枯らした観葉植物の駆け込み寺!? 唯一無二の姿に再生&販売するリボーンプランツ店「REN」に行ってみた

access_time create folder生活・趣味
枯れた観葉植物を再生!? リボーンプランツ店「REN」がおもしろい

コロナ禍で在宅時間が増え、自然の癒やしを求めてインテリアに観葉植物を取り入れた方も多かったのではないでしょうか。一方で、育て始めたけど枯らしてしまったという人も少なくないかもしれません。素人からみて、枯れていると思う植物でも、プロが見ると、一部再生できる場合があります。枯れてしまった観葉植物を捨てるよりケアして次の人の元へ。そんな素敵な取り組みを紹介します。

枯らした観葉植物に捨てる以外の選択肢。再生して再販するサービス

インテリアショップや雑貨店で気に入った観葉植物を育ててみたけれど、何だか元気がない、いつの間にか枯れてしまった……そんな経験はないでしょうか。罪悪感がありつつも、どうしたらよいかわからず捨ててしまうことも多いでしょう。

「枯れたので捨てる」という悲しい最後ではなく、プロによる正しいケアで再生を目指し、再販して新たに望んでいる人の元へ届けるサービスを展開しているのが、観葉植物専門店RENです。

地上4階建て築55年の東京生花本社ビルをフルリノベし、元々別の場所にあった観葉植物専門店RENの店舗として2021年8月にリニューアルオープンした(写真撮影/相馬ミナ)

地上4階建て築55年の東京生花本社ビルをフルリノベし、元々別の場所にあった観葉植物専門店RENの店舗として2021年8月にリニューアルオープンした(写真撮影/相馬ミナ)

1階には再生観葉植物「リボーンプランツ」、手間をかけて仕立てた一点ものの「スペシャリティプランツ」が販売されている(写真撮影/相馬ミナ)

1階には再生観葉植物「リボーンプランツ」、手間をかけて仕立てた一点ものの「スペシャリティプランツ」が販売されている(写真撮影/相馬ミナ)

観葉植物専門店として2005年に創業したRENでは、2020年8月より「観葉植物の下取りサービス」を開始。下取りから再生まで一貫して対応し、再生した植物を新たに再販する観葉植物の二次流通を実践するサービスは、業界初の試みです。

店舗は、白金高輪駅や三田駅などから徒歩10分、桜田通りから脇の道へ入ったところにあるレンガ造りの建物で、中に入ると、ほかでは見ないような独特な枝ぶりの個性的な観葉植物がいっぱい。育てられなかった人から下取りし、プロによる適切なケアで再生された「リボーンプランツ」です。流木のように立ち枯れた枝から芽吹いた葉が美しいシェフレラ、土を洗い、幹の途中から出る気根を活かしたガジュマル。吊り棚状のモジュールで浮遊して展示されている観葉植物はどれも生き生きとしています。

腐っていた樹皮をそぎ落とすことで、新しい枝や葉が芽吹いた (写真撮影/相馬ミナ)

腐っていた樹皮をそぎ落とすことで、新しい枝や葉が芽吹いた (写真撮影/相馬ミナ)

真ん中は、茂りすぎた葉を剪定して枝ぶりを活かしたフィカス・ベンガレンシス。両側は人気のガジュマル。土にうまっていた根を表出し、荒々しい自然の趣が出た(写真撮影/相馬ミナ)

真ん中は、茂りすぎた葉を剪定して枝ぶりを活かしたフィカス・ベンガレンシス。両側は人気のガジュマル。土にうまっていた根を表出し、荒々しい自然の趣が出た(写真撮影/相馬ミナ)

立ち枯れてしまったシェフレラの幹は、流木のような味わいがあるので活かし、生きている幹からは葉が新生した。生と死をイメージして仕立てたという(写真撮影/相馬ミナ)

立ち枯れてしまったシェフレラの幹は、流木のような味わいがあるので活かし、生きている幹からは葉が新生した。生と死をイメージして仕立てたという(写真撮影/相馬ミナ)

RENマネージャーの山田聖貴さんに企画の背景や反響を伺いました。

「人が理解できない生物を探求したい」という思いから植物業界に入った山田さん。「まだ答えは出ないけれど、植物のケアを通じて私の知見や気持ちを後の人に受け継いでもらえたらうれしいですね」(写真撮影/相馬ミナ)

「人が理解できない生物を探求したい」という思いから植物業界に入った山田さん。「まだ答えは出ないけれど、植物のケアを通じて私の知見や気持ちを後の人に受け継いでもらえたらうれしいですね」(写真撮影/相馬ミナ)

「いま、コロナ禍の『おうち時間の充実』として、観葉植物を取り入れたいという需要が増加傾向にあります。そのなかで、お客様より『弱ってしまったり、枯れてしまったりしたらどうしたらいいか?』という声が増えてきました。最近はフラワーロスなど花にまつわる課題にはスポットが当たっていますが、観葉植物についてはケアをするという概念がありませんでした。RENの母体は、創業1919年のいけばな花材専門店東京生花です。社是である『活ける』を花だけでなく、植物全体に広くとらえ直したときに、物として販売するだけでなく、生きている植物をケアすることは、SDGs観点からもこれから重要になると考えました。そこで、観葉植物についての相談や植え替え、下取り、再生まで行う『プランツケア』のサービスが生まれたのです」(山田さん)

サービスの利用は、電話やコミュニケーションアプリによるオンライン無料相談・診断の後、必要に応じて、「植え替えサービス」「出張プランツケア」「下取りサービス」が選べます。例えば、「植え替えサービス」は、植物3号1050円+植え替え料1300円で総額2350円(税別)。都内の一部エリアを対象にした「出張プランツケア」は、観葉植物の疑問や困りごとについて専門知識のあるプランツケアマイスターが自宅やオフィスに出張し解決するサービスです。剪定や病害虫駆除を行い、料金は15000円(税別)です。

観葉植物の二次流通となる「下取りサービス」は、うまく育てられなかったり、引っ越しなどの事情で手放されたりした観葉植物を再販可能な個体に仕立て直してから店舗で販売する仕組み。枯れてしまったと思っても、実はプロの目で見れば再生可能な場合があるのです。下取り額分は、新たな植物を買い替えるときに割引されます。すべてのサービスは、他社で購入した鉢植えにも対応しています。さらに、定額制で年間ケアが受けられる植物のサブスクリプションサービス「プランツケアクラブ」(年間定額4680円)も開始しました。

「プレスリリースした当初は、植物をケアして長く付き合っていくというコンセプトが伝わらず、ほとんどリアクションがありませんでした。今まで、植物をケアするという概念がなかったのだから、仕方がないのかもしれません。展示会などで『リボーンプランツ』を実際に見てもらい、アピールを続けた結果、少しずつ認知されてきたと感じています。今では、月に約300件の相談があり、実際注文があったうち、植え替えサービスは100件、出張プランツケアは30件、下取りサービスは20件の利用です。今年のゴールデンウイークには、お店に行列ができるほどの反響があり、モンステラの大鉢を抱えた方が並んでいるのを見て、とてもうれしかったです」(山田さん)

店舗デザインは、国内外で活躍するデザイナーの「NOSIGNER(ノザイナー)」が担当。天井から吊り下げたモジュール什器で360度植物の表情を見てお気に入りを探せる(写真撮影/相馬ミナ)

店舗デザインは、国内外で活躍するデザイナーの「NOSIGNER(ノザイナー)が担当。天井から吊り下げたモジュール什器で360度植物の表情を見てお気に入りを探せる(写真撮影/相馬ミナ)

世界にひとつのリボーンプランツは、ヴィンテージのような味わいが人気

REN店舗内で開催された「サードウェーブプランツ展」(2020年1月)や「リボーンプランツ展-植物の持続可能性」(2020年9月)で、コンセプトとしてきたのは、「インテリアでもファッションでもない家族としての植物」です。

「観葉植物には何度かブームがありました。第1の波は、観葉植物が日本に普及し始めたころ、画一的で育てやすい品種。インテリアとして広く受け入れられて家具店やインテリアショップで販売されるようになり、定着したんです。第2の波は、約10年前の多肉植物や塊根植物など個性的な品種のブームでした。アパレルショップでも植物が販売され、ファッション感覚で楽しむ人が増えましたが、管理の難しさ・育成環境に課題があったのです。RENが提案するのは、育てやすい品種でありながら個性豊かな一点物の植物。育てやすく個性的な植物を、長く付き合っていける家族やパートナーとして、おうちに迎えてもらいたいです」(山田さん)

実際にリボーンプランツを目にして驚いたのは、長い年月を経て風格を増した盆栽のような味わいがあること。観葉植物は、流通コストがかからないようにまっすぐで画一的な形をしているものが多いのですが、リボーンプランツは枝が曲がったり、ねじれたりと、植物本来のたくましさ・生命力を感じます。

立ち枯れてしまったシェフレラの幹。盆栽では、幹や枝が朽ち、白骨化した枝をジン、幹をシャリといい珍重する。RENの観葉植物には、生け花や盆栽のノウハウが活かされている(写真撮影/相馬ミナ)

立ち枯れてしまったシェフレラの幹。盆栽では、幹や枝が朽ち、白骨化した枝をジン、幹をシャリといい珍重する。RENの観葉植物には、生け花や盆栽のノウハウが活かされている(写真撮影/相馬ミナ)

プランツケア前のガジュマル。枝が伸び放題で、葉も密に茂っている(画像提供/REN)

プランツケア前のガジュマル。枝が伸び放題で、葉も密に茂っている(画像提供/REN)

プランツケア後のガジュマル。枝葉が剪定されてすっきり。葉が重なると病害虫になりやすい。適度に隙き、幹や枝を見せる。どの枝を残すかはプロの経験が生きる(画像提供/REN)

プランツケア後のガジュマル。枝葉が剪定されてすっきり。葉が重なると病害虫になりやすい。適度に隙き、幹や枝を見せる。どの枝を残すかはプロの経験が生きる(画像提供/REN)

「植物はしゃべらないけれど、形は言葉のようなもの。プランツケアで心がけているのは、植物本来の姿をよりよく導くこと。下取りした観葉植物が形になるまでは、1年かかるのは普通で、3年、5年かけて美しく再生していきます。曲がった枝や経年変化した幹を見て、植物が発する声を聞いていただけたら」(山田さん)

ショップには、「リボーンプランツ」として再生された観葉植物たちが、これから新たに育ててくれる人との出会いを待っています。

「プランツケアラボ」はまるで手術室。プロの技術で再生して植物の命をつなぐ

ショップの奥には、観葉植物の剪定や植え替えを行うプランツケアサービスの拠点「プランツケアラボ」があり、ちょうど、植え替え作業をしていました。鉢がパンパンになるほど伸びていた古い根を丁寧にほぐしながら崩し、大きい器に植え替えます。オンライン相談では、「ちょっと調子が悪いので見てほしい」という問い合せが多いそうです。画像診断をすると、水のやりすぎによる根腐れや育ちすぎの状態がほとんど。根腐れの場合は植え替えを行い、育ちすぎた場合は、剪定し、鉢を大きくします。

「植物の根は内臓。土は腸内環境に似ています。いい土には、微生物が食べる有機物が必要です」と山田さん。空気を含む天然の有機培養土、鉱物由来珪酸液などを使い、植物のメンテナンスを行っています。

「プランツケアラボ」には、専門の道具が並ぶ。盆栽の道具や幹を削ぐための彫刻刀など様々な工具を使い分ける(写真撮影/相馬ミナ)

「プランツケアラボ」には、専門の道具が並ぶ。盆栽の道具や幹を削ぐための彫刻刀など様々な工具を使い分ける(写真撮影/相馬ミナ)

植え替えを行う東京生花代表取締役社長の川原伸晃さん。2011年に、植物店として史上初めてのグッドデザイン賞の受賞に導いた(写真撮影/相馬ミナ)

植え替えを行う東京生花代表取締役社長の川原伸晃さん。2011年に、植物店として史上初めてのグッドデザイン賞の受賞に導いた(写真撮影/相馬ミナ)

一般的な観葉植物でも、個性を生かして仕立てているので、他にはないオリジナルな一鉢になる(写真撮影/相馬ミナ)

一般的な観葉植物でも、個性を生かして仕立てているので、他にはないオリジナルな一鉢になる(写真撮影/相馬ミナ)

2階の「アウトドアプランツ」コーナーには、オリーブの鉢が並ぶ。流通しているものの多くはスペイン産のオリーブは、意外にも東京の気候に合う植物だという(写真撮影/相馬ミナ)

2階の「アウトドアプランツ」コーナーには、オリーブの鉢が並ぶ。流通しているものの多くはスペイン産のオリーブは、意外にも東京の気候に合う植物だという(写真撮影/相馬ミナ)

ショップを訪れた人のなかには、年配のご夫婦が30年育てた観葉植物を「私が引き継ぎます」と言って買い取った人、引っ越しのため手放さざるを得なかった大鉢の観葉植物をトラックで搬入した人もいるそうです。

「観葉植物をインテリアの一部ではなく、命のある植物として、家族として、大切に思う人やその思いを受け継ぎたい人が少しずつ増えてきています」(山田さん)

観葉植物を手放すしかなくても、再生されて、新しく望む人の手に届けられるのなら、気持ちよく送り出せそうです。枯れてしまった植物の命が再生・循環する仕組みは、社会と植物の持続可能な新しい関係創出につながっています。

●取材協力
観葉植物専門店REN

  1. HOME
  2. 生活・趣味
  3. 枯らした観葉植物の駆け込み寺!? 唯一無二の姿に再生&販売するリボーンプランツ店「REN」に行ってみた
access_time create folder生活・趣味

SUUMOジャーナル

~まだ見ぬ暮らしをみつけよう~。 SUUMOジャーナルは、住まい・暮らしに関する記事&ニュースサイトです。家を買う・借りる・リフォームに関する最新トレンドや、生活を快適にするコツ、調査・ランキング情報、住まい実例、これからの暮らしのヒントなどをお届けします。

ウェブサイト: http://suumo.jp/journal/

TwitterID: suumo_journal

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。