「京中華」を味わう小旅行。京都のおしゃれな中華から老舗まで
東京都内で「中華可菜飯店」という中華料理店を営んでおります、五十嵐可菜です。
JR東京駅からJR京都駅へは新幹線で2時間ほど。「京都旅行」と聞くと一大イベントのように感じられるが、想像よりも気軽に行ける場所で、ショートトリップにも最適なのだ。お寺や紅葉、美術館なども多く、日本の文化を堪能するにはもってこいの京都だが、今回はそんな観光とは少し違った角度から街を巡りたい。
私は学生時代を京都で過ごしたこともあり、今でも友人やお世話になった方に会いに、年に何度か足を運ぶ。そして必ずと言っていいほど京都の中華料理「京中華」を食べに行く。お気に入りがたくさんある京中華のなかでも、特におすすめのお店を紹介したいと思う。
東京駅
京都駅の建築
東京駅から東海道新幹線に乗り、2時間ほどで京都駅に到着。京都駅を起点に観光と京中華を楽しむ。
と、その前にまず見てほしいのは京都駅の駅舎。駅舎は梅田スカイビルや札幌ドームも手がけた原広司さんという建築家によるもの。
中央のコンコースは、前部分と天井がガラス張りの大きな吹き抜けになっており、ガラスが外の光や景色を内側に取り込んでいて、大変気持ちの良い空間となっている。
エスカレーターを上るとこのような大きな階段が続く。駅舎であるにもかかわらずまるで海外の空港のような空間。京都はお寺や自然豊かな場所など魅力的な場所が多く、駅に着いたら真っ直ぐに目的地に向かってしまうことも多いが、まず玄関口である京都駅を堪能することからスタートするのもおすすめだ。
中國菜 大鵬
ナチュールワインと中華
嵯峨野線に乗って10分ほどでJR二条駅に到着。駅から徒歩5分ほどで1軒目のお店である「中國菜 大鵬」に到着。赤と黄色の力強い看板に期待が高まる。
中華はもちろん、ナチュールワインや紹興酒も楽しめる大鵬。さっと定食を食べて帰る人もいれば、飲みながらゆっくりと食事をする人もいる。
店内の黒板にはおすすめのメニューが書いてあり、お昼時でもたくさんの選択肢があるのはうれしい。また、旬の食材を使っていることから頻繁にメニューが変わるそうで、旅先での一期一会的な出会いも楽しめる。
ナチュールワインとは、化学肥料や農薬を使わずに、できるだけ自然な製法で造られたワインのこと。グラス1杯からでも注文が可能で、中華好きのみならず、ワイン好きにもたまらない。
今回は、イタリア、カンパーニャ地方のワイン「Cantina Giardino(カンティーナ・ジャルディーノ)のT’ara ra’(タラ・ラ)」をグラスで注文した。ちなみに、カンティーナ・ジャルディーノは生産者、タラ・ラはワインの名称。
中華1品目は小籠包を注文。肉汁がたっぷりで一口で食べるにはもったいないくらい。細切りの生姜と黒酢だれを合わせていただく。
2品目は琵琶スズキの醤油蒸し。お魚の上にはパプリカや青ネギなどの薬味がたっぷりとのっている。弾力のあるぷりぷりの身と一緒に食べると一口で色々な食感が楽しめる。中国醤油の良い香りで白米が食べたくなったが、ほかにも食べたいものがたくさんあるので我慢した。
3品目はスペアリブの豆豉(とうち)蒸し。一口サイズにカットしてあるので食べやすい。豆豉が良いアクセントとなりワインがすすむ。豆豉とは、黒豆に塩や麹、酵母などを加え発酵させてつくる調味料のこと。
最後は、来ると必ず注文するほど大好きな、こちらのスープ。メニュー名は「本日の体内浄化スープ」。20種以上の野菜の皮、ヘタ、種でとった栄養価の高いスープで内臓が温まる。その日によって入っている野菜の種類が違うため、毎回違った味が楽しめるのも魅力だ。
二日酔いにも最適なので、もし前日に飲み過ぎてしまった時は、ぜひこのスープを飲んでほしい。そしてまたワインを飲んでほしい。無限にループできると思います。
鴨川
鴨川で寄り道
夕食は祇園の方へ移動。二条駅から京都市営地下鉄東西線に乗ること約10分、三条京阪駅へ。駅から徒歩5分ほどでお目当ての店、「広東御料理 竹香」に到着するが、その前に少し寄り道を。
京都の街を代表する河川である鴨川。全長約23キロメートルの川沿いは、広い範囲に歩道が整備されている。繁華街に近く、人の行き来が多い三条大橋はショッピングのついでに訪れる人も多い。4月になると川沿いの桜の木が一斉に花を咲かせるので、河川敷でお花見をする人も。
この日は天気も良かったので、河川敷に降りて川の音を聞きながら少し散歩。お昼からワインをいただいていたので、良い酔い覚ましと腹ごなしになった。
広東御料理 竹香
みたらしのような肉だんご
鴨川をあとにして、いよいよ「広東御料理 竹香」へ。お店は、江戸末期から明治初期にかけて建てられた建物が多く立ち並ぶ新橋通りという通り沿いにある。
奥行きのある店内は格子の間仕切りを境にテーブル席と小上がり席に分かれていて、2階にも席がある。
1品目は、やき豚を注文。しっとり柔らかくて外側にしっかり味がついている。ほんのり甘いなかに胡椒がピリッと効いていて箸がすすむ。
2品目にいただいたのはレタス包。メニューには「レタス包」とだけ書いてあるので頼むまでどんな料理なのか、どんなものを包むのかがわからないことも魅力だ。
出てきたのは、ひき肉や素揚げした松の実、細かくカットされた人参やたけのこ、椎茸やピーマンなどの野菜を合わせた甘みのある餡。水々しいレタスとコクのある餡の相性がとても良い。海鮮醤という甘みのある味噌を添えるとさらにしっかりとした味になる。
3品目は、肉だんご甘酢を注文。こちらは竹香に来ると必ず頼むメニューだ。肉だんご自体、外がカリッとしていてシンプルな味付けでこの上なくおいしいのだが、注目していただきたいのが、肉だんごにかけられた甘酢あん。黄金色の甘酢が他にはないコクとまろやかさで独特の甘みを醸し出している。
私がバイブルとして愛読している姜尚美さんの著書『京都の中華』(幻冬舎文庫)で、竹香の女将である永田さんがこの餡をみたらしに例えていたが、まさにそうだと思う。添えられた生姜の酢漬けが良い箸休めになる。
1日目はこれにて終了。京都駅近くのホテルに向かう。
イーパンツァイ田中
上海の路地裏を思わせる中華料理店
2日目のランチは「イーパンツァイ田中」に伺った。ずっと伺ってみたかったが人気店でなかなか予約が取れず、今回が初訪問。
ホテルから京阪本線の七条駅まで歩き出町柳駅へ。駅から徒歩10分ほどでお店へと到着。お店に通じる路地がまるで上海の田舎のような雰囲気。店内に入る前から気持ちが高まる。
もともと「上海バンド」という中華料理店があった場所で、店内にはそのなごりもちらほら。カウンターが4席ほどとテーブルが2つ。今回はカウンター席に。
お通しはピーカンナッツの飴だき。このナッツをつまみながらカウンターで料理を待つ時間が、上海を一人で旅行した時のことを思い出させた。
1品目は、前菜の盛り合わせ。烏龍茶でスモークした帆立など8種類が盛り合わせられている。
それぞれに工夫が凝らされていて、何から食べるか迷ってしまう。特においしかったのはポンカンに腐乳のソースがかかったもの(白い器に入っているもの)。ポンカンのフレッシュさと腐乳のまろやかさをマッチさせた、食べたことのない味わいに驚いた。
2品目は焼売3種。ピンク色のものから時計回りに、牛肉とトマトモッツァレラチーズともち米の焼売、海鮮のピリ辛焼売、玉ねぎと豚トロの焼売と、聞いたことのない組み合わせばかり。
せいろにはオリジナルロゴの焼印が。オリジナルの焼印を押しているせいろはあまり見たことがない。店主さんのナイスアイデア。
3品目はカダイフという揚げ物のお料理。料理名にもなっているカダイフは、トルコやギリシャを起源とする、主に小麦粉と水から作る麺状の生地のことを指す。ここでは鱧(はも)と海老のすり身にカダイフをまとわせて揚げ、マヨネーズソースと一緒にいただくスタイル。外側は軽いが、中はぎっしりと詰まっていて食べ応えがある。
最後にいただいたのは塩漬け卵と鶏肉のおこわ。この六花形のせいろに入るとなんでも愛おしく思えてしまう。蓮の葉で包まれたおこわは、心地よい香りをまとっていてシメに最適。デザートまでたどりつきたかったが、お腹がいっぱいになってしまったので、今回は泣く泣く断念した。(次回は必ず……!)
一般的には和食のイメージが強い京都だが、旅行の際はぜひ京中華も候補に入れていただき、この街でしか味わえない中華料理を楽しんでもらいたい。
東京駅
掲載情報は2023年4月18日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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