マツコと中村うさぎが見いだした「人生」とは? 「結果を出さない努力でもいいじゃない」
人間、「四十にして惑わず」などと言いますが、歳を重ねても私たちはやっかいなことに心惑わされてばかり。どうすれば心穏やかに、幸せに過ごせるのだろうか――。
そんな方に読んでみてほしいのが、今回ご紹介する『幸福幻想 うさぎとマツコの人生相談』です。同書は、コラムニストの枠を超え、今では国民的タレントとなったマツコ・デラックスさんと、買い物依存症や整形、ホスト沼といった実体験にまつわるエッセイで注目を集めてきた中村うさぎさんによる対談集。週刊誌『サンデー毎日』での連載を書籍化したものです。
欲望、恋愛、家族、人間関係……ふたりのもとに寄せられる、ありとあらゆる人生相談。「彼が結婚に踏み切ってくれない」「整形してもかわいくなれない」「母から罵られた呪縛から逃れられない」「毒舌で周囲との関係が悪化」などなど悩みの種類は多種多様ですが、突き詰めるならば、それらはすべて「幸せになりたい」という思いにつながるかもしれません。
面白いことに、同書のお悩みには相反するものも見られます。「48歳、独身子ナシ、他人が幸せに見える」という人がいる一方で、「子ナシ夫婦や独身者に嫉妬してしまう」という人がいたり、「学歴コンプレックスから逃れられない」という人がいる一方で、「学歴も仕事も人がうらやむ人生だけど達成感がない」という人がいたり。今とは逆の人生を歩んだとしても、必ず幸せになれるとも限らないようです。
マツコさんいわく、「結局、何かを手にしても、それで幸せになれるとは限らない。一つの魔窟を抜け出しても、別の魔窟が待っているのよね」(同書より)とのこと。「人生なんて、目の前のことを日々着実にやって、人様にご迷惑をかけないようにするだけで充分なのよ」(同書より)という言葉には、ハッとさせられる人も多いのではないでしょうか。まさにこれはタイトルにある「幸福幻想」そのもの。どんな場所に行っても100パーセント満足することはないのであれば、私たちは無理に幸せを追い求めなくてもよいのかもしれません。
「生きているからには何者かにならなきゃ、何かを成し遂げなきゃ、周囲から認められなきゃ、何かを残さなきゃ……とか思ってると、どんどん生きるのがつらくなるよ」(同書より)と言うのは、うさぎさん。「成功と努力はセットになってるけど、結果を出さない努力でもいいじゃない」(同書より)と、結果にとらわれない生き方もありだと話します。
いわゆる王道ではない人生を懸命に生きてきたマツコさんとうさぎさんだからこそ、同書にはきれいごとでは片付けられない人生の本音が満載。さまざまなお悩みと、それに対するふたりの回答は、幸せとは何かを改めて考えるきっかけになるのではないでしょうか。
[文・鷺ノ宮やよい]
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