェクト」を共に進めることで、タリーズは高品質コーヒーを確保し、生産者たちは生活が成り立つので安心して生産を続けることができていると語った。実際に生産者たちからは「何人もの息子や娘を大学に行かせることができた」との声があがっているという。

マイクロロットは数が少ないために全国で販売することができないが、「マイクロロット・コスタリカ 2023ロット」の7商品は、「北海道・東北」「関東」「神奈川」「中部」「関西」「中四国」「九州・沖縄」という全国7エリアで、それぞれのロットが10月11日から地域限定発売となる。サステナブルな生産体制で作られたコーヒーをぜひ味わってみてはいかがだろう。

また数年後の商品化を目指し、現在ペルーでテストされているアラビカ原種のティピカ種とリベリカ種の接ぎ木による栽培も期待したいところだ。ティピカ種は良き味わいを持つもののその栽培には手が掛かり、ビジネス視点では農家も手を出したがらないという。そのため扱う農家は少なく、このままでは種が途絶えてしまう状況だという。そこにリベリカ種という病虫害に強い種の根を接ぎ木し栽培するのだという。コーヒーファンからすれば、様々な品種が引き続き愉しめる環境が一番だろう。コーヒー界の絶滅危惧種を救うといった取り組みにも共感が持てるはずだ。

手軽に楽しめるボトル缶やインスタントも

最後に、伊藤園 マーケティング本部 コーヒーブランドマネジャーの相澤治氏から、「TULLY’S COFFEE」飲料ブランドの現在の売れ行きや今後の商品展開が語られた。

伊藤園が展開する「TULLY’S COFFEE」の飲料ブランドは、タリーズコーヒーのコーヒー作りに対する思想を受け継いでおり、コーヒー豆や焙煎にこだわりがある。こういった共通のポリシーをさらに強化し、今後の連携を拡大していくことの宣言として今回初めて二社共同の発表会としたらしい。

390mlの黒のボトル缶でお馴染みの「BARISTA’S BLACK」などに代表されるコーヒー飲料の販売数は、2022年にはコロナ前を更新する1600万ケースを突破。「BARISTA’S BLACK」はコクと苦みが深く40代~50代に人気で、一方、青の285mlボトル缶で販売される「BARISTA’S BLACK キリマンジャロ」は20代~30代の飲用が多く、特に「キリマンジャロ」の華やかな香りが女性にも好まれており、様々な年代層での拡販がうまくいっているようだ。

他にも2023年秋冬のラインアップでは、希釈タイプ、ドリップバッグ、インスタントなども取り揃え、コーヒー第4の波「フォースウェーブ」と言われるさらなるコーヒーの愉しみ方をサポートしてくれそうだ。また9月19日から俳優の関水渚さんを起用した新テレビCMが放送されることも発表された。

(取材・文:竹内みちまろ)

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