1300年前に生まれた日本最古の歌集「万葉集」を今の若者言葉&奈良弁で訳したら……?
「万葉集」といえば、1300年前に当時の都だった奈良で生まれた日本最古の歌集。国語や日本史の授業で習ったものの、歌の内容については特に興味を持つことなく過ぎ去ったという人も多いのではないでしょうか。……でも、それはとってももったいない!
そんなふうに思わせてくれるのが、佐々木良さんが著した『愛するよりも愛されたい 令和言葉・奈良弁で訳した万葉集1』です。同書は万葉集にある歌を現代の奈良弁に意訳した一冊。令和の若い世代が実際に使っている言葉で記すことで、万葉集の面白さ、奥深さを今の時代にも通じるリアルさで届けてくれます。
たとえば、「あをによし 奈良の都は 咲く花の 薫ふがごとく 今盛りなり」という歌は、万葉集の中でもよく知られたひとつかと思います。太宰府の次官だった「小野老(おののおゆ)」があこがれの奈良の都について詠んだ歌です。これを同書では「美しい花がさいてかおるように いま奈良がアツい!」と訳しています。どうでしょう、当時の最先端スポットを目にした男性が、そのすばらしさを興奮とともに周囲に語る様子が手に取るように伝わってこないでしょうか。
万葉集では、恋歌がおよそ半数を占めています。不倫、失恋、片想い……今も世間をさわがせるさまざまな恋の形が当時もいたるところにありました。中でも、稀代のモテ男として知られたのが「大伴家持(おおとものやかもち)」です。万葉集の編纂にも携わっており、そこに収録されている歌からも彼のモテ伝説の一端はうかがえます。
「またも逢はむ よしもあらぬか 白栲の 我が衣手に いはひ留めむ」
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「また会えるやんな? 次会ったときには手錠かけるからね(ハート) 逃がさへんからね(ハート) 覚悟しといてね(ハート)」(同書より)
上記の歌をはじめ、万葉集には彼に贈られた恋歌がたくさんあるといいます。いっぽう、家持自身が詠んだ歌も収録されています。
「ももしきの 大宮人は 多かれど 心に乗りて 思ほゆる妹」
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「女優とかモデルとか女子アナとか いろんな女の子と遊んでるけど ほんまに愛してんのは君だけやで姫」(同書より)
同書の補足に「彼の恋歌にはいつも、贈った女からの返歌があるのですが、この歌にはありません」と書かれているのを見ると、歌を贈られた女性はふんっとそっぽを向いてしまっているのか、他になにか理由があるのか……? さまざまな想像を働かせることができるのも面白いですね。
ほかにも、ピュアなポエムあり、ド直球の下ネタあり、芸人のような笑えるネタあり……Twitterの名ツイートや大衆に歌いかける恋愛ソングに通じるようなキャッチーさがあって、見ていて飽きることがありません。生きた言葉が躍る歌の数々は、みなさんを万葉集の新たな世界へといざなってくれることでしょう。なお、著者の佐々木さんによると、続編となる『太子の少年 令和言葉・奈良弁で訳した万葉集2』が発売されたばかりとのこと。1巻を読んで興味を持った方は佐々木さんのTwitterをチェックしてみてはいかがでしょうか。
[文・鷺ノ宮やよい]
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