誹謗中傷の対応からインボイス制度まで、”オタ活”の強い味方「筋肉弁護士」が『オタク六法』で解説
みなさん”オタク活動”を楽しんでいますか? 推しのイラストを描いたり、コスプレをしたり、SNSを通じて推しにメッセージを送ったり、人によって”オタ活”のかたちはさまざまですが、インターネットの普及により活動の幅はずいぶんと広がりました。
ではみなさん、オタ活で一度も法に触れることをしていませんか?
この質問に多くの人が「ちゃんとルールを守っています」「人に迷惑をかけることはしていません!」と堂々と答えられるでしょう。しかしその中にも知らず知らずのうちに法を犯している人がいるかもしれません……。
「法律は、『知らないから』で済むものではなく、知らないことで損をすることがほとんどです。特に、SNSが広く普及した昨今は、オタク活動をしている中で、誰しもが法的なトラブルの当事者になる機会が増えてきています」と注意喚起するのは、書籍『オタク六法』の著者・小林航太さんです。
小林さんは弁護士でありコスプレイヤーでもある人物で、同書では安心安全にオタ活を楽しむための知識とトラブルへの対処方法などをまとめています。また、小林さんはNHK『みんなで筋肉体操』出演者でもあり、「筋肉弁護士」とも呼ばれています。どんなコスプレをしているのか気になる方はぜひ検索してみてください。
ここでは、同書の「誹謗中傷」について書かれた章を一部紹介したいと思います。
「悪口を言ったり、言葉でいやがらせをしたりデマや嘘を触れ回ったりすることを一般に『誹謗中傷』と言いますが、『誹謗中傷』には法的な定義はありません。誹謗中傷が名誉毀損または侮辱にあたる場合、民事上・刑事上の責任を負うことになります」(同書より)
これをもとに、小林さんはひとつの事例をあげています。
「事例:動画投稿サイトに絵を投稿したら、Twitterでスクショつきで『見てこのヘタクソ』『描くのやめろ』『能ナシ発見』などと書かれました」(同書より)
これはイラストのみならず、写真や動画などの投稿に対しても起こりそうなことですね。小林さんは以下のように答えています。
「まず、イラストのスクリーンショットを投稿する行為は、複製権・公衆送信権の侵害にあたります。スクリーンショットがイラストの一部を切り取るものであれば、同一性保持権の侵害にもなるでしょう。
あとは、投稿の具体的な文言が問題になります。『ヘタクソ』といったイラストに対する評価については、意見・論評を逸脱した人格攻撃に及んでいないかが問題になりますし、イラストへの評価を離れた人格攻撃については、作者に対する社会通念上許容される限度を超えた名誉感情侵害にあたるかを検討することになります」(同書より)
このように「誹謗中傷」と言っても問題点はさまざまです。SNSを見ていると強く鋭い言葉を目にする機会も多く、その中で感覚が鈍って「このくらい大丈夫だろう」と思ってしまう人も少なくありません。しかし反射的にリプライするのではなく、投稿前に「自分の大切な人(推し)にも同じ言い回しで伝えられるか」を考えることが大切です。また、VTuberへの誹謗中傷も「バーチャルに向けた言葉だからOK」ではなく、もちろん「”中の人”への誹謗中傷」として問題になります。
同書はほかにも、海賊版やファスト動画、AIの描いた作品の著作権、貸し借りに関するトラブルなど、世間を賑わす出来事から個人間でのトラブル、さらには個人事業主の大きな関心事である確定申告やインボイス制度まで、趣味だけでなく仕事にも使える知識が詰め込まれています。メインは”オタ活上のトラブル”になっていますが、SNSを利用する人やトラブルを避けたい人など、多くの人にとってためになる内容なので、いざというときのために手元に置いておいてはいかがでしょうか。
[文・春夏冬つかさ]
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