夫婦別姓の民法改正案が通らない4つの理由
いまだ審議未了とは知らなかった。簡単にはいかないのかもしれませんが、自由に選択できても良い気がします。でも家系図はわかりづらくなってしまうかも。今回は折田明子さんのブログ『akoblog@はてな』からご寄稿いただきました。
夫婦別姓の民法改正案が通らない4つの理由
もう11回目になる。「もう夫婦別姓は可能なんでしょう?」と勘違いしている人も、「まだそんなことやってるのか」とうんざりした人もいるかもしれないが、民法改正法案は、実はまだ審議をされたことすらない。提出はされど審議未了で廃案の繰り返しだ。この法改正に強く反対する自民党の法務部会では喧々諤々(けんけんがくがく)のけんか議論になるそうだが、あくまで党内の委員会の話である。国民の家族意識に関わる重要な問題だというなら、11回もスルーせずにがっちり議論のテーブルに載せればよいと思うのだが。
———–以下引用
民主党は24日午後、選択的夫婦別姓制度の導入を柱とする「民法の一部を改正する法律案」を共産党、社民党、無所属議員との共同で参議院に提出した。
同法案の筆頭発議者で法務委員会筆頭理事でもある千葉景子議員はじめ、神本美恵子『次の内閣』ネクスト子ども・男女共同参画担当大臣、相原久美子参議院議員が提出し、その後、会見が行われた。
同法案は、1998年以来、野党共同で衆参両院に提出してきたもので、参議院提出は今回が11回目。
——–引用ここまで
『民主党ニュース』2009/04/24 「選択的夫婦別姓制度の導入へ 民法の一部改正案を参議院に提出」より引用
http://www.dpj.or.jp/news/?num=15817
※法改正の概要は上記サイトでPDFで閲覧可能
夫婦別姓は議論の練習台になるくらい、賛成と反対の対立構造に陥りやすい問題だ。ミクロな視点では、ある夫婦が同姓にするか別姓にするかという話になるし、マクロな視点では、夫婦がそれぞれの姓を保持したまま婚姻届を出せるという選択肢を、社会として認めるか否かという話になる。だいたいはこの両者はごっちゃになっていて『2ちゃんねる』なぞをのぞいてみるとひどい話になっているのだが、この機会になぜ夫婦別姓の民法改正案が通らないのかをまとめてみたい。
1.「夫婦別姓」というネーミング
「別」という言葉は「別れる」を連想させるかもしれない。わざわざ別の名字にする、あなたと私は別なんだから、と言った家族崩壊への妄想を後押ししているのはこの言葉なのではないだろうか。それぞれの姓を保持する「保姓」とか、父系・母系の系統を継承する(see also 名前の違い)「双姓」とでも言い換えてみると、別姓→家族崩壊という妄想の暴走は幾分和らぐのではないかと思う。
(ちなみに「夫婦別姓」という言葉は、1984年に東京都の「夫婦別姓をすすめる会」が名付けたもの。この当時、女性が旧姓を使い続けるという発想すら無かった社会環境を鑑みるなら、夫婦別姓というネーミングの意味はとても大きかったということは付け加えておきたい。言葉がなければ、存在を認識されないのだから)。
2.夫婦の問題と制度の問題の混在
・ある夫婦が同姓にするかそれぞれの姓を保つか
・それぞれの姓を保ちたいと思っている夫婦が婚姻届を出せるようにするか
という二つの話を混ぜてしまうところに混乱があるのだと思う。もっと視点を引き寄せてみればいい。隣に住んでいる夫婦がそれぞれの姓を変えずに婚姻届を出したいと望んでいたとする。自分たちは同姓で婚姻届を出したので不自由はない。ここまでは夫婦としての問題。そこから先は、この隣り合う二軒の夫婦が両方とも婚姻届を出せるようにするか、それとも片方が満足しているので片方は捨て置くかという問題なのだ。これを混同すると終わりませんよ。
3. 正しいデータが取られていない
「夫婦別姓に賛成ですか・反対ですか」のデータにはもうほとんど意味はない。夫婦で夫の氏を選んで同姓で婚姻届を出す人はマジョリティであり続けるし、別姓はマイノリティであり続けるだろう。別姓希望者が50%を超えるまで法改正をしない、というのであれば、民法改正以外の法案でも当事者が少ないような法案は後回しにされ続ける。
むしろ取るべきデータは以下の通り。
——–
・事実婚夫婦の数と内訳
– 夫婦別姓を目的とし法改正によって婚姻届を出したいと考えている割合は?
・事実婚が認められない法制度、民間ルールには何があるのか?
・旧姓使用者の数と内訳
– 業務でのみ旧姓を使用したい人と、生活全般にわたって旧姓を使用したい人の割合は?
・業務において旧姓使用ができない場面、法制度、民間ルールには何があるのか?
——–
すでに事実婚や旧姓使用者は存在するのだから、彼ら彼女らのうち、法改正を切実に求めている人とその理由を明らかにすることによって、法改正の可否を判断すべきではないだろうか。
4. 「妻が改姓したくなければ妻の姓で同姓を選べばいい」は幻想
夫の氏で同氏>別姓>妻の氏で同氏
という順番が、世の中にある現実的な抵抗感の順番だと思う。妻の姓で婚姻届を出すことが抵抗なく受け入れられている社会ならともかく、日本社会はまだ父系で墓を継いでいくというコンセンサスで動いているのが現実だ。婿養子と言えどバーチャルな父系で、婿を「息子」にした上で自分の娘を「嫁」とするというプロセスを踏む。
ちなみに、先日「発言小町」で見つけた掲示板への投稿を読んでいて、妻の氏で法律婚をした夫婦に対する暴言が相次いでいるのに驚いた。
——–
嫁の言葉が気になって眠れません (発言小町)
http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2009/0417/235348.htm
——–
※追記1
ブログのコメントを拝見して婿養子に補足。これには3パターンあり、戸籍筆頭者を男性にしたいと望む人が多いため2)と3)の手段が多いようです。
1)妻の氏Aで婚姻届を出したあと、夫を養子縁組(戸籍筆頭者は妻)
2)夫の氏Bで婚姻届を出したあと、夫を養子縁組。戸籍筆頭者(夫)は養子縁組によって妻の両親の姓Aに変わるので、その戸籍にいる人(夫婦)は妻の姓Aになる。
3)夫を妻の両親と養子縁組。これで妻の姓Aを名乗る。その後に夫の氏(この時点では妻の姓A)で婚姻届提出
※追記2
福井県出身の知人が言うには、上記4.について、婿養子に対する抵抗感はそれほど高くなく、むしろ別姓の方が特別視されるとのこと。地域差があるのかもしれない。
執筆: この記事は折田明子さんのブログ「akoblog@はてな」より寄稿いただきました。
文責: ガジェット通信
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