バンコクの夜、ネオンの光から浮かび上がるモンスター。アオフ・スミス日本初個展 “HERITAGE”
メグミオギタギャラリーでは、アオフ・スミスの日本初個展 “HERITAGE” を開催。スミスはタイ、バンコクを拠点に活動し、コレクターやアーティストの間で幅広く支持を集めている。作品の下敷きとなっているアメリカのポップシュルレアリスムやローブローアートは、彼のテーマと表現の新和性を高め、夢の中の世界を称賛している。また、独自のスタイルを確立した彼の色彩感覚は、鮮やかで味わい深い視覚効果をもたらし、作品に登場するキャラクターの存在を際立たせている。
スミスの作品の中では、マンガやアニメ、 サイエンス・フィクション、メカが一体となり、おどけた動物、ロボット、怪獣などがコンピュータグラフィックスさながらの立体感で描かれている。バンコクの夜、怪しく催眠的なネオンの光から浮かび上がる、ずんぐりとした体型のキャラクターは、20世紀以降目まぐるしく変化してきた、視覚表現を貪欲に吸収して生み出されたモンスター。
刺激的な表現が特徴のスミス作品には、私たちを惹きつけるメッセージが秘められている。例えば、ペットが人間の行動を戒めるような描写は、表面的な社会批判の域を超え、普段とは異なる世界の見方を提示し、鑑賞者に考察を促すきっかけを与えている。純粋無垢な動物と、その愛おしさ故に選択的に特定の種を繁殖させ、結果的に動物を苦しめている人間、良心と罪悪感がせめぎ合う現代の矛盾と混沌、ファンタジーに夢中になることで見過ごされてしまう日常の残酷さ…その一つ一つに対して行動を取る生き物たちの姿が、悲哀や忍耐、ユーモアを込めた並行世界の中に描かれている。
今展にてスミスは、新作絵画を中心に約14点を展示。洞窟壁画から3DCGまで、一通りの平面表現を経験してきた私たちは、時空を越えた想像上のキャラクターをありありとキャンバスに描く、彼の重層的な作品に何を見出すのだろうか。過去から現在、そして未来へ、不確かな現実と奇妙に交錯する、スミスの世界を体験して欲しい。
過去から現代に受け継がれてきた遺産、時にそれは暴力の残余であり、新たな始まりです。 物が意味を持たなくなった日に、人間が起こした戦争は終わりました。時を旅する者にとって、物質には価値がありません。そこではふわふわのウサギの耳を持つ、ファーリーという名の犬のような生き物が、新しい価値観を見つけて楽しんでいます。
– アオフ・スミス
アオフ・スミス “HERITAGE”
会期:2023年4月7日 – 4月28日
場所:メグミオギタギャラリー 東京都中央区銀座2-16-12銀座大塚ビルB1
時間:12:00 – 18:00 日・月・祝日 休廊
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ウェブサイト: http://www.neol.jp/
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