比嘉愛未、夢破れ挫折した主人公に共感「明日香の成長していく姿に自分の想いも重ねながら演じていました」 主演映画『吟ずる者たち』

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人気俳優の比嘉愛未さんが、現在公開中の映画『吟ずる者たち』で主演を務めました。日本酒造りが盛んな町、広島を舞台に、比嘉さん演じる主人公の永峰明日香が、挫折を経て酒造りに触れることで、生きる輝きを取り戻していく物語です。日本の伝統文化を丁寧に伝えながら、ひとりの女性の再生ドラマでもある本作は、主演の比嘉さんも心動くことが多かったそうです。ご本人にお話をうかがいました。

■公式サイト:https://ginzuru.com/ [リンク]

●昨年公開の『大綱引きの恋』と物語は異なりますが、本作も日本の伝統などが題材になっている素敵な作品でした。

日本文化を伝える作品ですよね。わたしは、そういう作品に引き寄せられる人間なのかも知れません(笑)。20歳の頃から朝ドラで旅館のおかみさんを演じたり、時代劇も多かったので、和のものにご縁を感じています。

特に今回、明治時代のパートは本当に初見だったので、台本上で想像するものと、実際に具現化した映像は違ったので、それはとても新鮮でした。明治と現代が交差していく感覚も自然で、また新たな作品に挑戦できたと思っています。

●明治時代のパートは、中村俊輔さん演じる三浦仙三郎の物語でした。

現代と明治に分かれていて、撮影自体はまったくかぶらなかったので、仙三郎を演じる中村さんとも撮影現場では一度しかご一緒しなかったんです。初号を見せていただいた時、自分が参加した作品なのですが、明治のパートはどこか自分が知らない世界観と言いますか、いち視聴者としてのめり込んで観られました。それは新たな刺激、経験でした。時代ものは撮影にいろいろな制限があるものだと思うので、深みが増したように感じました。映画の世界観がより深まったような気がしました。

●東京で夢破れ、故郷広島へ戻って来る永峰明日香というキャラクターは、どのように作り上げたのでしょうか?

彼女は東京から出戻って来て、自分の中では感情的に一番落ちているところからのスタートなんです。彼女なりに自分の人生の道筋を見つけていく過程を、みんなで丁寧に話し合いながら慎重に撮っていけたと思います。自分だけの台本の印象に縛られたくないと思いながら撮影に参加したので、それこそ柔軟にその場に立った時の感覚も大事にしながら、大事に少しずつ丁寧に撮って行った思い出があります。

●酒蔵も登場しますが、実際に見た感想はいかがでしょうか?

広島にはお仕事で何度か行ったことはあるのですが、あのような酒蔵には初めて行きました。いい意味で時が止まっているような、ここは現代なのかなと思うほど、そのまま酒蔵の良さが残っているんです。まるでタイムスリップしたような感覚で、とても居心地がよかったです。とても圧倒されました。どこか懐かしい風景は、日本の中にいろいろあると思いますが、日本に留まらず世界に知ってもらいたいと思いました。

●お酒造りは、どの程度練習したのですか?

酒造りはゼロからすべての工程をやらせていただいたのですが、日本酒をよりありがたくいただけるようになりました(笑)。それくらい手間暇かけてみなさんが作っていることを体験できたので、その良さを改めて感じることができました。

●広島での撮影は、どのような雰囲気で進みましたか?

今回、油谷誠至監督のチームにまた参加することになり、わたしが以前参加した『飛べ!ダコタ』のチームと、ほぼみなさん一緒でした。わたしが生まれる前から日本映画を作っていた方たちばかりで、そのみなさんとまた主演という立場でご一緒させていただけるということで、毎日が本当に贅沢な時間でした。その幸せを噛みしめながら撮影していましたし、わたしは明日香という役に没頭することができました。

●改めて、この作品から受け取ったものがあるとすれば、それは何でしょうか?

日本には独特のお酒造りの文化があり、日本酒って日本だけのものなんですよね。そのゼロからの工程をわたしの年代で知っている方がどれだけいるだろうと思ったんですよね。純米・吟醸の名前の差など、なぜ違うのかとか、その手間暇かけたことによって旨味が変わったり、作る人の情熱でも変わってくるということ。わたしは撮影での疑似体験ですけれど、麹菌なので思うようにいかないこともあるという、そういうことも学びました。難があって有難いのだと、そういうことを改めて意識しました。

●また、明日香という女性を演じて気づいたことはありますか?

彼女とは世代が近いので、人生このままでいいのかなと思うことは、わたし自身もなくはないんです。今ありがたいことに自分が好きな仕事ができていて、夢を追いかけて来て今だにお仕事をいただけることも感謝なのですが、このままこの先どうなっていくのか、自分はどう進化していけばいいのか。世間的にも他人と比べるじゃないけれど、そういうことを目の当たりにすると、ふとわたしってこのままでいいのかなと思うんですよね。明日香もきっと同じで、挫折していろいろなことがあり、地元に帰って1回ゼロに戻るんですよね。そういうところはとても共感しました。

●ひとりの女性のリスタートの物語として観た時に、非常に共感を呼びそうだなと思いました。

でも、わたしが言っているのはネガティブなことではなくて、自分は何が好きで、何が好きじゃないかということは、その都度自分で確認していかないと、ただただ、流されていく、見失いがちだということなんですよね。明日香もそういう意味で言うと極端なのですが、地元に戻ったがために、自分のやりたかったことの原点に戻れたんです。わたしも心の中で整理する作業など共感できるところが多かったので、明日香の成長していく姿、進んで行く姿は、自分の想いも重ねながら演じていました。

■ストーリー

永峰明日香は東京で夢破れ、故郷広島へ。実家は三浦仙三郎の杜氏の末裔が継いだ酒蔵。養女である明日香は、幼き頃から酒造りに興味を持っていたものの、実家を継ぐことは、そぐわないと避けて生きてきた。目標を見失っていた明日香は父・亮治が「家宝」とする三浦仙三郎の手記を目にする━━。

撮影:オサダコウジ

全国順次公開中

出演:比嘉愛未、中村俊介ほか
監督:油谷誠至
配給:ヴァンブック
(C) 2021ヴァンブック

(執筆者: ときたたかし)

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