伝説のネット棋士の正体に迫る!

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マンガの世界が現実に展開されている。将棋はそんなに得意なわけではないけど、とてもワクワクしています。今回は罪山罰太郎さんのブログ『俺(おれ)の邪悪なメモ』からご寄稿いただきました。

伝説のネット棋士の正体に迫る!

『将棋倶楽部24』(http://www.shogidojo.com/)という、ネット将棋のサイトがある。2003年頃、この『24』にdcsyhi(デクシ*1)というハンドルネームの棋士が現れた。

このデクシはめっぽう強かった。ここでいう「強い」は、町の将棋道場で「強い」とかいうレベルじゃない。全国クラスのアマチュアでも歯が立たないくらいの「強い」だ。

それでも最初のウチは、みんな「ああ、またプロか奨励会員が入ってきたんだな」くらいに思っていた。『24』にはプロやその予備軍である奨励会員も多数登録している。『24』には棋力の目安としてレーティング(点数制)があるのだが、レーティング2300点以上の高段者は、プロか奨励会員、あるいは『ハチワンダイバー』のスガタみたいなプロになり損なったメチャクチャ強いアマチュアで占められている。

そんな高段者がまた一人増えた。みんなそう思っていた。

しかし、である。

デクシは強すぎたのだ。プロレベルのはずのレーティング2300点オーバーの舞台で、圧倒的に勝ちまくったのだ。しかも、その勝ち方も凄まじく、デクシはプロ棋士がおどろくような絶妙手を何回も見せてくれた。

にわかに、ざわつきはじめた。こいつ、何者だ?

『ヒカルの碁』というマンガに、謎のネット棋士SAIというのが現れるが、まさにあんな感じのことがネット将棋の世界で本当に起こっていたのだ。

やがてデクシは、レーティング3000点という前人未踏の記録を達成し、正体を明かさぬまま『24』から忽然と姿を消した。突然現れ、鮮烈な記録と記憶を残し、突然消えたデクシ。その存在は伝説と呼ばれるようになった*2。

だが、デクシは確かにいた。『ヒカルの碁』のSAIの正体は幽霊だが、デクシは人間だ、それは間違いない。2003年当時、まだコンピュータソフトはプロに勝つほど強くない。おそらく、デクシはプロ棋士。それも名人クラスのトッププロに違いない。

だれもが、頭の中に羽生善治の四文字を思い浮かべた。デクシほど圧倒的な存在はプロ棋界にも羽生しかいない。

また、デクシの強さは羽生の強さとよく似ていた。あらゆる戦型を指しこなし、プロでもおどろく「羽生マジック」と呼ばれる絶妙手。デクシと羽生のイメージは見事に重なる。しかし、確証はない。羽生自身も沈黙を守っているようで、情報は漏れてこない。

デクシ=羽生説を裏付ける方法はないだろうか?

実は、あった。そして当時それを実行した人もいるのだ。

人間は二つの場所に同時に存在することはできない。つまり、デクシが『24』で将棋をしているとき、どこかで別のことをしていた人間はデクシではない。

『24』のサーバーの整理で今はもう消えてしまったが、当時は検索すればデクシの対局記録を確認することができた。毎年発行される『将棋年鑑』や、専門誌の『将棋世界』『週刊将棋』、更には連盟のWebサイトなどで、プロ棋士のスケジュールはかなり確認できる。これらを付き合わせれば、デクシの正体に迫れる。

全棋士を調べるのは大変だけど、デクシの強さを考えれば、トッププロと若手の有望株以外は除外できるだろう。

絞り込んだ候補者から、デクシが『24』で対局していたときに、現実の世界で別のことをしていた棋士を消していく。すると……

見事に、羽生善治だけが残るというのだ!

デクシは羽生の対局やイベント出演の合間を縫うようにして『24』に現れていたのだ!

もちろん、除外した棋士や、アマチュアがデクシかも知れないから100%とはいえない。だれかが「私がデクシでした」と名乗り出るまで、厳密には真相は藪(やぶ)の中だ。

でも、ぼくは99%以上の確率で、デクシの正体は羽生善治だと思っている。

*1:この「デクシ」という読み方が正しいかどうかは分からないが、『24』の管理人氏がそう読んだため、それ以降、皆それにならっている
*2:ちなみにレーティング3000点という記録はその後破られるが、その圧倒的な勝ち方から今でもデクシ最強説は根強い

執筆: この記事は罪山罰太郎さんのブログ『俺(おれ)の邪悪なメモ』からより寄稿いただきました。
文責: ガジェット通信

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