オナラ爆弾で敵の仲間割れを誘う!? 仰天エピソードが豊富すぎる”ざんねんな兵器”
人類の発展とともに繰り返されてきた戦争。現在も世界のどこかで争いが起きており、人命を奪う危険な兵器が使用される恐れも……。長い歴史において、もはや人類と兵器開発は密接につながっていると言っても過言ではない。
もちろん危険な兵器など存在しないに越したことはないが、実は「真面目に考えて開発したの?」とつぶやきたくなるような兵器が存在していた事実もご存知だろうか。そんな”珍兵器”を集めたのが、世界兵器史研究会による著書『ざんねんな兵器図鑑』(KADOKAWA)。なぜ提案・採用されたのかわからない、珍兵器の”びっくりエピソード”の数々が紹介されている。
「ここに並べた”ざんねんな兵器”たちは、いずれも歴史に名前を残すことに失敗した、哀愁ただよう珍兵器たちです。
どうか、温かい目で彼らを見守ってやってください」(本書より)
それでは第1章「ざんねんな発射兵器」のトップバッターであり、1910年代にアメリカで発明された「ヘルメット銃」から見てみよう。兵器と聞けば複雑な外観をイメージしがちだが、ヘルメット銃はまさに読んで字の如く。ヘルメットから伸びるチューブに息を吹き込むと、ヘルメット上部に取りつけられた銃から弾丸が発射される兵器だ。目標に目を向ければそのまま銃の狙いが定まるメリットを持つ一方、発砲時の衝撃がダイレクトに首へ伝わる欠点を持つため実用化には至らなかった。
欠点さえなければヘルメット銃はムダな射撃動作を排した実用的な発明と思えるが、名前を聞いた段階で笑ってしまうのは、同じくアメリカの「オナラ爆弾」。
「戦争では互いの軍隊が戦って相手を倒すのが普通ですが、より賢い戦法として、戦う前から敵のやる気を奪い、戦わずして勝利するというやり方があります。そこで考えたのが、「敵の軍隊にオナラのにおいをばらまいて『誰がオナラした!?』と争わせる」ことを狙ったヘンテコ爆弾、通称”オナラ爆弾”です」(本書より)
理屈としてはわからなくもないが、結果的にただクサいだけで何の意味もなかったようだ。1990年代まで研究されていたそうだが、むしろ「1990年代まで研究が続いていたのか」とツッコまざるをえない。
日本の陸軍登戸研究所で研究されていた「怪力光線Z」も、ヘンテコな発射兵器のひとつ。B級SF作品に登場しそうな名前だが、その内容は”マイクロ波の照射”で目標を加熱・破壊してしまおうというのだから恐ろしい。電子レンジでチンする原理と同じで、数メートルの距離からなら目標の加熱に成功したとか。
続いては第2章「ざんねんな移動兵器」から、1940年代にイギリスが開発した「パンジャンドラム」。なにやらカッコよさげな名称だが、実は爆薬が詰められた円筒を巨大な車輪で挟んだだけの兵器。しかも車輪を前進させるために取りつけたロケットモーターにより、実験段階からポンコツぶりを発揮してしまう。
「ロケットの力がバラバラでうまく前進できずに横転したり、それどころか急に向きを変えて味方のいるところに突っ込んだりといっためちゃくちゃな動きをしたため、不採用となりました」(本書より)
ちなみに第4章「ざんねんな海の兵器」に登場する日本の「重雷装艦」も、自陣に壊滅的被害を与える可能性のあった兵器。重雷装艦は”魚雷攻撃に特化”していて、通常は1回で3、4発しか撃てない魚雷を最大40発も撃てたという。しかし機関銃攻撃が少しでも艦に当たれば大爆発を起こしかねず、乗員は気が気でなかったに違いない。
戦争を引き起こす人類とは残酷なもので、第6章「ざんねんないきもの兵器」には文字どおり動物を巻き込んだ兵器が紹介されている。たとえば心理学者バラス・F・スキナーによる「プロジェクト・ピジョン」は、カワラバトを使った”ミサイル誘導”計画。スキナーはハトたちにターゲットが表示されたスクリーンをつつかせる訓練をおこない、ミサイル内でスクリーンをつつけば軌道が変えられる仕組みを導入しようとしたのだ。しかしハトたちにとって幸いにも計画は途中で中止されることに。
「ミサイルに使う電子機器の開発が進んだので、わざわざハトを使う必要がなくなったからです。スキナーの手元に残ったのは、もう使い道のなくなったハト小屋と、40羽ほどの元気なカワラバトたちだけでした」(本書より)
歴史の中に埋もれていった数々の”ざんねんな兵器”。もちろん当時の人々が真剣に知恵を振り絞った結果であり、かたちを変えて現代へ受け継がれた技術もあるかもしれない。それらが”人々の暮らしに役立つ技術”だと信じつつ、危険な兵器を開発する必要のない世界がやってくることを願おう。
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