内見も契約もオンラインでOK!?コロナ禍で進む、部屋探しのオンライン化
リクルートの住まいに関する調査・研究機関「SUUMOリサーチセンター」が、「2020年度 賃貸契約者動向調査(首都圏)」を実施した。その結果を見ると、コロナ禍で部屋探しのオンライン化が進んでいることが分かった。具体的に見ていこう。
【今週の住活トピック】
「2020年度 賃貸契約者動向調査(首都圏) 」結果を公表/リクルート
契約者の2割がオンライン内見を実施、特に男性で多い
部屋探しでは、希望条件に合う賃貸物件を探して、実際に見学したうえで契約するかどうか決める、というのが一般的だろう。
リクルートの調査結果では、「部屋探しの際に見学した物件数」は平均で2.7件。ただし、「部屋探しで物件を見学していない(物件見学数0件)」という人が1割近く(9.9%)もいる。遠方に住んでいて、現地に行けなかったということなのか、前の居住者がまだ住んでいて、室内を見られないから行かなかったということなのか……。
一方で、最近増えているのが、見学者は現地には行かずに、不動産会社のスタッフが現地から動画で中継する「オンライン内見」だ。コロナ禍の影響が大きいのだろう。
今回の調査結果を見ると、「オンライン内見」を実施したのは約2割(オンライン内見のみ:13.5%、オンライン内見と現地内見の併用:6.2%)に達した。
出典:リクルート「2020年度 賃貸契約者動向調査(首都圏) 」
特徴的なのは、男性のほうが圧倒的に女性より「オンライン内見実施率」が高いということだ。面白いのは、男性では20代が31.4%と最も高く、30代(23.7%)、40代(20.6%)と年齢が上がるにつれて低くなる。これに対して、女性では20代が11.0%と最も低く、30代(14.5%)、40代(19.8%)と年齢が上がるほど高くなっていく。それでも、どの年代も女性の実施率が男性を超えることはなく、7割以上が実際に現地に行っている。
「オンライン内見のみ」、「両者併用」、「オフライン(現地内見)」の実施者を比べると、賃料や探し始めから契約までの期間などにそれほど大差はないが、見学した平均物件数に違いがあるという。「オンライン内見のみ」が3.2件、「オフライン」が2.9件であるのに対し、「両者併用」は4.1件。オンラインとオフラインを併用することで、より多くの物件を見学できたということだろう。
オンライン契約とは?なぜ可能になったか?
さらに調査では、「オンライン契約」についても聞いている。この調査の「オンライン契約」は「賃貸物件の契約をオンライン上で完結させられる」ことと定義され、不動産業界で言う「IT重説」を指している。
重説とは「重要事項説明」を略したもの。不動産会社が仲介して賃貸借契約を結ぶ場合は、契約前に不動産会社から、物件や契約条件などに関する重要事項説明を受けることになっている。宅地建物取引業法では、重要事項説明は、宅地建物取引士が説明する内容を記載した書面に記名押印し、口頭で説明を行うこととされている。
ただし、近年はインターネットの映像などを活用して、わざわざ不動産会社に行って対面で説明を受けなくても契約できるようにしてほしいという要望が高まった。それを受けて国土交通省では、宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方を提示して、IT重説の実証実験などを経て、ITを活用した重要事項説明を可能にしたのだ。
IT重説を法的に有効にするための細かい条件が設けられているので、どんな形でも認められるわけではないし、重要事項説明や契約は書面で行わなければならないので、書類の送付や返送などが必要になるが、最も重要な契約に関する行為がオンラインで完結することが可能になっている。
さて、調査結果に話を戻そう。こうしたオンラインによる賃貸借契約を利用した経験があるかを聞いたところ、7.0%が「利用経験あり」と回答した。世帯構成別に見ると、「ファミリー」(10.5%)とひとり暮らしの中でも「女性社会人」(9.5%)で高くなっている。
出典:リクルート「2020年度 賃貸契約者動向調査(首都圏) 」
オンライン化のメリット・デメリットは?どう利用するのがよい?
では、部屋探しのオンライン化が進むことで、どんなメリットがあるのだろう?
第一に、「時間の効率化」がある。現地に足を運んだり、不動産会社に出向いたりしなくて済むので、移動時間や交通費の負担を削減できる。第二に、新型コロナウイルス感染の対策として「密を避けられる」ことがある。感染の収束が見通せない今なら、外出を控え、不動産会社のスタッフとの密な空間を避けられるメリットは大きいだろう。
一方で、デメリットもある。特にオンライン内見では、最寄駅から現地までの道のりで得られる情報や現地周辺の住環境、室内の距離感、細かい内装の質感などの情報が得にくいこともある。男性より女性の方がオンライン内見の実施者が少ないのは、現地周辺のセキュリティや日々の買い物、室内のキッチンの使い勝手など、細かい点が映像では確認しづらいといったことも影響しているのかもしれない。
また、IT重説で操作に不慣れな場合は、操作方法に気を取られて最も重要な説明の中身に集中できない、といったことも懸念される。他方、オンライン会議に慣れている場合は、事前に書類が送られるので、じっくり目を通して疑問点などを整理して臨むことができるなど、メリットを感じる人もいるだろう。
筆者自身の見解では、物件の見学数を増やすために効率的にオンライン内見を利用することはよいと思う。しかし、住み替えには手間や費用もかかるので、契約する物件を決める際には簡単に決断せず、必ず現地を訪れてほしい。また、契約の際に重要なことは、契約時に細かく説明されるさまざまな条件などをきちんと理解することだ。それを踏まえて、オンラインによるかどうか判断するのがよいだろう。
オンライン内見もIT重説も、すべての不動産会社が対応できるわけではないので、必ずしも希望すれば応じてもらえるわけではない。しかし、今後はさまざまな生活シーンでオンライン化が進み、部屋探しのオンライン化も進展していくことだろう。
今回の調査結果によると、オンライン内見を実施した最高年齢は79歳だという。高齢者だからといった固定観念は、なくしたほうがよいようだ。
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