加賀・山中温泉の旅。紅葉の鶴仙渓に芭蕉ゆかりの「菊の湯」へ
こんにちは。石川県の加賀温泉郷には、雅で華やかな印象を持っている温泉ライターの泉よしかです!
今回は鶴仙渓(かくせんけい)の美しい紅葉と、松尾芭蕉も愛した温泉を求めて加賀温泉郷の山中温泉へ、1泊2日でお出かけしてきました。
東京駅
雨の東京を出発
紅葉の映える陽射しと青空を期待しつつ、雨の東京を出発します。
JR東京駅から北陸新幹線「かがやき」で、JR金沢駅に向かいます。長いトンネルをいくつも抜けて日本海側へ出ると、期待通りに太陽が!
金沢駅からはJR米原駅行きの特急「しらさぎ」に乗り換えて30分ほどでJR加賀温泉駅です。
加賀温泉駅
旅館の送迎バスに乗り換えて
加賀温泉駅の構内は工事中でしたが、2024年春にはJR敦賀駅まで延伸予定の北陸新幹線がこの駅に停まるようになるんですね。そうしたら東京から加賀温泉郷がますます身近になりそう! 今から楽しみです。
加賀温泉駅には、本日泊まるお宿「吉祥やまなか」の送迎バス(事前予約制)が迎えに来てくれます。とても楽ちんでうれしい。
吉祥やまなか
おもてなしが豪華すぎるお宿
送迎バスで約25分。吉祥やまなかに到着しました。
こちらのお宿、追加料金なしの「おもてなし」が豊富すぎるんです。まずは、到着後に楽しめるのが「加賀パンケーキのアフタヌーンティー」。
焼きたてのパンケーキは上品な甘さにふわっふわのくちどけ。
さらに「色浴衣&帯レンタル」や「貸切温泉」(当日の先着予約制)、湯上り後のドリンク、山中温泉に伝わる伝統芸能の鑑賞と、とにかく至れり尽くせりなのです。(※)
もうどれから楽しもうか迷っちゃうほどです!
※編集部注:おもてなしの内容について、詳しくはこちら
渓流側のお部屋だったので窓からの眺めも良し。お部屋にはアロマポットが備え付けてありました。早速アロマオイルを垂らしてスイッチオン! あー、いい香り。
山中座広場(菊の湯/山中座)
風格ある建物の菊の湯と山中座
お宿で焼きたての加賀パンケーキをいただいた後は、さっそく温泉街へ。山中温泉の中心地である山中座広場までは徒歩10分ほど。この広場には山中温泉の総湯(中心となる共同浴場)である「菊の湯」、温泉街の観光拠点「山中座」、そして足湯の「笠の露」があります。
菊の湯がちょっと変わっているのは、男湯と女湯がまったく別々の建物なこと。また女湯は山中座の建物と中でつながっています。
かつて俳人・松尾芭蕉が山中温泉に滞在した際に、「山中や菊は手折らじ湯の匂い」と詠んだことが菊の湯の名の由来。長寿の象徴である菊の香りがいらないほどの湯の香りだと言っているわけですから、よほど山中温泉に感激したのでしょう。
ちなみに取材時(2022年11月)は、男湯は外壁工事中でしたが、お風呂は通常通り営業していました。
菊の湯も山中座も唐破風(※)が優雅な風格のある建築。そして山中座の館内がまたすごいんです。太い柱は漆塗り、見上げれば祭りの賑わいが蒔絵で描かれた山中漆器の格天井、つながっている菊の湯の女湯側の格天井にはこれまた優美な菊の花模様。ため息が出ちゃいます。
※編集部注:唐破風(からはふ)は、城や寺社に多く見られる装飾性の高い屋根の造形
さらに、山中座に来た目的の1つはアイス!
実は石川県は1世帯あたりのアイスの年間消費量が全国トップクラス。温泉街にある「山中温泉アイスストリート」では、49種類もの個性的なアイスが食べられます。冷たいアイスと温泉が楽しめる温泉街なのです。
山中座でも、なんと源泉を使った「菊の湯アイスキャンディー」が手に入ります。菊の花の形がかわいい! 甘さ控えめでシャリシャリした歯触りがくせになりそう。
笠の露
別れの句に由来する足湯・笠の露
山中座広場にある足湯・笠の露も芭蕉の句が名の由来です。
山中温泉は「奥の細道」で芭蕉が旅を共にした弟子・河合曾良と別れた地で、別れを惜しんで詠んだ句が「今日よりや書付消さん笠の露」。書付とは笠に書かれた「同行二人」の文字のこと。寂しさがひしひしと伝わってきます。
しんみりとしつつも足湯はあったかい。そしてこの足湯の湯口からは飲泉もできます。
足湯の柱には「マイコップを持参ください」という張り紙が……。手ですくうにはちょっと熱い。そうだ、さっき飲み終えたお茶のペットボトルがあったはず!
じゃじゃーん。ペットボトルに汲んで飲んでみました。ほんのり、ゆで卵の香りがしてなかなか美味しいです。
吉祥やまなか
渓流沿いの露天風呂を満喫!
徒歩10分ほどでお宿に戻り、ゆっくりお風呂で体を温めます。やっぱり旅は温泉だよね!
無色透明のすっきりとしたお湯はとても手触りがよく、何度も肌を滑らせたくなっちゃいます。泉質は保湿効果が期待できる硫酸塩泉なので、乾燥しがちな肌に水分を運んでくれて、お風呂から上がった後にしっとりすべすべになったことが実感できました。
渓流に面した素敵な露天風呂もあります。
湯上りには、おもてなしのカクテルも楽しませていただきました。
吉祥やまなか
夕食は加賀や能登の美食が勢ぞろい
さて、能登半島や若狭湾から近い山中温泉なので、夕食にはズワイ蟹、のどぐろといった日本海の新鮮な海の幸を期待しちゃいます。
八寸は彩りも美しく、金時草のおひたし、五郎島金時の蜜煮と加賀野菜がふんだんに使われています。鱧(はも)の南蛮漬けはプリっとした歯ごたえ。
能登半島の先端に位置する珠洲産の塩で焼いた「のどぐろ」は、身がふっくら!
黒毛和牛しゃぶしゃぶはお肉が品よく折りたたまれていましたが、広げると1枚が大きい。お肉の脂を吸った白菜の芯がまた美味。
ズワイ蟹、海老、加賀野菜の天婦羅です。季節の食材を揚げた天婦羅は、好きなだけ追加注文(無料)ができます。
〆は贅沢なズワイ蟹ご飯と赤出汁。幸せ気分でお腹もいっぱいです。
吉祥やまなか
伝統芸能の山中節を鑑賞。お休み前のプリンも
夕食後は、山中節の公演「山中節の夕べ」を鑑賞します。山中節とは日本三大民謡のひとつで、日本海を往来していた北前船(※)の船頭が北海道で習い覚えた歌を真似たのが、山中温泉のお座敷歌として広まっていったと伝わります。
※編集部注:江戸時代中期から明治時代にかけて、大阪と北海道を往復して利益をあげる商船の総称
吉祥やまなかでは、山中温泉の伝統芸能を守り伝えていきたいという思いから、毎日欠かさず公演を続けているのだそうですよ。
鑑賞後はロビーラウンジで、おもてなしの1つ「お休み前のスイーツ」で、KAGAプリンをいただきました。加賀市にある平松牧場の原料を使ったプリンで甘いひと時。うれしい!
吉祥やまなか
貸切露天風呂と豪華な朝食でうっとり
貸切露天風呂からおはようございます! 大浴場も素敵なのですが、新鮮なお湯を独占してのんびり入れる貸切は贅沢極まりない。
驚いたのが朝食のデザート。九谷焼の器の模様に合わせて、カスピ海ヨーグルトにもジャムとドライフルーツで描かれたヒマワリが! かわいい!
鶴仙渓
散策のスタートは黒谷橋と芭蕉堂から
朝食後はさっそく紅葉の名所「鶴仙渓」へ。鶴仙渓は、温泉街の東側を温泉街に沿って流れる大聖寺川の渓谷で、約1キロにわたって遊歩道が整備されています。
今回は、吉祥やまなかから徒歩5分ほどの黒谷橋から散策をスタートします。
黒谷橋のたもとにある、松尾芭蕉を祀った「芭蕉堂」。木々に囲まれて静かな雰囲気です。
鶴仙渓の遊歩道は石段もありますが、高低差はあまりなく、私はゆっくりと写真を撮りながら50分ほどかけて歩きました。
遊歩道のほぼ中間地点にある「あやとりはし」は必見です。いけばな草月流家元 勅使河原宏氏がデザインした独創的な形の橋で、本当にあやとりみたい。
S字カーブを描く橋の上から渓流を見下ろすこともできます。
鶴仙渓は川に向かって張り出した紅葉の枝が美しい。どこにカメラを向けても絵になります。夢中で歩いていると、遊歩道の終点まであっという間です。
終点は総檜造りの「こおろぎ橋」。この橋の周辺も赤く色づいた紅葉が多くとても華やかでした。ここで記念撮影をしている人もたくさんいました。
こおろぎ橋からは、徒歩3分ほどのお宿「かがり吉祥亭」へ。吉祥やまなかとは系列旅館なので、フロントでお願いすれば吉祥やまなかまで送迎(無料)してもらえます。吉祥やまなかでチェックアウトを済ませて、予約しておいた午後の便の送迎バスで加賀温泉駅へ。
加賀温泉駅
山中温泉の旅の終わりに
加賀温泉駅から金沢駅経由で東京に戻ります。
山中温泉への列車旅は快適にアクセスでき、お宿と温泉街、そして美しい自然をゆったりと楽しめました。特に印象に残ったのは、温泉街のすぐ隣に紅葉の美しい渓谷があって気軽に遊歩道が歩けることです。この景色と美肌の温泉がセットで楽しめるのですから、山中温泉は最高です! 帰路の新幹線では楽しかった思い出を反芻しつつ、眠りにつきたいと思います。
東京駅
掲載情報は2023年1月19日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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