『FINAL FANTASY XVI』レビュー:完成度の高い「FF」 が返ってきたという喜びと、わずかな不安
過去の集大成としての完成度の高さ! この先に待つ不安と期待
ここまで書いてきた通り、本作はバトルシステムも戦闘システムも正直言っておもしろい。だからこそ、かつて胸をワクワクさせた「ファイナルファンタジー」が帰ってきてくれたという思いを抱けたのだ。
しかしながら筆者は最初に、「不安感」を抱いているとも書いた。それはなぜか?
本作は確かに完成度が高いのだが、この完成度の高さは『ファイナルファンタジーXIII』や『ファイナルファンタジーXV』といったタイトルが挑戦を重ねてきた結果にも見えるのだ。
『ファイナルファンタジーXIII』は確かにシナリオに問題を抱えていたと思う。しかしそれは、使い古されたファンタジーものの延長ではなく、まったく新しい神話を構築しようとチャレンジしたからだ。
『ファイナルファンタジーXV』のオープンワールドや3Dアクションもそう。新しいことにチャレンジしているのだから、どうしたって粗い部分は出てきてしまう。
もちろん、「チャレンジしているんだから完成度が低くてもしょうがない」という話にはならない。
しかしながら、「ファイナルファンタジー」シリーズというのはこれまでずっと、チャレンジし続けてきたタイトルだ。「ドラゴンクエスト」に追いつけ追い越せとチャレンジし、『ファイナルファンタジーIV』ではバトルにセミリアルタイムシステムを持ち込み、『ファイナルファンタジーVII』ではフル3Dにチャレンジし、『ファイナルファンタジーXIII』では新たなコマンドバトルのかたちに、『ファイナルファンタジーXV』ではオープンワールドにチャレンジした。
このチャレンジという観点から見ると、本作はこれまでのブランドを回復する意図からか、チャレンジすることより「完成度を高める」ことを重視したように見える。完成度が高いことそれ自体は喜ばしいことなのだが、一方で驚きは少なく、予定調和の中に小さくまとまってしまった印象がある。
こうした点を踏まえると、今後のシリーズがどんな展開になるのか、少々不安を感じてしまう……。
贅沢な望みかもしれないが、やはりシリーズのファンとしては、「世の中にはこんなRPGがあるのか!」という新たな体験を期待したい。かつて「召喚獣」や「ジョブチェンジ」、「アクティブタイムバトル」や「マテリアシステム」といったものでそんな体験を味わわせてくれたように。
文/田中一広
(c) 2023 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. LOGO ILLUSTRATION:(c)2020 YOSHITAKA AMANO
FINAL FANTASY, SQUARE ENIX and their respective logos are trademarks or registered trademarks of Square Enix Holdings Co., Ltd.
(執筆者: ガジェット通信ゲーム班)
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。